見出し画像

Ногу свело! / Парфюмерия

Ногу свело!ノグ・スヴェロは1988年にモスクワで結成されたロシアのバンドです。1990年代から人気。グループの創造性は多様であり、ポップパンク、オルタナティブロック、パンクロック、アートパンク、スカパンク、エクスペリメンタルロックなどのロックミュージックのスタイルを結び付けています。バンド名の意味は「足が攣った!」だそう。中心人物はボーカル兼ベースのマキシム・ポクロフスキー。ソ連/ロシアの音楽を取り上げた濃い記事を見つけて知ったバンドです。

ソ連、ロシア音楽は面白く、前に記事も書いたことがあるのですが、なかなか情報が得られない。非英語圏のロックシーンはなかなか情報を得るのが難しいんですよ、検索キーワードがまず分からない。こうした記事はありがたいですね。キノーとヴィクトル・ツウォイは知っていたのですがそれ以外はあまり知らなかったので、早速その中から、今年(2021年)新譜が出ていたこのバンドを聞いてみます。

音楽性は先述したように非常に多様で、言語も英語、ドイツ語、ロシア語など各国語を駆使しているよう。ここ数作はロシア語のアルバムのようなので、本作も基本はロシア語のようです。だんだん電子音楽に寄ってきたり、実験音楽に手を出しているともあるので、本作がどんな音像か想像がつきませんが、、、。こういう「全く音が想像できないアルバム」をたまに聞いてみるのも面白いですね。予想がつかないのはワールドミュージック(非英語圏の音楽)の醍醐味でもあります。1年ぶり、15枚目のアルバムのよう。コロナ禍は音に影響を与えているでしょうか。タイトルの「Парфюмерия」は「香水」という意味だそう。ジャケットから想像するに、「姿かたちの見えない有毒物質」のイメージ? 現在の世界情勢には影響を受けているでしょう。

余談ですが、USロック史では91年、冷戦終結で内省の時代=グランジ大ブームが起き、2001年同時多発テロで団結の時代=ダンスロックブームが起きます。UKロック史では2016年のブレクジットで闘争の時代=ポストパンクリバイバルが起きる。そうした社会的変動と音楽はリンクしているので、あとから振り返ると2020年は一つの転換点になるのでしょうね。うーん、今のところ思いつくのはK-POPの躍進、ぐらいですが。ロックシーンだとそこまで音像のムーブメント、変化は起きていない気がしますが(というか、むしろライブができないのでロック自体退潮気味かも)、考えてみると世界中でここまで日常に大きな変化が起きたのは世界大戦以上かも。UK、US以外、非英語圏のアルバムにはどんな影響があるのか。そのあたり意識して聞いてみたいと思います。

活動国:ロシア
ジャンル:ロック、ポップパンク、インディーロック、スカパンク、パンクロック、ポストパンク、エクスペリメンタルロック、アートパンク、ポップロック、スカロック、オルタナティブロック
活動年:1988ー
リリース:2021年3月25日
メンバー:
 マキシム・ポクロフスキー -ボーカル、ベースギター、レチタティーヴォ、ビッグドラム、追加のギター、歌詞、音楽、プロデューサー(1988年-現在)
 マキシム・リカチェフ-トロンボーン、口琴、ティンバレス、タンバリン、楽器(1995年-現在)
 アレキサンダー・ヴォルコフ-キーボード、シンセサイザー、管楽器、アレンジメント(2008年-現在)
 エフゲニー・コンドラティエフ-トランペット、フルーガーホーン、パーカッション、ティンバレス(2016-現在)
 ビクター・クコルミン-ドラム、パーカッション(2017-現在)
 マキシムゾリン-リードギター(2017-現在)

総合評価 ★★★★★

これは面白い。なんだろう、90年代のサブカル的な音、バンドブームの中のサブカル感、イカ天とかナゴムとか、ああいう感覚のバンドがかなり洗練されてビッグになりそのまま30年真空パックされていた感じ。あと、サザンにも近い(サザンもけっこうサブカルだよね)。ただ、突き抜けるようなポップな曲があるか、というと、全体としてはもっとロック、サブカル寄り。

