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【中国動向観察】習近平が月面探査プロジェクト従事者と接見:「宇宙強国」への成果参観ー嫦娥五号カプセルなど

 習近平国家主席は22日午前、北京の人民大会堂で月面探査を行った嫦娥(じょうが)五号プロジェクトに従事した専門家や職員と接見して、彼らを鼓舞するとともに、プロジェクトの成果を参観した。

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 中国の月面探査機「嫦娥五号」は昨年11月23日に打ち上げが行われ、12月1日に月面着陸するとサンプル収集を行い、12月17日に内蒙古自治区の砂漠にそのカプセルが帰還していた。 

  習近平はほかの中央政治局常務委員のメンバー6人とともにプロジェクト従事者らと記念撮影をするとともに成果展示を参観した。記念撮影時に習近平の隣に一人の老人が座ったが、彼こそが中国の航空宇宙産業、特に「中国衛星の父」と呼ばれる孫家棟である。

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 中国の月面探査プロジェクトは「探月工程」として国家プロジェクトとしてタスクフォース(領導小組)が組まれて政策として推進されてきた。孫家棟はそのプロジェクトの初代の総設計師でもある。

 習近平のもう片方にはプロジェクトの初代総指揮を務めた栾恩傑が座った。栾は国家航天局の局長も歴任したことがある。

 月面探査プロジェクトは軍需産業である航空宇宙産業の基幹事業でもあり、「嫦娥」プロジェクトは中国航天科技集団(China Aerospace Science and Technology Corporation, CASC)の主力事業の一つだ。そのため今回の習近平視察にも同社から呉燕生董事長や徐強総経理などの幹部とともに96人ものプロジェクト従事者が出席した。

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  記念撮影を終えると習近平は顕微鏡で「月の土」のサンプルをみたり、プロジェクトの説明を受けたりしていたが、なぜかこの時は記念撮影時にしていなかったマスクをしていた。

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  接見には軍幹部も同席した。軍事委員会の張又侠副主席が習に同行する形で出席していたが、彼以外では軍委装備発展部の李尚福部長や戦略支援部隊の李偉政治委員の姿も見えた。ちなみに太子党で故・李鵬元首相の息子である李小鵬・交通運輸部部長も同席していた。

 「人類の宇宙の平和利用に大いに貢献せよ」と歯の浮くようなセリフを言っても、やはり軍にとって宇宙は重要な発展分野の一つであり、特に軍事衛星は戦略支援部隊の管轄分野であることからも、軍が今後月面探査にどう関わっているのか気になるところだ。

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  李偉(最前列左4番目)李尚福(最前列左5番目)李小鵬(右1番目)

  習近平政権では歴史教育などの政治思想面に力が入れられているが、科学技術面にも力が入れられ、その道の専門家が相次いで表彰されている。

 政治的引き締めと科学技術面の推進で飴と鞭を使い分けるスタイルは「強国」政策に資する策を矢継ぎ早に打ち出す習近平ならではである。

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