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生まれて初めて降りた駅で超絶品のハンバーグに出会った【レストラン ピノ @一ノ割】

今日は、降りたことのない駅に降りてみよう。

そう思い立ってGoogleマップを起動し、東西南北にマップを動かした。東京の中心であるである千代田区や港区、中央区のマップは高速で指を動かした。あの辺は何度も行ったことがある。降りたことがない駅に降りようって言っているのになんであんなド都会の中心に行かなきゃなんないんだ。しかも今日日曜日だからあの辺休みのお店多いぞ。

今日の僕は、なんだか都心を毛嫌いしているような気分だったらしい。自然とマップは東京都内を離れていた。画面に映し出されていたのは、埼玉県。その中で北関東に向かって伸びていく一つの路線が目に付く。東武スカイツリーラインだ。その名の通りこの路線の電車に乗ればスカイツリーに行くことができる路線だ。では逆にスカイツリーから乗った場合どこまで行くことができるのか?その答えは埼玉県で屈指の動物園を有する東武動物公園駅だ。電車は東京は足立区を通り草加市、越谷市を通り東武動物公園駅に辿り着く。電車によってはさらにその先、久喜まで行くこともある。


そんな東武スカイツリーラインも、僕は何度か乗ったことがある。新越谷駅で降りたこともあるし、春日部駅で降りたこともある。獨協大学前駅という大学生しか利用しなそうな駅でも降りたことがある。何度か利用したことのあるこの路線の中で降りたことがない駅はどれか?と探していると、ある駅が目に留まる。

「一ノ割駅」。この駅を知っている人は日本に一体何人いるのだろうか。一ノ割駅はGoogleマップを見ると、春日部駅の1つ手前の駅。見たことも聞いたことのないこの駅の名前がなんだか妙に気になった。何があるのかよく分からないが今日はこの駅で降りてみようか。


とはいえ、昼ごはんのお店ぐらい事前に調べておきたい。Googleを駆使して一ノ割駅で何か美味しそうなお店はないか探し始めた。そして見つけたお店が「レストラン ピノ」という名前の洋食店。初めて見た瞬間から可愛い名前だと思った。食べログを見ているとハンバーグがとても美味しそうだ。僕はピノのことがとても気になっていた。ランチタイムでも念のため予約をしておいた方がいいだろうと思い、10時半ごろにお店に電話をかけたら無事予約をとることができた。知らない町の可愛い名前のお店で昼ごはんが食べられることになり、僕は陽気な気分で身支度をした。

僕が乗った東武スカイツリーラインの電車は少しだけ遅延していたので予定時刻から3分ぐらい遅れて一ノ割駅に到着した。電車の中では、歯医者に行った夢でも見てるのか?と思うぐらい大口を開けて寝てるおじさんがいた。



一ノ割駅で電車を降りる。都内近郊の駅ならば大体東口や西口といったように出入り口が複数ある印象だが、この一ノ割駅は出入り口が一つしかないようだった。駅を出るとそこはバスロータリーもなく、セブンイレブンと養老乃瀧だけが目立っているいかにもなローカル駅だった。

一ノ割駅の出入り口

Googleマップを見て、とりあえずお店のある方角に歩いてみたが、どうやらお店は線路の向こう側にあるようだった。パッと見た感じ踏切も歩道橋も見当たらない。線路の向こう側にどう行こうかと考えていたところちょうど目の前にいたおばあさんと目が合った。

「すみません、線路の向こう側に行きたいんですけど」

まるで駅の人に話しかけるような事務的な声のかけ方をしてしまった。それでもおばあさんは嫌な顔一つせず、

「ああ!向こうにまっすぐ歩いて行くと踏切がありますよ、行けば分かりますから!」

と明るく教えてくれた。おばあさんの声は、むしろ聞いてもらえて嬉しそうなトーンだった。おばあさんの話では、どうやら僕が歩いてきた方向とは反対方向に踏切があるらしい。僕はおばあさんにお礼を言ってその方向に歩き出した。本当にすぐに踏み切りに着いた。僕が踏切に着いたタイミングで踏切のバーが降りてきたので、暇つぶしにスマホで踏切の写真を撮影した。隣で待っていた小学生くらいの男の子からはどんな見られ方をしていたのだろう。

一ノ割駅前の踏切

線路の反対側に行き、線路沿いを北に向かって歩いた。線路沿いには所々営業している個人店がある。年季のありそうなお店でおにぎりが売られており、美味しそうだった。そのおにぎりを横目に歩き続けると、お目当てのピノの看板が見えてくる前に何やら人だかりができているのが目に入る。人だかりの正体はすぐに分かった。その正体は大勝軒というラーメン屋だった。大勝軒といえば、ラーメン好きの間では有名なラーメン店で、東京を中心に何店舗か系列のお店が存在する。もう少し細かいことを言うと大勝軒という名前のラーメン屋は大きく「東池袋系大勝軒」と「永福町系大勝軒」の2つに分かれる。お店の横を通ったときに、あっこのお店は永福町系のお店なんだなと思った。お店の換気扇から漏れる香りで分かった。僕は永福町系大勝軒が大好きなのだ。

行列を作る大勝軒

そしてその大勝軒の隣の隣ぐらいにある建物が、この日僕が目当てにしていた「レストラン ピノ」だ。青い屋根と建物の小ぢんまり感が店名同様可愛いレトロなお店だ。そんな可愛いお店は大勝軒の行列の陰に隠れてしまい少し目立たなくなっている。大勝軒の存在にも惹かれるが今日僕はここでハンバーグを食べに一ノ割までやって来たのだ。

