見出し画像

13歳~22歳のためのヘヴィメタル入門①

もうタイトルで全部説明していますが、学生(13歳~22歳)向けのヘヴィメタル入門を書いていこうと思います。1回5枚づつアルバムを紹介していき、ニーズがありそうなら続けてみようかなと。「これからメタルを聞いてみようかな」とか「ちょっと興味があるな」という若い方向けです。

以下3点の条件でアルバムを選んでいきます。

1.リリース時のアーティストの年齢(フロントマン)が25歳以下。
2.時代・地域は問わず。1970年代~現在までのアルバムを幅広く紹介。
3.Apple Musicにあるものを紹介。

企画の肝としては1.です。あんまりこういう切り口のチョイスって見かけない気がするんですが、先日「キャリアの長いアーティストをどこから聴くか」という記事を書いて、その中で「やっぱり自分に近い年齢のアーティストの方が共感しやすいよなぁ」と思ったわけです。音楽ってその人(アーティスト)の主義主張や人生経験が反映されるものだから、年齢が近い方が感覚も近いはず。なお、「誰の年齢か」はフロントマン(ボーカリスト)の年齢とします。

そして2.の条件を入れると「1980年のアメリカの20歳」「1990年のロシアの20歳」「2000年の日本の20歳」の音楽を並列で紹介することになります。時代や場所が変わっても同じものもあれば違うものもある。「年齢」を切り口にさまざまな時代のアルバムを並列に紹介します。ただ、敢えてリリース年は書きません。フラットに聞いてほしい。今はリマスタリング技術(古い音源の音をよくする技術)も発達しているので、昔の音源だからと言って今の音源に音量や音質が劣ることはない、むしろ新鮮に聞こえるアルバムもたくさんあります。

最後が「ストリーミングで配信されていること」ですね。そうしないと「入門」にはならないと思うのでこの条件。Apple Musicを選んだのは「高音質(CD音質)で配信しているから」。Spotifyはやっぱり音が悪いんですよ、しばらく使っていましたが長時間聞いていると耳に刺さるしスカスカ。Spotify Hi-Fi(CD音質)サービスが出ればSpotifyでいいんですけれどね。まだサービスが開始されないのでApple Musicで選んでいきます。Apple MusicだけでなくAmazon Music HDでもいいですが、ぜひ若い方にはCD音質のストリーミングサービスを使っていただきたい。ストリーミングサービスに入っていない方向けにYouTubeからも1曲づつ貼っていきますが、これで「メタルという音楽」が気に入ったらストリーミングサービス入ってみることも検討してみてください。

それでは第1回目、5枚選んでみます。初回ということで「大ヒットしたアルバム」が多めです。やっぱり「大ヒットしたアルバム」というのは「好きになった人が多い」なので、どれかしら気に入る確率が高いと思います。

Guns N' Rosesガンズ•アンド•ローゼス / Appetite for Destructionアペタイト•フォー•デストラクション : 25歳

ガンズアンドローゼス衝撃のデビューアルバム。このアルバムのリリース当時、ボーカルのアクセルローズは25歳。22歳の時にインディアナからL.A.にヒッチハイクで移住し、友人たちの家に転がり込みながらバンド活動を続けていくつかのバンドを経たのちガンズアンドローゼスを結成。一気にスターダムに駆けあがっていきます。この曲Sweet Child O’ Mineは当時のローズの恋人だったエリン・エヴァリーに捧げられた曲です。

当時のメンバー

総ての曲はL.A.のクラブでライブを繰り返しているうちに書かれたもので、ほぼすべての曲はバンド全員のクレジット(一部、外部ライターも参加)。ライブの中でバンド全体でサウンドを練り上げていったのでしょう。このアルバムはリリース当初はそこまで評価されず、ビルボードでも182位どまり。ところがそのあと1年かけてじわじわと評価があがり、今では世界でもっとも売れたアルバムの一つと言われています。「成功するかどうかわからない」中で産み落とされたアルバム。当時の音楽シーンの中でも飛びぬけてワイルドで危険な薫りを漂わせ、様々な都市伝説を生みました。たとえばこんな話とか。もともとのジャケットも発禁となり現行のものに差し替えに。

発禁となり差し替えられたジャケット


Black Sabbathブラック・サバス / Paranoidパラノイド:22歳

「ヘヴィ・メタルの祖」とも言われるブラックサバスの2作目。リリース当時ボーカルのオジーオズボーンは22歳。メンバー全員がイギリスのバーミンガム出身です。バーミンガムはイギリス最大の工業地帯である「ブラックカントリー」の中心地。町のすべてが煤煙で真っ黒になるから「ブラックカントリー」と呼ばれます。オジーの両親も工場労働者であり、彼らも工場での労働が身近な将来の道でした。その中で「人と違う道を選んで」バンドでの生活を夢見る。オジーは6人の兄弟がいますが彼以外すべて女性で、女家族の中でただ一人の男児。

