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最近観た劇場公開・配信映画(2022年2月)

2月に観た劇場公開・配信映画のレビューです。

ウエストサイドストーリー(劇場公開)

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 『ウエストサイドストーリー』はオリジナルの映画版のダンスの場面を断片的に覚えている程度(子供の頃に観たのか、テレビでダイジェストを観ただけなのか定かじゃない)だったので、普通にこの話どうなっていくのだろうかと新鮮な気持ちで観れた。

 正直、急展開な割に過剰なまでに周りが見えなくなる恋愛(それが若い頃の恋愛といえばその通りなのだが)にちょっと気持ちが置いてかれた感はあった。しかしながら、美しい色彩と名曲と共に繰り広げられる集団でのダンスシーンの躍動感はどう考えても圧倒的で激しくアガった。

 貧しい白人対プエルトリコ移民という人種対立の構図だけでなく、男女差別や同じ派閥の中でのレイヤーが描かれることで複層的なテーマになっている。

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ナイル殺人事件(劇場公開)

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 ケネス・ブラナーによるアガサ・クリスティ原作ミステリーの映画化の二作目。

 サスペンスといえば洋の東西問わず旅情が醍醐味(これを書いてる時に西村京太郎死去のニュースが。子供の頃に親が良く西村京太郎のサスペンスドラマを観ていたな…)。その意味でコロナ禍で旅行に行きたいゲージがMAXまでたまっている現在、豪華客船でのエジプト巡り(CGとはいえ)を堪能できるのはシンプルに喜び。

 こちらもオリジナル映画版を観ていないのでオチは知らないため、探偵ポアロと共にキャラの立った容疑者達の中から真犯人を探す過程は全く飽きない。実際に様々な匂わせに引っ掛かって犯人は最後の方までわからなかった。

 こういうちゃんと豪華でそして軽さもあるエンターテイメント映画は定期的に観たい。

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355(劇場公開)

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 5人の女性エージェントが世界を救うミッションに挑むスパイアクション。

 ストーリーは色々と突っ込みたくなるものの、豪華女優同士がぶつかり合ったり、仲良くなったり、派手なアクションをするチーム感や、お約束的な見せ場もありなんだかんだで観ていて楽しい。こちらも気軽に観れる娯楽作品。

 ペネロペ・クルスが男が簡単に落ちる美女役というペネロペ味の強い役回りなのも嬉しかった。

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ちょっと思い出しただけ(劇場公開)

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 カップルの出会いから別れの六年間を遡って描く。

 結末を知っているからこそ、戻らない日々の愛しさが堪らなく感じる。カップルのやり取りのリアリティと、二人の関係性の変化と連動するように変わる風景(特に部屋の中)が、観る側の想像力を刺激して、二人の物語に引き込まれる。

 この手の良く出来た映画だといつも自分の思い出が脳内で同時上映されるのだが、今作はカップルの二人だけのノリみたいなのを観る度にスイッチが入った。それは映画と同じく戻らない日々…

 映画内での全面的な『ナイト・オン・ザ・プラネット』オマージュもニンマリするが、定点観測で同じ風景の変化を描くという手法は同じジム・ジャームッシュの『パターソン』的だなと思った。ちなみに今回の永瀬正敏の役名は『ミステリートレイン』での役名の「ジュン」。

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誰かの花(劇場公開)

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 認知症が進んだ主人公の父親が住む団地で起きた悲劇を巡る物語。

 冒頭の母親と主人公の関係性が自分に重なったこともあり、誰もが「当事者」になり得ることを突き付けられる。それぞれの正義がどれも正しく思える苦しさ。すれぞれの救い。誠実に人物と向き合った素晴らしい作品。

 今回、主演のカトウシンスケさんを初めて知ったが、自然過ぎる佇まいが凄かった。エレベーターで言う「さよならー」の台詞のニュアンスが鳥肌立った。

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 舞台挨拶付きであることに気付かずにチケット購入していたけど、上映後に監督、出演者の舞台挨拶トークショーを見れた。奥田裕介監督が話されていた、日常でちょっとした「正しいこと」をする時に、気付いてから実際に行動へ移すまでに掛かる時間の話がとても興味深くて、今でも印象に残ってる。それは映画の中の登場人物達の行動にも重なるものでもある。

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選ばなかったみち(劇場公開)

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 認知症の父親と介護する娘の24時間に父親の心の旅が交錯する。『誰かの花』と同様にこの作品も介護の大変さや怖さを伝えることがメッセージの映画ではない(と、自分は受け止めた。一方で昨年の『ファーザー』は認知症自体の怖さ、神秘に迫った大傑作だった)。今作は「あの時、違う道を選んでいたら」という誰しもが人生の途中で持ちうる後悔がテーマだ。他人よりもそういう振り返りをしがちな自分には激しく刺さる。そして、ラストで希望の光に気付いて少し救われた。これから何度も思い出す映画かもしれない。

 ダニエル・バルデムの演技も凄まじい(ペネロペの夫だけのことはある)が、介護と自分の夢(仕事)の間で揺れながらも健気で明るいエル・ファニングがやっぱり好きになってしまう。サルマ・ハエックも『エターナルズ』『ハウス・オブ・グッチ』と引っ張りだこ。

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感想まとめ

 今月は無茶苦茶に自分が抉られるような作品と肩の力抜いて楽しめる娯楽作品を交互に観ることで、良い感じに精神がバランスした。どっちも大事。



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