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ココロノツバサ

2017年4月、縁あって沖縄に移住し、インターナショナル(英語イマージョン)校で何もかもが初めての体験をしました。

ワクワクと不安が交錯する中、OISTで開催した保護者向けの学校説明会。たくさんの皆さまの視線を浴びながらも、入学式で対面した小中の新入生保護者を除けば、この日が初めての出会いでした。

直接、言葉を届けられる場ということで、「AMICUS Direction」と題し、今の子どもたちを取り巻く世界の状況や今後の教育の変化、アミークスでめざす学びについて、私の思いをお伝えしました。

いま思えば、大きなターニングポイント。自ら刻んだ礎として、振り返っておきたいと思います。

ファーストペンギンになれ!

海に飛び込まないと エサが取れないんだけれど、なかなか飛び込みづらい・・・。みんなで一緒に何かしよう!って言ってる奴がたくさんいて、その中に1匹だけ勇気のある奴がいる。そいつが飛び込むと、次々と飛び込んでいく。

そんな勇気ある「最初のペンギンになろう!」って、子どもたちに伝えたい。

私がAMICUSに来ようと決めたのも、そういう気持ちがあったからです。

お伝えした4点

ひとつの未来予想図 One Example of Future Image
教育が変わる CHANGE in Education is Coming…
AMICUSの取り組み AMICUS Approach
今後に必要なチカラ Skills Valued for Now and Onward

①ひとつの未来予想図

最初に、「これから先、どんな未来になるか」ということを、皆さんと一緒に考えたいと思います。象徴的な数字を3つ紹介します。

1つめ「65%」。これは、アメリカのデューク大学の先生の予測で、 いま(当時)中学校1年生に相当する子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろうというものです。いま、存在しない仕事が半分以上新しくできる、ということであり、「将来、何になりたいの?」と尋ねた時、65%の子供が言えなくても当たりまえ・・・ということになるのかもしれません。

2つめ「47%」。これは、10〜20年後に自動化され、なくなる仕事がこれだけあるという予測です。今の半分くらいの仕事がなくなるわけですが、どんな仕事がなくなるの?というと、翻訳家、証券マン、生命保険の勧誘、レジ係、学校の教員?!・・・と言われています。じゃあ、その仕事は誰がやってくれるのか? ということになりますが、心配はいりません。ロボットがいるじゃない、人工知能があるじゃない、となるわけです。

3つめ、きわめつけはこれです。「15時間」。2030年までに、1週間に15時間働けば、今と同じような生活を送れるだけの社会になるだろうと。週休5日、時給800円×15時間で、果たして暮らしていけるでしょうか? 今と同じ給料で週休5日、週15時間労働ならいいですが、そんなおいしい話はないでしょう。いったい、どんな時代になるんでしょうか。

次に、今後の人口動態予測を見てみましょう。2030年にはどんな世の中になっているのか。高齢化がどんどん進み、3人に1人が65歳以上になる。こんな世の中、かつて日本では経験がなかったことです。反対に、生産年齢人口や子どもたちの数はどんどん減少し、このままでは日本が立ち行かなくなる。そういう予測が、統計から導き出されています。

ただ、沖縄県に目をやれば、少し異なった数値が見えてきます。2010年の生産年齢人口(15~64歳)を100とした時、2040年にどうなっているか。沖縄県は84.5で15%の減少にとどまる一方、秋田県は52.3%で、ほぼ半分になるという厳しい予測が出ています。これからの日本を担うのは沖縄県だ、という意識を持つことの意味が、ここにあるのかもしれません。

さて、皆さんに質問です。

自分の知らないこと、新しいことを提示されたとき、どんな反応をされますか? 「無理だ、できない」と思いますか、それとも「おもしろそうだ、やってみよう」と思いますか?

それが良いことか悪いこととかは別にして、「これ無理やし、 やめといたほうがいいよ」と考えるのが『20世紀型人間』で、20世紀に学校で学んだ人は十中八九、こんなことを考えると言われています。

何か自分が予期せぬことを言われた時、「そりゃ、新しいことを言われたら、わからんのは当たり前」という前提に立てば、 否定するのは、失敗してからでいいんです。「わかった! 面白そうやん! やってみようや!」の方が、絶対に楽しいし、新しいものを生み出せます。

私たち20世紀型の人間は、心をできるだけオープンにして、相手の言ったことを、まず受け入れるという姿勢を持たなくてはなりません。21世紀の真っ只中を生きる子供たちに向かって何かをしようとする時、そういうマインドでないと、きっと辛いだろうな、ストレスがかかっちゃうだろうな、と思います。

②教育が変わる

今の学校システムは公立私立問わず、「一生懸命頑張れば、どんどん世の中が良くなっていく」時代に作られた形が基本です。一生懸命コツコツとやり続けられることを良しとするような、「そういう子供をたくさん育てよう!」ということで作られたシステムです。

でも、そんな時代はもうとっくに終わっています。そのことは誰もが気づいていますし、国だって早々に気づき、対応しています。画一、均一のなかで、一定水準のものを作っていく時代ではないということは、もはや疑う余地はありません。

もちろん、教科書の内容を記憶し、試験で時間内にどれだけ正確に吐き出せるかといった力だけでは勝負になりません。偏差値に一喜一憂するような態度で入試に臨んではダメだということは、改革が頓挫した大学入試ですら明らかになっています。