当時のメンバー

音楽的には非常に奇妙というか独自性が高く、「次の展開が読めない」アルバム。たとえるならAIが機械学習して作った音楽のような、、、。とにかく従来の感覚、音楽理論とは全く異なる方法で曲が進んでいきます。完全に独学で、反復学習しながら自分たち独自の「何か」を作り上げてしまった感覚。何かの映画で主人公の友人(ティーネイジャー)がブラックサバスのレコードを聴きながら「これが俺たちの音楽だ、ようやく俺たちの音楽が生まれたんだ」というようなセリフを言っていましたが、その感覚は分かる気がします。ドラムはビートを刻むというより映画音楽のような「雰囲気を盛り上げる」系だし、ギターも基本的に1本だけれどところどころ奇妙なタイミングでツインリード(ギターを2本重ねて多重録音する)になるし。セオリーなど意識せず、自分たちの感覚だけを信じてたどり着いた異形の音楽。


VAN HALENヴァン・ヘイレン / VAN HALEN炎の導火線:24歳

ギターの革命児と呼ばれたギタリストのエディ・ヴァン・ヘイレンとダイアモンド・デイブと呼ばれたボーカリストのデイヴィッド・リー・ロスのせめぎあいは「ギターヒーローとロックボーカリスト」の一つのアイコンとなりました。デイブはアメリカ生まれながら両親がウクライナとロシアから来たユダヤ系移民。両親は医師であり裕福な家庭でPA(アンプなど)を保有していたそう。ギターのエディとドラムのアレックス・ヴァン・ヘイレンのヘイレン兄弟は最初はデイブから有料でPAをレンタルしていたけれど、それをケチってバンドに誘ったのに加入後もレンタル料を取られた、という笑い話だか本当の話だか分からない逸話が残っています。

当時のメンバー

ギターヒーローとしての華やかなプレイと張り合うかのようなデイブのシャウトが響き渡る。若さとパワーが炸裂する華やかなボーカルスタイルが特徴的。ブルース由来の抒情性やシリアスさを感じさせず、とにかく勢いとパワーで押し切る豪快かつ軽快な音楽がウリ。ここまで突き抜けた音像は他にありませんでした。


IRON MAIDENアイアン・メイデン / The Number Of The Beast魔力の刻印:24歳

いわゆる現在「ヘヴィメタル」と呼ばれている音楽スタイルの直接的な源流と言えるN.W.O.B.H.M.(ニュー・ウェーブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)の代表格であるアイアンメイデン。このアルバムからボーカリストがオペラティックで演劇的な歌唱を特徴とするブルース・ディッキンソンに変わりました。ブルース24歳の時のアルバム。ブルースディッキンソンはロックボーカリストでありながら航空機のパイロットでもあり、民間企業でジャンボジェットの機長として勤務しながらバンド活動をしたり、自分たちのツアージェットを自分で運転したりと漫画の主人公のような人。他にもフェンシングもかなり本格的に行っており国際大会のUK代表として出場したりしています。渡航制限がなければ2021年の東京五輪にもフェンシングの解説委員として来日する予定もあったとか。

当時のメンバー

このアルバムの特徴の一つはドラミング。このアルバムを最後に脱退してしまうドラマーのクライブ・バーの独特なリズム感が炸裂しており、かなり有機的にボーカルやベースと絡み合うドラミングを披露しています。バンド全体の音がひと固まりになって迫ってくるような迫力があるのはやや前のめり気味に突っ走っていくリズム隊の勢いがあるから。パンキッシュなエネルギーも感じさせるアルバムです。そこに洗練された音色のツインリードのギターハーモニーが乗る世界観は唯一無二のもの。このバンドってギターの音色が美しいんですよね。ゴリゴリに歪んで耳を突き刺す音というよりはウーマントーンとも呼ばれる丸みのある滑らかなギターサウンドです。


X Japanエックス・ジャパン / Blue Bloodブルー・ブラッド:24歳

「関東3大ゴミバンド」と呼ばれ、あまりのライブの素行の悪さ(機材やステージを壊す、客と喧嘩する)から数多のライブハウスから出入り禁止になる荒れ狂う時代を経てカリスマ的人気を得て、メジャーレーベルの争奪戦の末にソニーからリリースされた2ndアルバムにしてメジャーデビューアルバム。当時、ボーカルのToshIは24歳。このアルバムのレコーディングはとにかく時間が足りなかったそうでレコーディング時の記憶がほとんどないそう。数多の伝説と共に局地的な社会現象にもなったアルバム。

当時のメンバー

疾走するドラム、粗削りというかリズム隊が前に出すぎとも言えるミックス、振り絞るようなボーカル、歌謡曲のようにメロディアスなギターソロ、一つ一つの要素には影響元が透けるものの、全体としては聞いたことがない音像であり、初めて日本人がヘヴィメタルを「自分たちのもの」として消化したアルバムだったと言えるかもしれません。


以上、5枚のアルバムを紹介してみました。気に入ったアルバムがあれば幸いです。次回の記事はこちら

それでは良いミュージックライフを。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?