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Frost* / DAY AND AGE

フロスト* (Frost*)は、2004年にキーボーディスト、コンポーザーのジェム・ゴドフリーと、アリーナ、キノ、IQといったバンドのメンバーによって結成されたイギリスのプログレッシブ・ロック・スーパーグループで、2006年デビュー。本作は2016年以来のリリースで4作目。良質なプログレをリリースし続け、プログレ好きから多大な評価を得ているバンドです。

1. Day And Age 11:49 ★★★★☆

明るく軽快な曲、いかにもプログ的。メタル色が薄い正統派プログ。シンフォ系でもなく、王道のUKプログレといった感じを受ける。Steven Wilsonの近作にも近いがあそこまで内省的ではなく、もう少し明るめな曲調。唐突感はないが奇妙なコード進行、ひねりがあるポップス、英国的とも言える。アルバム冒頭を飾るにふさわしい大曲。キーボードの音色が心地よい。


2. Terrestrial 5:12 ★★★★☆

声が飛び回る、変拍子で絡み合う、テンションがかかって適度に緊張感があるメロディながらアッパーな感じがある。透明感のある音像。さまざまな感情が想起されるが単純にひとつの感情に落ち着かない。どうともで受け取れる音程。メロディは魅力的なのだけれど、マイナー調というわけでもアッパーというわけでもなく、さまざまな感情に寄り添ってくる。


3. Waiting For The Lie 4:31 ★★★★

ピアノとボーカル。ピアノは反復する、さざ波のようなフレーズ。ボーカルがマリリオンのような少し深めの音。そうか、マリリオンとも近いな。あえて一番音像が近いバンドを言うならMarillionかも。メタル的な語法はほぼ使われていない。あくまでUKロックの範疇だが、各楽器の技巧は高い。XTCのApple Venusのような弦楽器のひねりのあるアレンジ。ピアノで抒情的になるがメロディが簡単には着地しない。

4. The Boy Who Stood Still 7:33 ★★★★☆

ファンキーにうねるベース、スティックだろうか。トニーレヴィンのようなはね回るベース。その上に語りが乗る。ヒップホップ、ラップほど韻は踏んでいないが、純粋な語りよりは音節や拍を意識している。近未来的ディスコサウンド。途中からメロディアスに変わった。どこか浮き立つような、祝祭的なコーラス。RushのRoll The Bones(アルバム)期にも通じる音像、時代が流れているのではるかにモダンではあるけれど、テクノロジーやシンセと生演奏が融合している。

5. Island Life 4:13 ★★★★☆

空間的なアルペジオのギター、Police的というべきか。ボーカルが入ってくる、やや性急なテンポ。やや翳りのあるメロディ。UKロックの魅力を感じる。やや北アフリカ的なメロディラインも間奏部には感じる。テンポはメッセージインアボトルに近いな、Policeの。考えてみるとPoliceもとてもUK的なバンド。

6. Skywards 4:14 ★★★★

繊細で憂いのある表情とロックのダイナミズムがあるメロディ。やはりUSのバンドとは雰囲気が違う、少しづつ表情を変えていくコード、メロディ、演奏。各人の技巧が出るというよりは全体のアンサンブルが重視されている。Dream Theaterの近作にも通じるところがあるかもしれない。DTに比べるとよりメロディの比重、作り込みの度合いが高い(その分技巧が前面に出てこない)。

7. Kill The Orchestra 9:27 ★★★☆

前曲から引き続いて曲間短く続いていく。組曲的。ボヘミアンラプソディの歌い出しのような、優美なピアノコードとボーカル。リズムが入ってくる、緩やかなダイナミズム。ネオ・プログレ。ゆるやかに流れていく。

8. Repeat To Fade 6:14

不思議な広がりのある音像、突然怒号のような声が入る。いかにもUKロック的なメロディ。少しPeter Gabrielのソロ作にも近い。

総合評価 ★★★★☆

UK的なメロディが満載、UKロックとして魅力的な1枚。UKプログレッシブ・ロックの王道。ポップなメロディセンス、過剰過ぎない演奏技術、凝ったアレンジ、目まぐるしく変わる音像。ややわかりやすい肉体性には欠けるがメロディが美しくフックがあるのでUKロック好きならおススメできる1枚。

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