ワイズカンパニー 第2章 知識実践の土台
こんにちは。写真は最近行った「バンクシー展」で撮ったものです。
今回は「ワイズカンパニー」の第2章をまとめてみたいと思います。
知識創造とは、知識の獲得、確立、アクセス、蓄積、成文化、保存。
知識実践とは、知識の適用、活用、浸透、実行。
まず、知識創造が行われ、社会や企業の持続可能性を高めるという課題解決のために、知識実践が行われます。
本章は、哲学、科学、社会科学といった学術的な観点がいかに知識実践のベースとなっているのかを証明しています。
横文字の名前など頻出してきて飲み込みが難解な部分もありますが、大体のポイントだけまとめたいと思います。
哲学
知識実践を語るにあたって紀元前の古代ギリシャのアリストテレスまで遡ります。
まず、3つの知識が定義されています。
エピステーメ なぜを知る→科学の知識
テクネー いかにを知る→工学の知識
フロネシス 「何をすべきかを知る」
知識実践の起源は、フロネスシスにあります。
フロネシス(実践知、賢慮)とは「人間にとって良いことか、悪いことかに基づいて行動できる、真に分別の備わった状態」とされる。
これは、日本語の徳に似ているとしています。
徳がある人は、信頼され、尊敬される。みんなにとってよいことを常に見出そうとし、道徳的に優れた人間になろうとする生き方をしている。
この3つの知識を考えると科学(エピステーメ)や工学(テクネー)が自分の生活を豊かにするための知識欲であって、フロネシスはもう一段階高次の知識欲であるとも取れると思います。そう考えるとマズローの欲求5段階説ともつながりが見られると思います。
テクネーが自動車をどう作るかであるのに対して、フロネシスはどいういう自動車が良い自動車なのかを考えることを言います。
よって、フロネシスがあれば、状況に応じて最善で、全体にとって良いことができるようになります。
さらに、フロネシスを理解する上で、4つのキーワードがあります。
1 「行動」を起こすもの
2 「文脈」にふさわしい最適の行動をとる
3 「善」の行動を起こすこと
4 「目的」に合致した行動を起こす
科学(エピステーメ)、工学(テクネー)への関心が高かったため、無視されていたかのように見えるフロネシスですが、その後、多くの哲学者によって受け継がれています。彼らは、知識と実践は密接に結びついたものであり本質的に主観的なものであるとしました。
脳科学と知識実践
ここで取り上げられる知識創造の面白い点は、脳機能だけでなく、「身体」と「行動」の役割です。これまで思考や認知を行なっているのは脳だけと考えられていましたものが、近年では身体が世界との相互作用を通して知識創造の重要な役割を果たすと考えられるようになりました。
その好例の一つが野球のイチローとバットです。イチローはバットを肌身離さず愛情を込めて大切に扱っていました。バッターボックスに向かう前の脚でバットをこするというルーティンは、バットを自分の内面に取りこうという効果があるそうです。バットと触れ合うことで身体的に相互作用が起き、脳とバットがつながることで、あのようなヒットを量産した類まれなバットコントロールが生まれると言えるのでしょう。
人間の脳には社会思考性(生存のために他者とつながろう、行動を共にしよう、協力しよう、他者を思いやろう、共通善を追求しよう)が生まれながらにして備わっています。そのことは、脳のMRI(磁気共鳴画像)で社会的な人との関わりの中で生まれた感情による活動の変化からも明らかにされています。
社会科学の知識実践
また、社会科学における理論的知識重視の傾向から実践的知識の重視への回帰も見られます。
進化経済学(ネルソン&ウインターの先駆的名著)において、強調されているのは「実習」の大切さです。ルーティンの作業(行動的学習)を通じて、組織的に知識が習得されること=組織的知識実践が説かれています。
「戦略は直感に従う」(ダカン)、「ダイナミックケイパビリティ』(ティース他)、「戦略の世界史」(フリードマン)の3つの戦略、経営学の名著の名著においても、知識実践が組織レベルから社会レベルへと引き上げられています。
考察
この章では、以下の知識実践の重要性の研究が進み認識されてるのかを哲学、脳科学、社会科学の各視点から説明しています。頭を使って考えることと、体を動かすこと(体験すること)、外部との接点を作ることが知識を創造し実践する上で重要であることが再認識できます。
頭だけで考えていて知識は得られない。身体を動かしたり、他の人と交流することでアイデアや知識は生まれる。一方で、外との交流だけでも知識は創造されないでしょう。だから、時には瞑想したり座禅を組んだりすることも必要なんだと思います。
次章から具体的な事例を使いながらSECIスパイラルモデルに入り込んでいきます。
最後までお読みいただき有難うございました。
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