メディアの話 魔女=狩猟採集民。「魔女の宅急便」のキキと人間の子供の進化生物学。
『魔女の宅急便』をみてて初めて気づいた。
これは、女の子のスタンド・バイ・ミーだ。
大人になる直前の女の子が、遠くに冒険に出て、大人になろうとする。
主人公のキキは13歳だ。
旅立つまでに箒に乗る魔女の訓練を身につける。
彼女の遊び場は野原や森の上だ。相棒は猫のジジ。
動物のジジと自由に会話ができる。
13歳になると、一人前の魔女として旅立つ。
親元を離れ、別の遠くの街へ。
丁稚奉公だ。
そこで、出会うのはメガネの男の子。
彼に対してキキはツンデレだ。
なぜツンデレか。
異性として意識しちゃってるからである。
それに対して、自己嫌悪を抱く。
「昔の素直なキキじゃない!」と。
そして、
彼女は一瞬魔法を失う。
さらに、猫のジジとも2度と話ができなくなる。
大人になっちゃったのだ。
素直だったキキは、子供時代のキキだ。
大人になったら、そうはいかない。
ジジも同時に大人になる。
隣の雌猫といい仲になっちゃう。
動物を友達にして会話も自由にできて、野原で遊んで、魔法も使える。
旅立つ前のジジは「となりのトトロ」の小学6年生のサツキである。つまりトトロの続き、でもある。
サツキにはギリギリ魔物のトトロの姿が見える。
遊び場は、まさに郊外の山の中、である。
トトロのサツキが、一年後、魔法使いになってたびだつ。
魔法使いになるまでの13歳までのキキは、人間の子供が世界を認知し、生き物を友達とし、野山を駆け巡る、狩猟採集民としての能力を身につける時代と、呼応している。
魔女になる=狩猟採集民となる修行期間は、12歳で終わる。
性成熟するからだ。
13歳から14歳に性成熟すると、冒険の季節は終わる。
子供は大人になり、異性を意識し、社会で居場所を見つけ、人間関係を外部に構築する。
はやければ、さっさと子供も作っちゃう。
猫のジジがそうであるように。
映画「スタンド・バイ・ミー」は、12歳の少年達の最後の冒険を描いていた。戻って彼らは否が応でも大人になる。
「魔女の宅急便」は、最後の冒険の次、冒険を経て魔女=狩猟採集民の力をつけた少女が、独り立ちして、親から離れて、独立する物語だ。
少女期の終わり、大人期のはじまり。
だから、彼女は一瞬、狩猟採集民=魔女としての能力を失い、ジジとは2度と会話ができなくなる。
揺らぐわけだ。
その揺らぎを救うのは、大人になった未来から来た自分。
ウルスラだ。
そして、キキは、新しい街に溶け込み、メガネといい仲になり、最初は嫌悪していた街の同世代の女の子とも友達になる。
エンディングの一カットが、それだ。
子供から大人になる瞬間の、「生き物としての人間」の「生態」を描いている。
そのタイミング、プロセス、認知の変化。
宮崎駿さんはどう観察して知ったのだろう。
気づかなかった。
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