ビートとしてはレゲエやスカが多いが、そこにポルカとかコサック感も混じってくる。そこそこアップテンポで、ちょっとしたルーズさとタイトさが混じっている。音も隙間があるようで密度が濃く埋まっていて音を重ねがちなJ-ROCK的でもある。ただ、全体としてどこか日本的な感じもするメロディで、でも言葉も違うし聞いていくとメロディもやはりロシアだから違うし、「聴いたことがあるようで聴いたことがない」不思議な音像。これは面白いバンドを見つけた。あと、曲のクオリティにばらつきがないのも素晴らしい。どの曲もきちんとフックが合って最後まで飽きない(全37分と短めなのもあるけれど)。好物です。変わった音楽好き、非英語圏ロック好きにはおススメ。

なお、同時代性ということだとUS、UKのロックとの同時代性より、J-POPとかJ-ROCKとの同時代性を感じた。音的にはややレトロな感じ、80年代リバイバル。この「80年代リバイバル」はUKもそうかも。ニューウェーブとか。

1 Лохотрон ★★★★☆

ちょっとオールドスタイルな、ロカビリー的なロック。おお、かっこいいというかノリがいい。あと、ボーカルが切り込んでくる。いい声。芸歴30年以上のベテランだが音が想像よりはるかにフレッシュ。どこか楽し気な、コサック的なリズム。コサックロカビリー。途中から欧州ポップス的なメロディも入ってくる。面白い融合。

2 Деньги ★★★★☆

男女の会話から、インダストリアルというかニューウェーブ的な、80年代シンセサウンドだがロシアらしく重低音は迫力がある。ロシアはロシアンハードベースというジャンルがあるように低音が徹底していて独特。かつてのクラウトロックをさらに研ぎ澄ましたような、ベース音が独特な印象があるがこのバンドもそう。低音がカッコいい。ドイツのラムシュタインにも近い(というかラムシュタインがロシア的。たしかボーカルがロシア系だったかな、ソロではロシア語の曲も出していたような)。この曲はモダンな、イマドキのロシアンロックという感覚。

3 Крылья ★★★★☆

ちょっとロシア民謡的というか、独特のメロディセンス。言葉の響きの影響もあるだろうけれど。基本は欧州なんだなぁ、と思う。モスクワのバンドだからだな。ロシアと言っても広いから東南の方に行けばモンゴル、中央アジアに近くなる(ホーメイとかもロシア国内でも盛んなはず)。これは欧州音楽、東欧やドイツに近い。ちょっとレゲエ的なリズムも入ってくる。面白いバンドだな。サザンみたいな、さまざまな音楽性を取り込んでいる。ヒップホップも入っている。

4 Парфюмерия ★★★★☆

サザン、と言ったら、なんだかサザンみたいな曲が出てきた。イントロのキーボード音が原由子感がある。ボーカルも女声かな。そこからヒップホップへ。USとかUKの語るような、高度なヒップホップよりはもっと単純に語呂を合わせた、リズムに乗って話す、的な。t.a.t.u.の時代からそこまで変化していない。ヒップホップというよりダンスミュージック的かも。この曲は本当にサザンっぽいな。綺麗とかNude Manの頃のサザンっぽい。ただ、ビートは流石に2021年の音で洗練されている。シンセもややレトロ感はあるが今の音。ちょっとユーロビートというか、欧州ダンスサウンド的な音作りでもある。ビートそのものは四つ打ちではなくかるいレゲエ調だが。

