見出し画像

蔵出し:「そうめん談義 一スーパーのレジにて一」from 野菜さらだ『アメリカは、住んでみなくちゃわからない!』(第37回)

※この蔵出しシリーズは、1996年~2002年までアメリカに留学していた野菜さらだが後半の1999年~約三年間、週2回発行していたメールマガジンの記事をそのままそっくりお送りするものです。今回は、毎日更新していきますので、お楽しみいただければ幸いです!

**********************************
  野菜さらだの
   『アメリカは、住んでみなくちゃわからない!』(愛称アメすん)
        (1999/10/5発行) 第37号 (火・金曜発行+日曜版)
**********************************

 こちらではバスの停留所で、教室で、見知らぬ人同士でもちょっとしたきっかけですぐに会話が始まります。今日はそんなちょっとした会話がテーマです。

◆本日のテーマ「そうめん談義 一スーパーのレジにて一」
 
 こちらのスーパーのレジには、回転台あるいは短いベルトコンベアーのような買った品物を置く台のようなものがあり、精算してもらう際には買い物客はそこに買ったものをポンポンと並べて乗せておくことになっています。

 そんなシステムですから、特に見ようとする訳ではないのですが、自分の前のお客さんが何を買っているか、自然に目に入ってきます。夏には直径20cm、高さ30cm位もあろうかという巨大なバケツ様の入れ物に入ったアイスクリームがその台の上に乗っているのをよく見かけます。

 ちょっと前になりますが、夏の暑い盛りに近所のスーパーでいつものように買い物をしてレジで並んでいたときのことです。「こういう暑いときはさっぱりしたものが食べたいね」とそうめんを買おうとそのレジの台に置いて精算の順番を待っていました。すると、後ろに並んでいたアメリカ人がそうめんを指して「それっておいしい?」と聞いてきたのです。「もちろん、もちろん」とばかりに簡単な食べ方を説明した上、そのそうめんには英字で「Tomoshiraga(共白髪)」と書いてあったので「これは、夫婦共に白髪になるまで、という意味なんですよ」とその文字の意味まで説明してしまいました。

 そして、今度はつい最近逆の体験をしました。私たちの前に並んでいた一人のアメリカ人男性が「そうめん」を買っていたのです。私は以前のそうめんにまつわる会話をすぐに思い出し、でもアメリカ人が買うなんて珍しいなあと思い話しかけようか一瞬迷ったのですが、ま、ここはアメリカだから失礼じゃないよね、と「それお好きなんですか?」と尋ねました。彼は予想外の質問に一瞬ひるんだ様子でしたが、「yes」と答え、さらに私が「どうやって食べるんですか?」と聞くと「チキンを上に乗せて」と言っていました(アメリカ的!)。

 しかしレジでの会話はそれで終わり。余り会話は弾まず、話しかけられたくなかったのかなあ、と思っていたら、出口のところで今度は彼の方から「君たち、どっから来たの?」と後ろから声をかけてきたのです。「Japan!」と答えたら、「実は、僕の娘が東京で日本語を教えていてね、云々」と彼が日本を旅したときの話など5分位そこで話込みました。彼の口から「東京の井の頭公園は良かった」ということばが聞かれたとき、思わず「そこは私のお気に入りの公園なんですよ!」と共感したことは言うまでもありません。異国で「井の頭公園」なんてローカルねたをアメリカ人から聞く、おそうめんがきっかけで始まった、ちょっと嬉しいおしゃべりのひとときでした。                      (つづく)

==================================
◆お断り:この『アメすん』は、かつてアメリカのオレゴンに住んでいた野菜さらだが個人的に体験した、おもしろい話を友だちや家族に話すようなつもりで書いたものです。アメリカの他の場所とは違う、というエピソードも中にはあるかと思いますが、まあ、気楽に読んで楽しんでください。
==================================

#創作大賞2023

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?