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Beast In Black : Two Night In Tokyo @ 新宿Blaze 2023.5.16

2023年5月16日。いろいろ話題のトー横(トーホーシネマズ横)へ。トー横キッズに用事があるのではなく、ここに新宿Blazeというライブハウスがあるのです。

トー横で開場を待つメタラー達

今回の目当てはフィンランドのパワーメタルビースト、Beast In Blackのライブ。彼らは本国でも人気だけれどここ日本での人気も高く、前回(2019)の来日公演(→ライブレポ)は彼ら自身にとってもかなり感動的な出来だったようで「One Night In Tokyo」という曲を作ったほど。

前回はSuomi Feastというフィンランドのメタルバンドを集めたフェスのヘッドライナーとしての公演だったので、単独公演としては今回が初(フェスを含めれば4回目の来日)。公演のタイトルは「Two Night In Tokyo」とそのまんま。渋谷と新宿で公演したんですよ。

渋谷クワトロも新宿ブレイズもキャパは約800人。今回はほぼほぼソールドアウト。会場の熱気が高まります。前回は赤羽Reny(キャパ600)だったので少しだけ会場キャパが増えています。前回はフェスだったので、今回単独と考えるとかなり集客力が上がったか。

前回の来日公演から今回の来日までの間に3rdアルバム「Dark Connection(2021)(→レビュー)」をリリースし、今回はそのアルバムリリースに伴うツアー。個人的には2nd「From Hell With Love(2019)」に比べてちょっとパワーダウンしたかなという印象を受けたアルバムだったのですが、フィンランドでは変わらず1位を獲得したし、日本での人気も高まっている様子。もともとディスコ要素があるバンドでしたが、よりディスコメタル、トランスメタルに近づいた内容だったんですよね。シンセのリフやパートが増えているというか。リリース当初に聞いた時はちょっと整理されすぎたように感じたのと、この当時Amarantheもこっち路線を強めていたし、スウェーデンやドイツ(≒欧州メタルの中心地)のトレンドっぽくてちょっと食傷気味だったのもあるかも。Beast In Blackはフィンランドのバンドだから、フィンランドらしいユニークさを求めていたんですよね。とはいえライブで聴くと印象が変わる曲も多そうなので今回のライブが楽しみ。ライブだと荒々しさが増しますから。

19時、定刻通りにライブがスタート。いきなりの盛り上がり、大合唱。今回、もう待機列のところからかなり熱気がありました。欧州から来たと思われるファンもいたし、客層もなんというか「メタラー!」という感じ。U.D.O.のライブ(→ライブレビュー)でも感じた「メタルが好きなんです」という熱量を感じる層。コーラスでは野太い大合唱が起きます。ただ、U.D.O.よりはやや若め。あと、「バンドのファン」「グッズとかを手作りするファン」もいた印象。ちょっとアイドル文化的なところもあるのか。極少数ですがBeast In Blackペンライトとか作ってきてる人もいましたからね。この辺りはバンドもファンも(大御所に比べれば)若いということか。

セットリストはこちら。

1.Blade Runner(Dark Connection 2021)
2.Unlimited Sin(From Hell With Love 2019)
3.Bella Donna(Dark Connection 2021)
4.Go to Hell(Berserker 2017)
5.Revengeance Machine(Dark Connection 2021)
6.True Believer(From Hell With Love 2019)
7.Moonlight Rendezvous(Dark Connection 2021)
8.Sweet True Lies(From Hell With Love 2019)
9.Crazy, Mad, Insane(Berserker 2017)
10.No Surrender(From Hell With Love 2019)
11.Oceandeep(From Hell With Love 2019)
12.Hardcore(Dark Connection 2021)
13.Beast in Black(Berserker 2017)
14.Die by the Blade(From Hell With Love 2019)
15.Born Again(Berserker 2017)
16.Blind and Frozen(Berserker 2017)

