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SNSを30日やめた話、また悪い習慣としての依存と社会に抗体をつくる

こんにちは。個人の習慣づくりをサポートするCoachatを運営しているyaottiです。習慣を変えるという文脈で、最近はスマートフォンをはじめとした依存について調べたり自身でSNS断ちを試しています。今日はそうした調査や実験を経て、また最近のClubhouseという音声アプリの盛り上がりを見て感じていることについて書きます。

SNSを30日やめてみたら

昨年の終わりにデジタル・ミニマリストという本を読み、Netflixの監視資本主義というドキュメンタリーを見、また友人が「SNSをやめてとても調子がいい」と話すのを聞く、など複数のことをきっかけに、2020/12/28から30日間SNSを辞めてみました。

SNS:Twitter, Facebook, Instagram (Facebook MessengerやLINEは含みません)
辞める:iPhoneからSNSアプリを消し、MacBookやiPhoneのブラウザからはログアウトしログインしない

僕は2007年にTwitterを始めて15年近くほぼ毎日のように使ってきましたが、30日間も使わなかったのは初めてでした。(正確にはDMの返信とbosyuのRTのために計3回のみログインしました。TwitterのDM専用アプリが欲しい。)

30日間のSNS断ちをやってみた結果ですが、事前に期待していた以上のメリットと期待以下のデメリットだったな、という感想です。

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🤗辞めたことによるメリット
* 集中力が増した:以前に比べて長い時間仕事や読書に集中できるようになった。前なら少し疲れたらとりあえずTwitterを見てしまっていたが、その分断がなくなった
* 脳の疲れが減った:感覚的ではあるが、頭がクリアになった
* 気分の上下が減った:ネガティブな情報の方がどうしても目に入りやすく、フラットに見ているつもりでも意外と影響されていたなと感じる
* 妻から好評:家事育児により積極的になった、と言われている

😩辞めたことによるデメリット&対処
* ITやスタートアップ界隈のトレンド、ニュースがわかりづらい
  * →Nuzzleというフォローしている人たちがシェアしたURLのランキングを作ってくれるアプリで見る
* 少し寂しい
  * →本を読む、個別に連絡してテキストではなくビデオ通話にて顔を見ながら話す

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単純にSNSを見ている時間に限らず、メンタルや疲労といった時間以外での影響も大きかったなと感じます。
ちなみに30日間離れていますが、いまだに1日2~3回はブラウザのURL欄に"twitter.com"と打とうとしてtwぐらいで気づきます。無意識に手が動く…習慣怖いですね。

当初は30日限定で辞めようと思っていましたが、辞めていた間の体験がとても良かったので今後も仕事に関連した利用以外は基本無しとしようと考えています。(と言いつつ、半年後には毎日使ってしまっている未来もあり得ます)

20代のスマートフォン利用は1日平均2時間50分(総務省調査より)

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総務省が毎年情報通信メディアの利用時間調査を行っているのですが、それによると2020年度には全年齢で平日平均115分、休日平均は138分でした。特に10代20代は長いですね。調査期間は2020/01/14-2020/01/19なので、その後の新型コロナウイルスによる行動様式の変化を考えると、ここからある程度は増えていると思われます。皆さんも一度OSのスクリーンタイム情報を見てみると意外と使っているアプリが見つかるかもしれません。

(グラフは上記データより、スマートフォン利用に関する利用者平均時間から作成)

なお調査手法は「日記式」という15分刻みで取り組んでいる活動を記録するというものなので、実態よりも短めなのかなと推測しています(10分程度の利用は記録されないこともあるのと、仕事や授業中の時間はスマートフォンを利用していると記録しづらそうだなと)。

細かいカテゴリごとの利用状況も知りたかったためクラウドワークスのアンケートにて約100名を対象に今月(2021/01)中旬に調べたところ、平均1日7時間でした(下記ダイアグラムグラフ)。緊急事態宣言中という状況やアンケート対象者の偏りはあると思われるものの、なかなかの長さですね。

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良し悪しは一概には言えませんが、起床時間の半分弱を小さいスマートフォンの画面を見て過ごしていると考えると少し怖いな、という感想を持ちました。

