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好きな恋愛映画を語る Vol.8 ブルーバレンタイン

こんばんは。今週はnote小説『それまでのすべて、報われて、夜中に』の更新をお休みして、好きな恋愛映画を語る回となります。今回は2010年公開、リアルな恋愛を描いたトラウマ恋愛映画『ブルーバレンタイン』について語ります。(※ネタバレ有り)

Vol.8:『ブルーバレンタイン』(2010年)

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 一組の男女の恋愛の始まりと終わりが交互に描かれる本作。引越し業者のディーン(ライアン・ゴズリング)と医大生シンディ(ミシェル・ウィリアムズ)がロマンティックな出会いを果たし、困難を乗り越えて大恋愛の末に結婚する。結婚から五年後、ディーンとは血が繋がっていない一人娘のフランキーと暮らす夫婦の関係は上手くいっていない。ディーンはシンディと娘を愛しているが、シンディはディーンへの愛が冷めつつある。夫婦は、関係を改善しようとするディーンの行動が裏目に出て、破局へと向かって行く。結婚という二人の最高の瞬間と、二人がもう後戻りできない断絶を迎える瞬間、それぞれ真逆の涙を流しているシーンが連続して交互に重なる場面は壮絶だ。

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 あれだけ愛し合っていたカップルの愛が時間の経過により消えてなくなるという現実に胸を抉られる。ここまではっきりとしたコントラストでなくても、愛し合っていた相手が今は自分を愛していないと気付いた経験がある人であれば思い当たる部分があるだろう。

 ディーンがシンディをラブホテルに連れて行き、関係を修復しようとするのだが、シンディがシャワーを浴びているところに入って自然と避けられるディーン、酒と音楽で良いムードになって、いざディーンが愛撫を始めた時の歯を食いしばって耐えているシンディ、からのサイテーなセックス。過去にあったはずの何かが完全に失われていることを痛感する地獄のような場面だ。

ブルーバレンタイン未来ルーム

 何故、二人がこうなってしまったかについて考える。シンディは何故、ディーンを愛せなくなったか。実際、出会った頃と五年後でディーンは変わったのかというと、見た目は額が後退したという部分はあるが、根の部分は変わっていないように思える(ただ、ディーンもシンディの元彼もかなりのイケメンだった、見た目が悪くなった部分も多少は影響してそうだ)。ディーンの性格は出会ったから頃からロマンチストで、頭で考えるより行動に移すようなタイプ、その部分がシンディにとって魅力的に映っていたはずだ。好きだった部分が裏返って嫌いになる。恋愛は不条理だ。

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 上述のラブホテルにて、シンディはディーンにこんなことを言う。「あなたは(ペンキ屋の仕事以外に)やりたいことないの?色々(音楽や絵など)得意なのに」。これに対してディーンは「俺は父親になりたいとか、夫になりたいなんて思っていなかった。でも今はこれが幸せだ。」と答えるのだが、この映画を観た当時、やりたいこと(音楽など)があるのに、やりたいことではない仕事をしていた自分には刺さる言葉だった。自分でも未練があるだけに一番言われたくない台詞だ(現在もやっと趣味程度に創作活動を始めた程度だが、それでもやっているだけ受け取り方は違う)。映画においても、ディーンは機嫌を悪くする。これに関しては、ディーンが悪いのかというと微妙な所だが、シンディは向上心が感じられないディーンがイヤだったという所だろうか。

 公開当時、自分はこの映画を大恋愛もいつか冷めて終わるというリアルを伝える映画として捉え、自分の恋愛観にも一部影響与えていたが、今回、noteを書くために久々に見返して思ったのは、恋愛が終わる現実以上に、二人が激しく恋愛していた瞬間がとても愛しいということだ。破局を迎えた後のエンドロールでは、二人が愛し合っていた瞬間が花火と共に次々と浮かび上がる、何とも美しい映像。そして、二人が出会った頃の一番ロマンティックだった場面の二人のやり取りの音声が流れる。どんなに辛い別れになったとしても、二人が愛し合っていた瞬間は確実に存在していたということ、だから終わってしまう恋愛だろうと人生において貴重な素晴らしい経験になる。

 そう強く思ったのは、今年観た『花束みたいに恋をした』がまさに恋愛のその部分にフォーカスした映画だと感じたことも影響しているかもしれない。

 とにかく、愛し合う二人の姿はとてつもなくロマンチックで恋愛をしたいと感じさせるのだ。たとえ、その結末は残念なものだったとしても。

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過去記事(Vol.1〜7)はコチラ↓




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