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「食べる」のしんどい #7 丸亀製麺のぶっかけうどん

 暑い暑い。
 日本らしい蒸し暑さである。
 迂闊にも買い物と散歩に出かけてえらい目にあっている愚か者。それが私。
 腹は減っていなかったが、何かひんやりしたものが食べたいと思い、フラペチーノでも食べればいいのに、なぜか丸亀製麺へ向かう。暑さでさらに愚かになっていたのかもしれない。
 店の前で丸亀製麺のシステムを復習。

「ぶっかけうどんの冷、並で」

 呪文の如く何度か繰り返して、入店。しかも、お代の340円も事前に容易にしておく、如才のなさ。間違いなくベテラン動き。そんなに行ったことないけど。
 滞りなく、注文を済ませて、うどんをもらい、流れるようにレジへ。
が、前の客がバーコード決済でめっちゃ滞っていた。流れが止まる。
 私、真顔。
 客のおばさん、バーコード決済、初めて使うのかしら。全然読み取ってもらえない。
 やっと私の番。支払いを済ませて着席。

 よく街でインディーズ讃岐うどん店を見かけるが、340円でこのクオリティの店はそうそうない。
 もうちょっと頑張ってほしいな、インディーズ店は。
 食べ終わった頃に入店してきた客がこなれた態度で、

「ぶっかけ、中」と声を上げる。

「中ない。中やってない」と店員。

 客は一瞬、固まる。

「並か大」と店員が助け舟。

「大」と答えて、客は行きかけるが、店員が尋ねる。

「温かいの? 冷たいの?」

 客がまたちょっと固まって、冷と答えて、うどんももらってないのに、天ぷらを取って、レジへ。
 レジの人、うどんがないので困惑。
 困惑するのは店の人だけで、客はこなれた様子のままである。
 私は、この人すげえな、と思った。私ならこんな状況になると、動揺して頭がぐわんぐわんになっていると思う。メンタルタフネス過ぎやで。
 件の客がうどんをもらって会計してる所で、私は丼を返却しに行く。
 そばを通った時に、レモン下さいとか生姜下さいとか言っていたのを聞く。
 生姜はセルフだし、レモンは別のうどんについているトッピングである。
 レジの人が「あら? 注文間違えたの?」と客を気づかっていたが。
 違います、その人はそういう人です、と通りすがりに言ってあげたかったが、狂人だと思われても嫌なのでやめておいた。
 私も一度くらい丸亀製麺で、あんなふうに自由に振る舞ってみたいものだ。


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