現在の学校教育に対して、大きな警鐘が鳴らされているということを、私たちはもっと考えなければなりません。

今、学校で育成すべき「21世紀型スキル」は、この3つだといわれています。

  1. Information and communication skills(情報・メディアリテラシー、コミュニケーション力)

  2. Thinking and Problem-solving skills(分析力、 問題発見・解決力、創造力)

  3. Interpersonal and self-directional skills(協働力、自己規律力、責任感・協調性、社会的責任)

私たちが取り組むべきは、正解のない「問い」へのアプローチであり、児童生徒に身につけさせるべき力は「課題解決に向けて協働する力」「自分の考えを表現する力」「クリエイティブな思考力」です。

③AMICUSの取り組み

このような教育改革の渦中にあって、AMICUSはすでにその改革の先を走っています。そもそも創立理念を見れば、いま身につけさせるべきだといわれているような力を育てるべく設立された学校だということは容易にわかります。

AMICUSの教育理念は、『自分で考え、学び、行動し、自分の将来を自分で切り開く「自立した子ども」を育てる』です。

具体的には「Creative Thinker」「Independent Learner」「Risk Taker」の育成をめざし、イマージョン教育をその柱に、プロジェクトベースの学びをふんだんに取り入れ、ディアリテラシーを育てる独自の教育プログラムを展開していく場です。

まさに、21世紀型スキルの育成にぴったりの学び舎といえるでしょう。

私は、思います。学校って『育てる場』なんだから、子供たちにはどんどん失敗をしてほしいと。学校って失敗が許される唯一の場所ですから、いっぱい失敗したらいいやん! って。

失敗しないと、何も学べません。学校なんだから、どんどん失敗していいよ!って、先生たちには、そう子供に声をかけてあげてほしいと思っています。

また、私たち大人って、よくこんなことを言いますよね。100点満点のテストを作りました。「あなた、60点やったでしょ。あと40点分、頑張りなさい!」。

いやいやいや、その子は60点でも自分なりにすごく頑張ったかも知れません。でも、100満点のテストは、みんな100点取らなあかん、と。

でも、それって誰が決めたんですか? 一生懸命頑張って60点とったら、褒めてあげないといけないんじゃないでしょうか。

100点満点のテストは「100点取らなあかん、あと40点分頑張らなあかん」って、どうして「足りない」部分にばかり目を向けてしまうんでしょう。そんなことやっていては、頑張ろうって気は起こらないですよね。その子の「弱みをなんとかする」よりも、その子が持っている「良いところをどんどん伸ばす」ということにフォーカスした方が絶対にいいと思います。

それなのに、学校ではそういうトーンになりづらい雰囲気があります。わかっているんだけれども、なかなかそれができない。それが現実です。
でも、ちょっと考えの深い先生方はそれに気づき、対応を変え、取り組んでおられます。もちろん、AMICUSはそれを一番に考える学校です。

私は、知識を教えなくてもいい、その代わりに「学び方の種をまこう!」ということを、一生懸命にやりたいと思っています。

そのためには、学校が高い塀を立て、学校だけでやろう!という態度ではいけません。地域や企業どんどんつながり、先生だけではできないことを、いろいろな他者の力を借りて、任せるところは任せながら、連携してやっていこうと思っています。

④今後に必要なチカラ

ここまで申し上げてきたように、いま学校教育は大きな転換期を迎えています。そんな中で、AMICUSの存在が、いまこそ輝く時だと思っています。

先生が前に立って、「教科書何ページを開なさい!」「ここを覚えるのよ!」っていうような授業は、AMICUSでやっていません。そんな教育を、多くの学校が取り入れていかなければいけない時代になったと考えてください。

そして、子供たちと一緒に純粋な目で見た、 純粋な心で考えたことを「もしかしたらそうかもしれないな・・・」って、いま一度、何も染まってない子供時代に立ち返って、その時の自分ならどう考えるかな?っていうことを考える。きっと、その方が子供と大人がともに納得できる『素敵な答え』が見つかるのではないかと思います。

ある本にあった、ステキな言葉

「幸せな子」を育てるのではなく、 どんな境遇におかれても 「幸せになれる子」を育てたい。

当然、私たち大人は 自分の子供に幸せになってほしいし、それを願わない親はいません。そのために「あれしなさい、これしなさい」「あの方がいいよ、この方がいいよ」「こうした方が、あなたが大人になった時いいと思うわ」って、一生懸命声かけをします。

でも、その声かけは、あくまでも声をかけるお父さんやお母さんが「いいことだ」と思っていることであって、 聞いてる子供にとって、本当にそれがいいことかどうかわかりません。

確かに、今はいいかもしれないけど、 5年後10年後、子供たちがどういう境遇で、どういう人生を歩んでいるか分からないのに、今の価値観をもとに言ったことが、全ての子供に共通する『幸せになる方法』だとは思えません。

なので、「お母さんはこう思うけど、 あなたはどう思う?」。この先、子供が大きくなって「こういうときが来たら、こういう風に考えたらいいじゃない?」「こういうことも考えられるよ・・・」と、いろいろな視点で物事を見て、考えられるようになれるような、そんな接し方をすべきだと思います。

子供たちが、 自分で自分の道を決めていかなければならないときに、様々な考えを自分で見つけていけるような、そんな「思考の種まき」をしていきたいと思っています。

締めくくりに・・・

いま、私が一番気に入っている言葉があります。AMICUSへの決断を支え、背中を押してくれた言葉です。

何もしなければ何も起きない。
行かなければそれはやってこない。
飛び出さなければ世界は変わらない。
すべてのひとの心に翼はある。
使うか、使わないか。
世界は待っている。
飛ぶか、飛ばないか。
海をこえよう。
言葉をこえよう。
昨日をこえよう。
空を飛ぼう。

― ココロノツバサ。ANA 60th ―

この言葉を皆さんに贈り、今日の話を締めくくります。

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