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【旅エッセイ】ラオスで挨拶したら、しこたま酒を飲まされた後、バイクに乗せられ山奥に連れ去られた話。(後編)

(本エッセイは、後編です。前編はこちら)

 リアシートに乗せられ、どんどん舗装されてない山道を進んでいく。リアシートでバイクの風にあたっていると、ぼーっとしていた頭も、少しすっきりし始めてきた。

 そして、今の状況を冷静に考え出した。

 ―― 今日道を歩いていて、たまたま居たラオ人たちに挨拶して、手招きされて、しこたまお酒を飲まされて、今バイクに乗せられ山奥に連れていかれてる。

 これってもしかして、めっちゃヤバい状況!?


 30分ほど走ると、バイクはうっそうとした木々が生えている山の中にポツンとある、竹でできた一軒の家の前で止まった。他のバイクもすでに止まっている。

 私はバイクを降ろされ、その竹でできた家の内部に招かれた。私の乗っていたバイクの運転をしていた若者が、何かを一生懸命説明をしてくれているのだが…

 ラオ語が分からん!


 そんな時にも、笑顔は忘れず、日本人得意の最高の愛想笑いをしながら、まだ、私がどのような状況なのかが分かっていない不安でドキドキしていた。
 少なくとも、もし誘拐であれば、すでに縛り上げられて監禁されているはずなので、そんな事ではなさそうだ…

 そう思うと少し安心感が出てきて、家の中に興味は向いてきた。

 よく見ると、壁は竹が編まれて出来ているな…炊事場では、女性が炊事をしているが、土間でキャンプ場にありそうな感じ。地面に置かれている大きな石?これをまな板代わりにしてるのかな…
 昔の日本もこんな感じだったのか。

 テレビの中でしか見た事がない光景を目の当たりにして、興味深々に眺めていると、外から私を呼ぶ声がした。

 「やなぎやーーーーーー」

 外に行くと、でっかい包丁を持って座っていた若者の一人が、私を呼んでいた。

 刃物は怖いって…

 そう思っていると、そのへんを歩いていた鳥を指さしながら、身振り手振りで、「捕まえろ」と言っているようだ。

 これをつかまえろと?

 私は、鳥を捕まえようとしたが、子供が公園で鳩を追いかけまわすがごとく、追えば追うほど鳥は逃げていく。そして、その様子をみて、若者たちは爆笑している。

 私のことがかわいそうになったのか、包丁を持っていた若者が立ち上がり、鳥に近づくと、ひょいっと鳥の首を持ち捕まえた。

 そして、こちらを向き、
 「スープ!スープ!」
 と言っている。

 少なくとも、私をスープにするのではなく、この鳥をスープにするつもりなのだろう。それは私にもわかる。

 鳥を捕まえた若者は、座っていた場所に鳥を持ちながら戻り…そのまま鳥を解体しだした。鳥は、鳴き声を上げる間もなかった。

 私は、目の前で、どんどん解体されて行く鳥から、なぜか一瞬たりとも目が離せなかった。今まで目の前で鳥が解体されるのを見た事がなく、スーパーで肉の塊になっている状態しか見た事がなかったが、「命」のようなものについて、一瞬たりとも目をそらすことが、何か自分が命を頂いている事から目を背ける事のような気がしたから。

 解体された鳥が、鍋の中に入れられグツグツ煮込まれ始めた頃に、その鍋を中心にまた若者たちは、思い思いに車座に座り始め、

また、みんなで謎の透明の液を飲み始めた。


 少し酔いは冷め始めていたが、

人の好意はちゃんと受け取るタイプなので(2回目)

 また次々に注がれる酒を飲み続けていた。

 飲んでも飲んでも、隣の若者がなみなみと注いでくる。いや、お前らも大概飲んでるよね?なんでそんなに平気なの???
 先ほどと同じように、若者たちの居る空間は、絶え間なく笑いが溢れ、私にも話が振られ(でも何言ってるのか分からない)、そして隙あらばお酒を注いでくる。もはや、不安感はなく、ただただその場の雰囲気にまたもや飲まれていた。
 スープがふるまわれたころには、私は、意識が飛びそうな境界線を行ったり来たりしていた。もはやその味は分からなくなっていた。

 どのくらいの時間が経っただろう。

 とぎれとぎれになる意識の中、
 
 「こいつら元気やな…」
 
 と思いながら、周りを見てみたら、若者たちもグデングデンになり始めていた。

んん?これって俺帰れるのか…!?


 隣の男に、最後の力を振り絞り、
「ほてるかえる」
 と言ってみた後は、ほぼ意識がなくなっていた。



 次に気が付いた時には、バイクに乗せられ、ホテルの前にいた。

 えぇぇぇぇ!お前もグデングデンやったはずのに、ここまで運転してきたん?


 次の日

 昨日は、えらい目にあった。ホテルから、右の道にいって昨日は、えらい目にあったから、今日は左の方へ行ってみて、街ブラをしよう。昨日の若者たちと遊んだのはめっちゃ楽しかったけど、今日は身体がつらすぎる…

 街の方向へ歩き、5分くらい経ったころ、知っている声が聞こえた。

「やなぎやーーーーーーー」


 え!?逆の方向に来たはずやのに、なんでこっちに居るねん!

 今日も楽しくなりそうだ。


 そんな旅のとある日の話。

 おしまい

 ※ この話は、Instagramで「ルアンパバーンで泥酔したときの話」として、1分の動画としてアップしております。写真等もあるので、より楽しんでいただけると思いますので、ぜひご覧ください!

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