Clubhouseと依存性

前述の通り最近Twitterは見ていないのですが、上記Nuzzleというサービスを見ている限りTwitterの自分のTLではClubhouseというアプリが非常に盛り上がっているようです。実際に最近ヒアリングさせてもらった人の中にも何人か「Clubhouseを見すぎてしまう」という方がいました。

いくつかのClubhouse分析記事を読み、繰り返し使わせる(習慣にする)上でとても秀逸な設計がなされているなと感じました。「何か面白い話があるかも、面白い人と話せるかも」や「面白い話を聞き逃したくない」という理由(行動分析学的にいうとそれぞれ好子出現による強化、嫌子除去による強化)から繰り返しアクセスしたくなる設計となっています。

そしてライブであることから面白いかどうかは事前にはわかりません。そうした「毎回良い体験ができる」よりも「たまにいい体験ができる(かも)」という方が行動を繰り返しやすくなることは実験から明らかになっています(変動比率スケジュール)。つまりギャンブルですね。

習慣をテーマに掘り下げている人間として、Clubhouseは得られる報酬の種類とランダム性、限定性からとても依存性が高そうなサービスだな、と遠くから見ています(使ったらスクリーンタイムが跳ね上がりそうなので熱狂が落ち着くまでは使いたくない)。

なお依存や習慣のメカニズムは以下の記事が素晴らしくまとまっています。長いですが興味のある方は読んでみてください。

中毒性のあるアプリやサービスに対して、どう抗体を作るか

自分もIT領域で生きている人間ですし、スマートフォンやSNS、新しいサービスを否定するわけではありません。むしろ新しいサービスは好きで積極的に試すタイプです。しかし依存という観点から見ると個人の意思では利用をコントロールしづらいサービスが多く、また今後も次々に生まれるであろうと思われます。

ポール・グレアムも「中毒性が濃縮されるプロセスは加速し続けており、"統計的に正常、つまりみんながやっている"ことと"正常に最良のパフォーマンスを出す"ことは異なり、またその距離はかけ離れている」と10年も前に書いています(現在の状況についてはどう考えているのかぜひ聞きたいところです)。

(和訳はこちら)

社会は最終的には、中毒性のある新しいものに対して抗体をつくる。紙巻きタバコがそうだった。
(中略)
喫煙の危険性が知られるにつれ、習慣は変化した。ここ20年間で喫煙は、いたって普通の習慣から、かなり見苦しい習慣へと変わったようだ。喫煙は映画スターが宣伝でやることから、中毒者の小集団がオフィスの外でやることへと変化した。もちろん多くの変化は法律のおかげだが、先に習慣が変化していなければ、法律もできなかっただろう。

だがそれには100年単位の時間がかかった。だから、こうした社会的な抗体が生み出される速度が、技術の進歩が新たな依存症を生み出すのと同じ速さで発展しない限り、まわりと同じ生活習慣さえ守っていれば自分を守れるとは、ますます期待しにくくなるだろう。新しい依存症のモルモットとなり、次世代への悲しい生きた教訓となりたくないなら、私たちは自衛のために、避けるべきこととその方法を見極める必要がある。
(上記エッセイより引用)

今後VRなどの技術発展や、より可処分時間をうまく吸い取る新サービスの出現により「依存しうる対象をいかに適度に利用するか」は課題としてより大きく、より難しくなっていくだろうと思われます。その流れの中で、Coachatでは「習慣を変える」という切り口から社会に依存への抗体を作り出し、意思力に頼らない自律を手助けしたいと考えています。

We'll increasingly be defined by what we say no to.
今後ますます、何を拒否するかが自分が何者になるかを決めることになるだろう。
(上記エッセイより引用)

これまで色々な方の運動習慣づくりをサポートしてきましたが、その中でも「スマートフォンの利用を減らして運動時間をつくる」という方が多いので最近はこのようなヒアリングをしています。運動したいかどうかに関わらず「スマートフォンに依存気味だな/利用時間を減らしたい」、という方はぜひZoomにて30~40分ほどヒアリングさせてください!

また良い習慣や悪い習慣に関する情報をTwitterやLINEで発信しているので、興味のある方はこちらも追加をお願いします🙂🐢


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