レストラン ピノ

お店の扉を開けると、

「ご予約の○○(僕の苗字)様でしょうか?」

と店員のおばちゃんがこちらに声を掛けて来た。正解である。僕は「予約席」のプレートが置かれたテーブル席に案内された。店内は割と静かで、秋桜色のソファや花柄のテーブルクロス、天井から吊り下げられた優しめの照明といった店内の各要素が昔懐かしい洋食屋さんらしい雰囲気を作り出している。都内の新しい小洒落たレストランより、僕はこういうレトロな雰囲気があるお店の方が落ち着く気がする。

席に座り、おばちゃんが持って来てくれたメニューを眺める。メニューの一番上には「おすすめ海の幸ハンバーグセット」が大々的に書かれている。このメニューが名物なのだろう。看板メニューの海の幸ハンバーグにサラダオードブルとデザートとコーヒーが付いたコースメニュー的な内容になっている。もうこれに決めてしまおうかと思ったが、一応その下にも何種類かメニューが書かれているのでそっちも見てみよう。どれどれ、「エビとイカのドリア」や「国産豚ロースとエビフライ
」といったメニューもなかなか魅力的ではないか。ついつい他のメニューに目移りしてしまうが、今日の僕の目的はハンバーグだ。その信念はなるべく貫き通したい。するとメニューの下の方に、「海の幸ハンバーグステーキ」と書かれたメニューがあるのを見つけた。なるほど。一番上に書かれたセット以外にも単品で頼むこともできるのか。デザートとコーヒーはこの後別のカフェに行って食べたいからな、今回はセットじゃなくて単品でも良いのではないだろうか。この前表参道でとんかつ食べるのに3000円も使っちゃったしな。そんなちょっとケチくさい考えもあってか僕はセットではなく単品のハンバーグを注文することにした。おばちゃんは快く注文を受けてくれた。

メニュー

注文して10分ぐらい待っていると、お目当てのハンバーグが僕のもとにやって来た。一枚の皿に綺麗に乗ったハンバーグ。その肉の上にはエビやムール貝が盛られており、それらはたっぷりとソースをかけられたことでキラキラと輝いていた。シェフのソースのかけ方が上手いのか、ソースの海は皿の幅のちょうど半分の場所を軸に綺麗な半月型を描いている。ハンバーグの背中には千切りキャベツやレタス、トマトを中心としたサラダの丘が控えており、たった1150円のランチのはずなのにかなり高級感のある見た目になっている。めちゃくちゃ美味しそうだ。

海の幸ハンバーグ

まずはスープからいただく。おお、優しい味だ。おばちゃんの人柄がそのまま入っていそうな優しいお味である。ホッとする美味しさだ。

スープ

次にハンバーグの背中に盛られたサラダをいただく。さっぱりとしたドレッシングがかかっている。野菜の鮮度も良さそうだし良い前菜の役割を満たしている。オードブルを頼まなくても十分な量が盛られている。

サラダ

おばちゃんがフォークとナイフを用意してくれたが、ナイフなんていらないくらい肉が柔らかい。そして口に入れると肉汁が口の中で湧き水のように溢れ出てくる。肉の旨味が口中を満たす。めちゃくちゃ美味いなぁ。ソースの味があまり主張して来ず、肉の旨味で満足させてくるタイプのハンバーグじゃないか。こんなクオリティの高いハンバーグがこんなマイナー駅のそばに隠れていたなんて。そしてハンバーグの上に乗ったエビとムール貝とホタテ。このハンバーグが「海の幸ハンバーグ」であることを象徴するために生まれてきたであろう彼らの味もまた絶品だ。特にエビなんてなかなかの身の大きさ。ハンバーグとこれが一緒に食べられて1150円で本当に良いのだろうかと思ってくる美味しさだ。

ハンバーグの上に乗った海の幸

ご飯ももの凄く進む。都内の洋食屋と比べてご飯の盛りが割といいこともありがたい。

ライス

ここ最近食べたハンバーグの中で間違いなく一番美味い。僕にとってこのハンバーグは2024年に入って初めて食べたハンバーグになるのだが、僕は今年果たしてこれを超えるハンバーグに出会えるのだろうか。ひょっとしたら去年のM-1みたいにまさかのトップバッターが優勝するだなんていう奇跡の年になってしまうのではないだろうか。ハンバーグ界の令和ロマンになるかもしれないぞ。


会計のためにレジに行くと、改めて1150円という金額に驚いた。そしてPayPayをはじめ楽天ペイやd払い、au PAYといった様々なQRコード決済に対応していることも意外だった。

大満足な気分でお店を出た。都内でこのレベルのハンバーグを食べてももちろん感動するのだけれど、一ノ割というこれまでまったく馴染みのなかった町でこのハンバーグに出会えたということが僕にとってはめちゃくちゃ嬉しい。みんながあまり知らなそうな穴場の良いお店を見つけた気分だ。このお店はこれからも頑張ってほしいけど、今後自分のとっておきのお店にしたいのであまり有名になってほしくないという下心も生まれてしまった。


この一ノ割という町は、まだまだ可能性がありそうな場所だ。


今回行ったお店


レストラン ピノ
●住所:埼玉県春日部市南4丁目21−2
●アクセス:一ノ割駅から徒歩4分
●営業時間:11:00~14:30 / 17:30~20:30
●定休日:月曜・火曜
●支払い方法:現金、クレカ、QRなど
●駐車場:あり(浜島パーキング6,7番)

頼んだメニュー

●海の幸ハンバーグ ¥1150


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