5 Stay Alert! ★★★★☆

歌詞は英語っぽいな。タイトルも英語。ダンサブル、ちょっと人を食ったような歌い方。ただ、Little Big(ロシアのユニット)のように本格的なテクノ、ダンスというよりはあくまでロックの範疇。デジタルなビートは入ってくるが全体的には生バンド感のあるサウンド。ごちゃごちゃといろいろな要素が入っていて娯楽度が高い。ただ、メロディに独特のマイナー感、哀愁がある。ノルウェーにもちょっと近いメロディセンス。

6 Сила Притяжения Тел ★★★★☆

またダンサブルな、ちょっとファンキーな曲。ただ、ベースはチョップ、スラップしているがビートには跳ねる感じはそれほどない。しかし次から次へと面白いな。音像が面白い。バラエティに富んでいるが共通する部分もある。ちょっとスカとかレゲエとかの感覚があるビート、ただ、デジタル感がありタイト感もある。ルーズさとタイトさが共存していて、それなりに音像は洗練されているのにどこか人懐っこい。なんだかJ-POP的な「ごちゃまぜ」感がある。曲展開が目まぐるしく、メロディアス。ブラスも入ってくる。メンバーも大所帯だしな。

7 Королева ★★★★★

おお、ジャジーかつ昭和歌謡。いや、本当にサザンっぽい。これ「青春番外地」というか、桑田ソロっぽいし。まぁ、昭和歌謡っぽいというべきだな。あれはサザンが「昭和歌謡をやってみた」モードの曲だから。基本はレゲエなのだけれど、レゲエにしてはかっちりしているというか、隙間なくポップに進んでいく。妙な哀愁がある。フォークといえばフォークか。メロディセンスが近いんだなぁ。モスクワは遠いようで(音楽的には)近いのか。

8 Курим ★★★★☆

雰囲気が変わる。ダンスポップ、Little Big的な、イマドキのロシアンベースに。ああ、でも基本的なリズムは一緒なんだな。ちょっとスカとかレゲエのビートをそこそこアップテンポで流す、そのリズムがベース。というかこのビートはロシアには多い気がする。好きなんだろうな。もともとのポルカとかコサックダンスにも近いのだろうか。そういえば日本に民謡もレゲエのリズム合うんだよな。盆踊りのダブミックスとか結構合う。途中からラップ調に。これ、日本語載せたらJ-POPとしても成り立つかもなぁ。ちょっと後半は80年代のピーターガブリエル的に。USの頃の。ただ、ビートはもっと性急。テクノポップ。

9 Superstar Wanna Get Home ★★★★☆

ダブ的な、ピアニカとスカリズム。ただ、ビートは低音は効いているものの切れがいい。鉄琴的な音が入ってくる。オールドスタイルなヒップホップ×レゲエのフォーマット。あ、これは英語か。英語タイトルの曲は基本英語詩のようだ。キーボードの反復はちょっとK-POPもイメージしているのだろうか。いや、ロシアンベースはもともとこういう音作りするか。ミニマルなフレーズの反復というか、ベルリンテクノ由来なのだろうか。なんだか90年代サブカルがそのまま真空パックされて2021年に現れたような感覚。

10 Chemistry ★★★★☆

ロックバラード、UKのThe Darknessみたいな。ちょっと芝居がかったバラード。Queen、というか、ブライアンメイのソロ作っぽさもある(ボーカルスタイルがフレディマーキュリーとはだいぶ違うので)。寸劇的。面白いな。昨日筋少を聞いたが、国は違えど似たようなサブカル的マインドも感じる。どんな歌詞なんだろうな。歌詞があった。「化学、それは私に生と死を与えてくれる」みたいなことを歌っている。歌詞もなんとなくオーケン感があるな。

11 Альфа Центавра ★★★★★

盛り上がるバラード、なんだかアジア的なメロディでもあるな。どこか懐かしさのあるメロディ。一昔前のJ-POPというか。うーん、この曲はC-POP(中国ポップ)的かもな。New Pants(新裤子)にも近いかも。ただ、ロシア的なメロディセンスが入ってくる。そこに80年代的なレトロ感もあるし、全体として面白い。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?