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自分の人生を自分で経営する時代における、正社員という働き方。

今回の日経COMEMOテーマ企画は「どう変わる正社員」。自分で自分の人生を経営していかなければいけないであろうこれからの時代において、正社員とは何なのか。社会に出てから約12年間、正社員として働いている社会人の視点として記事を書いています。

なぜ、いま正社員として働いているのか

新卒で就職をするときも、転職をするときも、意思をもって正社員を選んできました。それはあくまで現時点でわたしにとっての最適な就業形態は「正社員」だと思っているからです。フリーランスや個人事業主に限らず、契約社員や派遣社員でもなく、フリーターでもないのは、一般的な社会保障、一定の基準のもとに(今のところ)安定して支払われる給料、名目上の無期雇用という社会的信頼、社会的な事務処理など、これらを超越するほどのメリットが個人的なライフスタイルや人生遂行能力において、他の就業形態に現時点で見出だせていないからです。

また過去の仕事の中で、数多くの経歴書を見てお客さんに売り込むという経験をしたことがある中で、現時点の(少なくとも数年前までは)日本で“一般的“とされている企業や組織において、正社員でなくなっていることの社会的な信頼の低さ、また社会からの偏見やマイナスイメージが自分たちが想像している以上に根深く染みついていることを肌で痛感してきました。

フリーランスや個人事業主としてバリバリ稼げる人ならまだしも、ただただ理由なく正社員のレールから外れてしまったあと、社会の荒波に耐えられるメンタルも、それを乗り越えるためのスキルや経歴も、わたしにはありませんでした。これはある意味「正社員にしがみついてしまっている状態」と言っても過言ではありません。そして逆に言うと「運よく正社員でいられている」のかもしれません。

注意散漫なわたしのパラレルキャリアという選択

とはいえ、同じ会社で定年まで勤めあげ、会社からの命令に何も疑問を持つことなく従い、同じ仕事だけをこなすように遂行していくということに対して、何の疑問も感じない性格ならまだよかったのですが(最近、わたしはこれができることもひとつの才能だと思っています)、社会人になってから時間がたてばたつほど、旧態依然的な企業体質や仕事に対する疑問、個人の自己実現が果たされにくい就業規則や組織環境という仕組みに対して疑問を覚えることが増えていきました。

また20代後半から30歳過ぎのある意味ざわつく年頃に多くのひと(特に女性)に訪れる、\なにものかになりたい/や\自分の手でなにかやりたい/という「なにものかになりたい病」を、軽度ではあるものの発症していたため、まだパラレルキャリアという言葉が一般的に広がる前から、わたしの場合は正社員で働きながら社外で自己実現を行うという2軸でパラレルキャリアや複業の状態を求めて試行錯誤を行っていました。

いま思うと、この病を少しずつ克服できたのは30歳を過ぎてからだったように思います。いまだ道半ばではありますが、手探りでいろいろと動いてきた結果、社会における自分の役割がほんの少しは見えるようになってきたのかもしれません。

当時choice!というチームを組んでnoteでパラレルキャリアにまつわる内容を発信していました。様々な視点で記事を書くために複数人で担当記事を決めて更新を行っていたのですが、たまたま自分が担当した昔の記事で、なぜ普通の正社員としての仕事だけではなくそれ以外の活動の場所を求めるのか、当時のわたしなりの考えが書いてありました。いまはまた少し違う視点もありますが、ひとつの原体験ではあるなと感じます。(3年以上前の記事になるので内容が非常にチープな点はお許しください…… )

