【旅エッセイ】ラオスにて、悪ふざけで言った一言で突然英語の先生になった話

 ラオスの北部にあるルアンナムターでの話。

 この街に何があるのか、どっちが街の中心なのかも分からないので、当然目的なく、気の向くままにウロウロ散歩しはじめた。
 
 ―――こっちの方に行ってみるか。道がある限りは何かがあるはず。天気も良いし行けるだけ行ってみて、何もなかったら来た道を戻れば帰れるだろう。

 30分ほど道なりに歩くと、建物が少なくなってきた。おそらく少し街のはずれのエリアにに、グラウンドを見つけ、そこで見た目20歳前後くらいの若者たちが、活気あるサッカーの試合をしていた。

 グラウンドを囲む金網の外から、しばらく眺めていると、私の存在に1人の若者が気が付いた。チームメイトたちに、
 「あそこになんかずっと見てる外人いるんだけど」
 みたいな事を言って、しばらくサッカーをしていたのだが、やがてこちらに数人のラオ人が満面の笑みで近づいてきて、金網越しに話しかけてきた。

 「どっから来たの?」
 「日本」

 そこから、なにかよく分からないかなり壊れた英語で、コミュニケーションを取ろうと必死に話かけてきてれる。私の英語もかなり壊れているので、コミュニケーションとしては、身振り手振りも含め、すごくスムーズで楽しい会話だ。

 しばらく話すに、授業とか、先生とか言っているので、ここはどうも何かの学校なのだろう…このサッカーもどうも授業でやっていたらしい。
 
 え!? 今、私と話してていいの?
 なんか大丈夫とか言ってるけど、授業とかどうなってるん?先生どこなん?

 いくつもの謎を抱えながらも、ラオ人たちは気さくに話をしてくれていた。

 私は1つの悪ふざけを思いついた。  

「俺、ここで英語の先生とかできるかな?」


 ちょっとふざけて言ってみたのだが、私の思いもよらない答えが返ってきた。 

「おー!出来る出来る!ちょっと待ってろ!先生呼んでくるよ!ちょっと待ってろ!」


え!?


 ちょっと悪ふざけで言ってみたのに、本当にラオ人の1人がその場から建物の方向へ歩いて行ってしまった。

いや、ふざけて言っただけなんですけど…💦


 2,3分ほどで、そのラオ人は1人の若めの少し強面の男性を連れて、こちらへ歩いてきている。多分この男性が先生…なのか?

絶対「つまらん冗談で俺を呼んだのかよ!」とか言ってめっちゃ怒られて…いや、私が起こられるだけやったらいいけど、この屈託のない笑顔のラオ人もめっちゃ怒られてまうんちゃうん?

 その前に、学生の頃、英語の成績はずっと5段階の2やってんけど、調子乗ってごめんなさい。英語の先生なんて出来るわけないやん💦

 どうしよどうしよどうしよどうしよ…こんな素直で純粋なラオ人に、悪ふざけなんてした私が悪いねんけど、こんな事になるって思ってないやん。

 とりあえず、自己紹介ちゃんとせなあかんやろな。
 「日本から来ましたやなぎやと申します。散歩していたら楽しそうにサッカーしていたのが目に入って、活気ある楽しそうな雰囲気に引き込まれ思わず見てました。そして、彼が声をかけてくれて少し会話をしてくれてました。ちょっとジョークでここで先生出来るかな?とか言ってしまって、それで…」
 って英語でなんて言うの…
 (ここまで0.1秒)

 先生らしき人が、私の目の前に来て、口を開いた。

 「フォローミー!!!!!」


 え!?


 「付 い て 来 い !」 と 言 っ て い る ?

 先生は、その一言だけ行って、また来た道を戻りだした。

 ―――とりあえず付いて行ってみるか。職員室かどっかに連れてかれて、そこできっと、お前は誰だ?みたいな事を聞かれて、雑談する感じなのか。

 黙って後ろをついていくと、先生が建物の扉の前で、私を待っている。私が、扉の前に着くと、アイコンタクトで
 「入るぞ!」
 みたいなサインを送って、扉を開けた。

 …そして、先生は扉をあけて一歩入ると同時に、思いもよらない一言を発した。


 「ニューティーチャー!!!」


ん?


 訳も分からず、その部屋に入ると、10歳くらいまでの少年少女が30人くらい座っていた…ってここ教室やん!

 そして、私は、今「ニューティーチャー」って言われてた?

 困った顔で先生の方を見ると、満足そうな顔で生徒の席に座って私を見ている。

 え?教壇空いてるんですけど…


 これは、このまま授業をしろという事?
 戸惑いながら改めて生徒をみたら、何かキラキラした目でめっちゃこっちを見られている。そして、この子たちは一体英語のレベルはどんなくらいなのか?と言うか、これは授業なのか?そして、今、何を教えているところなの?

まったく予備情報がないんですけど!


 とりあえず教壇に立ってみるけど…お、教壇に英語の教科書が置いてる。これをやれってことなのか???

 とりあえず、教壇に立ってみて…自己紹介でもしてみるか。いくらなんでも先生も授業までやれって思ってないやろ。

 自己紹介でもして、
 「今日なんか日本人来たわ」
 みたいな、生徒にとって1つの想い出になればいいくらいやろ。

 やし、自己紹介したら、後は先生が何とかしてくれるやろ。

 生徒は子供やし、私の英語が壊れているなんて気づかず、適当に乗り切れるはず!

 よーし、やってみよ!

 「初めまして!日本から来たヤナギヤでございます。ラオスに来たのは初めてですが、このようにみなさんの前に立てて、大変光栄に思っております。みなさんは、日本をご存じですか?同じアジアの国で…(以下略)」

 

 はぁ、なんとか自己紹介できたな…

ってめっちゃ拍手されてる!!!


そして、まためっちゃ純粋な目で全員こっち見てるやん!嬉しい…けど、 

いや、先生!お前もなんで生徒と同じノリでこっち見て拍手してるねん!

そして、アイコンタクトでそのまま授業やれって指示して来るな!笑


 その後、中学校の時の英語の授業のように、ひたすら教科書の例文を読んで、

「リピートアフターミー!」

 をして乗り切ってました笑


 そんな、ルアンナムターでの一日でした。

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