「確率思考の戦略論」を読む 第5章 市場調査の本質と役割
マーケティング関連のベスト書籍として有名な「確率思考の戦略論」。2016年発行ですからもう7年前なんですね。常に変化すると言われるマーケティングの世界ですが、7年前でも色あせない内容になっていると読み直しながらつくづく思います。
今回は、第5章のマーケティングリサーチについてです。
この章から7章まで執筆者がリサーチと需要予測のプロである今西聖貴氏になっています。
市場調査の本質として、リサーチャーとマーケターの役割を明確にしています。大企業だとこのようにきっちりと役割が明確に分かれますが、そうじゃないとやっぱり全部一人でやっているってことも多いですよね。
市場調査には2つのタイプがあります、仮説を生み出す「質的調査(=定性調査)」、と仮説を検証する「量的調査(=定量調査)」です。
(本書では、質的と量的という言葉を使っていますが、私は定性と定量の方が使いなれていますので、今後は定性と定量という言葉を使います。)
定性調査は、典型的な1対1のインタビューに代表されるような消費者の言動や行動から洞察(インサイト)を得る調査です。
定量調査は、質問票などを使ってのコンセプト・テストやパフォーマンステストなどです。
一般的には、定性調査は狭く深く、定量調査は浅く広くデータを集められるという違いがあります。
製品テストのおいて、主なものとして、パフォーマンスを測る指標である総合評価(シングル・プロダクト・ブランド・テスト)と、購入意向から購入頻度について質問を行うコンセプトテスト、コンセプト・ユース・テスト(CSU)があります。
未来の予測は質的データから行う
本章の後半部分において定性調査から得られるインサイトの重要性について語られます。
消費者のニーズは不変でも、そのニーズを満たすカテゴリーが変わるっていうのはどういうことでしょうか?
言葉やアイデアはその社会の文化圏において意味合いが持つようになります。
言葉、商品、サービスの無意識化した意味がコードと呼ばれ、そのコードとの整合性が重要になります。
例えば、アメリカ人のお金のコードは「証」(あかし)です。
要するに、お金が成功のバロメーターであるのです。
社会、文化の中で意味付けされた「コード」が、商品やサービスに置き換わると「ニーズ」になるのでしょう。
定量調査は現在と近未来の指標でしかなく、本来、非合理的な消費者の行動を予測する上では十分ではないです。よって、中長期の予測において、質的データに経験に基づく自己裁量を駆使して判断する必要があります。
まとめ
第5章では市場調査のあり方やデータ分析、市場予測の考え方についてでした。定性調査のあり方は、西口一希氏(この方も元P&Gですね)が説いているN1分析の意義とも共通点があるなと感じました。
上にも書きましたが中小企業では市場調査に大きな予算はかけられないですし、定性と定量の組み合わせのようなこともできないことがほとんどです。
そういった意味では顧客1人のヒアリングから得た大事なインサイトとして少しづつ他の顧客にも当てはまるのか検証しながら進めていくようになりますよね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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