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なぜこんなにも読みやすく、胸に刺さるのか。今イチバン好きなマガジン「敗北のスポーツ学」

「敗北のスポーツ学」

短く、そして印象的なタイトル。

スポーツに勝ち負けは付きものだが、「敗北」と「スポーツ学」の組み合わせには意外性があって面白い。

そして、面白いのはタイトルだけではない。今回はその魅力について書いていきたいと思う。

1、敗北のスポーツ学は誰が書いているのか?
2、なぜ、敗北のスポーツ学はこんなにも読みやすいのか?
3、なぜ、敗北のスポーツ学はこんなにも胸に刺さるのか?


1、敗北のスポーツ学は誰が書いているのか?

敗北のスポーツ学を書いているのは、井筒陸也さん。Jリーグの徳島ヴォルティスに所属している現役のプロサッカー選手である。

現役のプロサッカー選手の発信として、「本を出す」「インタビュー記事に取り上げられる」「テレビに出る」「SNSを使う」などはよく見る光景だ。オフィシャルサイトのブログや、アメブロ・LINEブログなどもたまに見かける。

しかし、noteで発信を続けている現役のプロサッカー選手は他にいないのではないかと思う。短文でも成り立つエンタメ系のブログとは違い、noteにはある程度の文章量が必要な風潮があるし、アプリもあるとはいえ、5分やそこらで更新できるものではない。(もちろん内容にもよるが)

発信の場として、noteという媒体を選んでいることが、すでに一つの魅力に繋がっているような気がする。「あぁ、この人には伝えたいことが何かあるんだな」と思ってしまうのである。


2、なぜ、敗北のスポーツ学はこんなにも読みやすいのか?

敗北のスポーツ学の特徴として僕が感じることの一つに「読みやすさ」がある。そう、びっくりするぐらいに読みやすいのだ。

例えばこちらの記事。

「あなたのスポーツはジャンケンと何が違うのか?」というタイトルがまずすごくキャッチーで読みたくなる。話す内容のテーマがタイトルで読者にちゃんと伝わるのが読みやすいポイントの一つだろう。読み手側もテーマが分かっていれば、後から出てくる内容がテーマの具体例であることが理解しやすい。

そして、読みやすさの一番大きなポイントとなっているのは具体例(引用)の上手さだと思う。上記のジャンケンの記事の中にはこんな文章がある。

羽生善治の言葉に こういうものがあります。「勝ち負けには間違いなくこだわっているけど、結果だけを出せばいいのなら、ジャンケンでもいいわけです。」1 
*1,*2, 羽生善治(2001年)『簡単に、単純に考える』PHP研究所, p150.

この記事は、この羽生善治さんの言葉の引用を軸に成り立っている。この引用がないままで、もし「スポーツにおける過程の影響力」というタイトルで書いていたら。

スポーツは確かに身近な存在だが、スポーツ以外のところで置き換えたり、別のジャンルでの出来事や言葉を引用することで、より様々な読者に分かりやすいようになっている。そして、取り上げている話題が、スポーツに限らず「普遍的なもの」であることの証明にも繋がっている。

その他にも図解があったり、イメージ写真があったりと、文章の構成に加えて、視覚的なバランスもすごく良い。まさに「サクサク読める」記事である。そして、実行の具体例が書かれているものもあり、読んだ後にすぐ行動できるのもとても魅力的だ。


3、なぜ、敗北のスポーツ学はこんなにも胸に刺さるのか?

端的で分かりやすく、サクサク読める記事。それだけを聞くと、要点をまとめた新聞記事や、ウェブニュースのような印象を受けるが、「敗北のスポーツ学」はそれだけではない。

圧倒的に「胸に刺さる」のである。特徴的なのはこちらの記事。

この記事内には、こんな言葉が出てくる。

飽き性で、移動のときは5冊くらい本を持っていないと辛くなる。何かしているときも他のことを考えてしまい、食べ方が汚なくなったり、物をこぼしたり、取りかかろうとしていたこと自体を忘れることがよくある。
だからこそ、集中力のない人間が 集中力を強く求められるスポーツで生きていくためには、こうした思考を完璧に処理する方法が必要だった。勉強しトライ&エラーを繰り返して構築してきた。

そう、敗北のスポーツ学のテーマは全て、「井筒さんの中から生まれた発見」なのである。自分の経験したこと、そのとき感じたこと、上手くいったこと、上手くいかなかったこと。等身大の記憶と感情が文章の中に散りばめられている。

だからこそ、共感する気持ちが生まれ、胸に刺さるのである。批評家や評論家ではなく、当事者意識を持って、嘘偽りのない感情を含めて記事にしていく。

分かりやすさという客観性を持ちながら、感情という主観性も持ち合わせている文章。

スポーツという大きな主題の中で、選手という立場から「読みやすく」「胸に刺さる」文章を書ける人はそうそういないと思う。それも、noteという媒体で、熱意を持って。

最後に僕が一番好きな「敗北のスポーツ学」の記事から。

”サッカー選手で一番 深く スポーツを 考えることが できる”
今の僕の「できること」は、こういう感じです。

読みやすさの秘密は、思考力の深さなのかもしれない。

今後もますます目が離せないマガジンです。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。サポートしていただいた分は、もっとたくさんの文章を書くための糧にいたします。