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移民について考える~日経「やさしい経済学」より

日経新聞のやさしい経済学で「国際労働力と移民」について連載されていました。

最近は技能実習生の受け入れが増えるなどいろいろな場面で外国人の労働者の方を見かけるようになりました。夜間のコンビニの店員や空港バスとか、町工場でも半数以上の労働者が外国人という企業も増えています。

人手不足の解決策として外国人労働者の受け入れの門戸が広がっているという現実があります。そして、欧米などで顕著なように移民が問題の火種となることも事実です。日本がどのような移民政策を持つべきなのか真剣に議論されるべきタイミングと言えるでしょう。

移民における現状や課題について考える上で良い記事だったと思います。

以下に、簡単に各回の要点をまとめました。

第1回:移民受け入れは欧米では移民が人口に占める割合は15%ほどとなり重要な政治課題であるが、日本では移民を認めていない(在留外国人は人口の2%)。一方で、人口減少による外国人労働者の受け入れの議論が進んでおり、世界でも国際労働力は生産要素として国境を越えて移動すると考えている。

第2回:アジアはダイナミックな移動空間。移民を送り出している国は中所得国がもっとも多く、一人当たりGDP$7000を超えると労働者を受け入れるようになる。かって送り出し国だったタイやマレーシアには隣国から労働者が移動している。世界の中でももっとも多く移民を送り出し、受入れてもいるASEANと深いつながりにある日本は人の移動空間の真っただ中にいる。

第3回:労働力(人)の国際移動は、研究が資本移動よりも研究が遅れていた。人の移動が受け入れ国の経済にどう影響するかは分析要素によっても異なる。マイナスに働く(代替関係)ことも、プラスに働く(補完関係)こともあるが、受け入れ国の賃金や雇用に与える影響は軽微であることがさまざまな研究で示されている。

第4回:移民の受け入れ国の賃金、雇用への影響についての調査結果は分かれるが、専門的な知識を有する人を受け入れる選択的な受け入れ国は正の効果が見られる。日本は受け入れだけでなく将来的な流出への備えが必要である。

第5回:移民による頭脳の流出は送り出し国にとって負の側面となるが、正の側面として送り出し国への人的資本への投資、教育のインセンティブ、移民送金といったものがあります。

第6回:能力の高い移民を受け入れ(量的規制)、低い能力しか持たない移民を排除する(質的規制)を両立させようとしても、量的規制は難しい。最近の研究では移民の受け入れは能力の高い労働者の賃金を上げる一方、そうでない労働者の賃金を下げ、失業率も向上させることが示唆されている。

第7回:日本では人口における在留外国人の割合が低く、外国人労働者の日本人の賃金に与える影響についての研究蓄積は少ない。移民政策学会が2008年に立ち上がり研究、議論されるようになった。

第8回:各国の移民政策においては高度な技能を持つ移民を受け入れる選択的な管理を行なっている国が増えている。日本は「統合なき受け入れ」グループに入る。

第9回:日本は移民だけでなく単純労働者を受け入れない政策だが、人手不足への対応が転換点となって在留資格、技能実習という2つのサイドドアが開かれ、アジア16ヶ国との送り出し、受け入れの2国間協力覚書と正面のドアを広いている。

第10回:日本では「技能実習」などの受け入れにおいて約3700あるとされる管理団体が行う。管理団体は一人当たり月3万円、初期費用で50万円の費用を受け取る。必要なシステムかどうかの議論が必要である。

第11回:出稼ぎのための労働移動が活発なアジアの中で日本は主要な目的地の一つである。その政策における主要なアクターである法務省はこれまで根本的な改革に取り組まず切り貼り的対応になっており、特定技能(2号)では地方自治体の努力に頼り、転職可能な「育成就労制度」の方針は決まっている中で限界を迎えている。根本的な課題に腰を据えて取り組むべきである。

まとめ:

日本でも移民に対する考え方、方向性をそろそろ真剣に議論されなくてはならないタイミングにあるということがこの記事を読むとよくわかります。それは、日本に行きたい、日本で働きたい、と思ってもらえる今だからこそ将来の方向性を官僚や政治家任せでなくてみんなが考えないといけないのだと思います。


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