Encore:
17.From Hell With Love(From Hell With Love 2019)
18.One Night in Tokyo(Dark Connection 2021)
19.End of the World(Berserker 2017)

全19曲、ライブは約1時間50分。それほど長尺ではないのに19曲も詰め込んだ濃密なライブ。各アルバムからの演奏曲数は次の通り。

Berserker(2017) 6曲
From Hell With Love(2019) 7曲
Dark Connection(2021) 6曲

ほぼ均等に演奏されています。From Hell With Loveから「Cry Out for A Hero」が演奏されなかったのは少し意外。前回のライブではオープニングトラックでしたが、今回はなし。前日の渋谷公演では演奏したようです。個人的には好きな曲なので残念。ただ、2日間連続なのでセットリストを変えてくれるのは両日観るファンにはうれしいですね。

全体としては大満足のライブ。改めて聞いても独特なボーカルですよね。線が細くて繊細なのにパワーもある、という。決してパワータイプではない、ポップスとかあるいはR&Bの裏声みたいな声なのにきちんとシャウトできる、歪もある声質。今回はややミキシングで声が小さめだった気がしますが、それでもユニークな存在感がありました。イケメンなのにスキンヘッド(単純に髪が薄いから剃っていると思われる)なのもビジュアル的に映えているし、ライブ中にテンションが上がってはしゃぎまわるのもご愛嬌。ピシッと黒コートで決めているんですが、ステージアクションにどこか愛嬌があるんですよね。この辺りはエアギター選手権をやってしまうフィンランド的なユーモアというか。

メインメンバーのアントン・カバネンもいい味を出していました。もう一人のギタリストはTシャツなのにがっちりと長袖のバトルジャケットを着こんでパッチを張りまくっている。基本的にオタクなんですよね。ルックスからしてギター弾いてなければ完璧なオタク。「Youは何しに日本へ」で取り上げられそうな日本に旅行に来た気のいいオタク感。

実際、日本文化(マンガ、アニメ、ゲーム)の大ファンで、Beast in blackというタイトルもベルセルクから。東京での公演なのに単身で先に来日して福岡に行き、大ベルセルク展を見てから東京に来るという熱の籠りっぷり。

大ベルセルク展でのアントン(公式Facebookより)

あとは、もう一人のギタリスト、カスペリ・ヘイッキネン (Kasperi Heikkinen)が今回は輝いていた。もともと上手い人だし、このバンドの中では一番実績を積んだベテランミュージシャンなのですが、今回はギターソロにより一層の華がありました。

この3人がしっかりとフロントを固め、それを支えるリズム隊。ドラムはかなり重量感があるタイプでディスコのリズムをたたいてもヘヴィネスがしっかりありました。あと、メンバーの中が良さそうなのもいいですね。ボーカルがギターのコードを抑えてみたり、バラード(Oceandeep)になるとドラムとベースのリズム隊がこっそり後ろでビールで乾杯していたり。

曲を次々と畳みかけるようにしてライブは続き、会場のテンションはかなり高い。本編最後を1stの名曲「Blind And Frozen」で締めくくります。この曲は2010年代のパワーメタルで5指に入る名曲だと思っています。

本編が終わるもアンコールの歓声は鳴りやまず。バンドも比較的早く戻ってきます。このテンポの速さ、ライブの密度の濃さは印象的。中だるみしている暇がない。

「今回のツアーでは世界中を回ってきた、北アメリカでも南アメリカでも欧州でもこの曲をやってきた。だけれど、今日はついにここでこの曲ができるぜ。One Night In Tokyo!」というMCからのOne Night In Tokyoはこの夜のハイライト。

その後、ライブ終わりは定番になっている最終曲の「End Of The World」(1st収録曲)を経て大団円。

終演後挨拶
公式Facebookより

パワーと笑顔に満ちた素晴らしいメタルライブでした。

One Night In Tokyo

それでは良いミュージックライフを。

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