普通に会社員をやっているだけでは、気付けなかった3つのこと。
ー北海道の名寄だって、おいしいトマトジュースだって、きっと知らなくても生きていけるけど、こんな風に普通に生活しているだけでは交わることのない人やモノとの出会いや経験を積み上げていくことで、もっと自分の人生に深みが出て楽しくなる。
ーパラレルキャリアは絶対やる必要があるものではないけれど、パラレルキャリアに一歩踏み出してみることで、自分がやりたいことを諦めずにチャレンジできたり、いろんな経験を積んで成長できるきっかけになるならば、それは自分にとってやってみる価値がある、そう考えています。
パラレルキャリアを知ってしまったこと自体が、
もしかしたら"しんどい"のかもしれない
ーなぜなら、しんどいこと以上に、パラレルキャリアの活動している中で自分自身が精神的にも支えられてきたこと、パラレルキャリアをやっていなければ辿り着けなかったモノや経験、一緒に悩んでくれる意見を言い合える仲間との出会い、また、先頁にも書いた考え方や価値観を身に着けられたことが、何よりも自分の中で大切なことになっているからです。

あくまでこれはパラレルキャリアや社外活動をやりたいからやっているのではなく、自分の中の選択肢や視野を広げていくために、注意散漫で好奇心旺盛なわたしにとってこのやりかたがたまたま性にあっていただけです。これを別に全員に推奨する気は1㎜もありません。しかも正直、キャリアと呼べるほどのこともできてないです。普通のひとがキャリアの軸を複数もつような柔軟な働き方の状態にするのは、想像以上に難しい。

むしろ、わたしはクリエイターやエンジニアの方など、自分のスキルを活かして目の前のこと一本に愚直に向き合っていける強さには敵わないと思っており、そんなスペシャリストたちを心から尊敬しています。スペシャリストになることが叶わなかった自分にとっての生き方のひとつが、自分の視野を広げることによって社会に貢献することなのではないかという自分なりの仮説です。

自分で自分の人生を経営する時代へ

個人的には正社員かフリーランスかはたまた複数の企業に所属する複業家のどれがいいか、という話ではないと思っています。正社員であろうが、契約社員であろうが、個人事業主であろうが、何をしていようが、自分が自分の人生を経営していくにあたって、どの就業形態でいることがその時にいちばん自分にとって最適なのかということなのだと思います。

最初からフリーランスになることを夢見ているひともいるとは思いますが、何年間か企業で正社員で働いたのちに独立してフリーランスとして働きはじめる人たちの中には、別にフリーランスになりたかったわけではないけど、現在の日本で自分の最適を考えたときに対応できる働き方がフリーランスしかなかった、ということもあるのではないかと思います。

そのせいかフリーで働いていたひとたちが、再び自分のやりたいことが尊重されて、柔軟に働ける場所を見つけてまた企業に所属していく、これも近年では増えてきていると思います。また今回のような新型コロナの影響でフリーランスの大変さを実感し、生きていくために一度企業に就職せざるを得ない人も中にはいらっしゃるのかもしれません。

そうでなくても、人生のフェーズが変わることで人々にとっての最適な働き方は常に変化していくものだと思います。わたしはもうしばらく正社員という選択肢を選んでいくと思いますが、もしかして社会が少しずつ変化していくなかで今の概念にはない新しい雇用形態や社会的価値観が生まれ、それを選択する日がくるかもしれません。

しかし、わたしたちがそれを実行し、少しでも自分の身の置き方の選択肢を増やすためには、今以上に企業側の理解や協力も必要不可欠だと思っています。副業許可や業務委託契約、契約形態の変更などあらゆる就業のかたちに対して、「正社員だから」、「理由はないけど規則上ダメ」、「ほかの人に悪影響」など、まだまだ日本の企業の多くが前例のないものに対して恐れ、頑なに拘り、納得のできない理由で認められていないものがたくさんあります。せっかく働きたいと思っている社員のやる気を奪い、その結果お互いに別れの道を選ばざるを得なくなる。そんな悲しい結末が少しでも減ることを願っています。

自分も企業もお互いが納得した状態でその場所に存在し、お互いにとってメリットのある仕事の約束を結び、手を取り合って成長していくこと、それがこれからの時代の働き方として大切になるのではないかとわたしは思います。

これから先わたしたちの働き方はどうなっていくのか、常に変化していく社会に身を置く一員として、わたし自身これからの変化を楽しんでいきたいと思います。

「おいしいものを食べている時がいちばん幸せそうな顔をしているね」とよく言われます。一緒においしいもの食べにいきましょう。