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弱きを覗く
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良い夜のためのソネット

 良い夜、というものが、わたしを迎えなくなって、どのくらいになるのだろう。わたしが夜を迎えるのではない。人が夜を迎えるのではない。ほんとうは、夜のほうが人を迎えにくるのだ。
 けれどわたしには夜は来ない。もうずっと、まるで遠い昔にそう定められたみたいに。
 わたしには、ほんのわずかなことばの芽だけがある。人よりほんのわずかできるだけで、勉強のできない人間、そういう、ほんのわずかな才能だけが、わたし

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トウキョウ・デッドエンド

 これを書くのはわたしのため。わたしのような悲しみを背負っただれかのためにじゃない。わたしのかなしみのため。わたしのかなしみにわたし自身が少しでも寄り添い、そしてそのかなしみを少しでも癒すため。けれど、そんなことはできないのだと知っている。

 私の生まれは石川県の中都市。中都市といっても人口10万人と少しの、ぎりぎりの中都市。両親は理髪店を営んでいて、父はその3代めだった。わたしは生まれてすぐに

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負けないでくれ私

 負けないでくれ、私。ここんとこのコロナ疲れ、文化資本の枯渇、薬による生活の難しさに負けて、考えることをやめないでくれ。
 そろそろ結構、無理かもしれん。一度そう思ってしまうともうだめだ。転がり落ちるように思考は鈍り、言葉が錆び、精神が後退していく。添加物たっぷりのお菓子とはやりのゲームにごまかされ、テレビが伝える茫洋とした国のありさまをみては権威への不平を漏らすだけの、愚かな存在に堕ちていかない

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生きてるから生きるの怖い

 仕事が怖い。私にはできないことがたくさんあり、毎日仕事で起こるさまざまなことが怖い。その上、一度心身が壊れてしまっていることがとりわけ怖い。けれど、わたしはそうやって病気を理由にしているのがもっともダサい。やりたいと思っているのだから応募すればいいのに、採用情報だけじゃみえないたくさんのやるべきタスクというものについていけなかったらどうしよう、とやる前から怖がっている。わたしは元来かなりの不安症

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平成は終わり、わたしは大学院を辞めた

 タイトルの通りだ。わたしは本日をもち、大学院を中退する。手続きはおそらく済んでいるとおもう。本当は、退学ではなく除籍がよかった。
 「除籍」、「抹籍」というのはどちらも退学の一種であり、大学側による処遇を示す。除籍は今回の私のように期日までに復学手続きを行わなかったり、学費の未納が続く場合などに、それまでの取得単位などと含め大学内での履歴が削除される。抹籍はさらに重大で、たとえば罪を犯した場合な

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死んでもいいから貧乏やめたい

死なないためにありとあらゆる方法を取ってきた。そしてついに、これを読んでくれた誰かの支えを、サポートを、投げ銭を求めて、私は自らの文字を売ろうと思う。

今月末までに振り込まないと裁判の手続きを始めます。

電話口からのこういう最後通牒は今月二度目で、私はもう、そんな脅しくらいでは心が揺れ動くことなど無い。いくらでも訴えればよいし、信用機関に登録すればいい。私の世帯はすでに債務整理の経験があり、こ

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