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佐賀県にある2番目のドコモモへ

大隈記念館を後にし、もう一度、佐賀公園を目指して
自転車を漕ぐ。佐賀市内を縦横に走り回るのも楽しい。
進んでは止まりと、小回りの利く自転車の良さがある。
さて次は、佐賀県にある2番目のドコモモへと向かう。


ドコモモとは、モダン・ムーブメントにかかわる建物
と環境形成の記録調査および保存のための国際組織の
ことで、ドコモモ本部はオランダにある。日本支部は
1998年に設立され、2022年6月に新たに14件を追加、
現在264件が選定されている。しかし、その中でも、
やむなく取り壊されていく建物もある。2022年中に
中銀カプセルタワービルの解体も完了の予定である。




そして今回、ドコモモに選定された佐賀県立図書館。
1962年完成の建物は、佐賀県立博物館とおなじく、
高橋靗一(第一工房)氏と内田祥哉氏による設計だ。
館内の随所には有田焼のタイルが用いられ、佐賀の
雰囲気を感じる。1階はリニューアルされ、公園と
つながるテラスを持つ心地よい空間となっている。


建物のプランは、県立博物館をイメージさせる中二階
を設けた立体的な構成。2階の閲覧室からは、らせん
階段で上がる天井高の抑えられた空間の開架がある。
限られた空間を有効に利用した立体的な設計である。


では佐賀で1番目に選定されたドコモモの案件は
どれかというと、先ほど訪れていた佐賀県立博物館
である。佐賀公園の中には、将来に保存するべき
「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」と
選定された貴重な近代建築が2件も残されている。



また、テラスの向こうには、ただならぬ雰囲気の建物が
見える。その建物は坂倉準三氏によって手がけられた
市村記念体育館である。1963年に開館し、県立図書館
と同時期の建物だが、対照的なデザインとなっている。



楕円形の平面計画、ぎざぎざのスカイライン。傾斜の
ある屋根から、大きな滑り台のような樋で雨水が排出
される迫力のある建物である。坂倉準三氏による設計
の1951年に完成した神奈川県立近代美術館  鎌倉館
(現鎌倉文華館)との違いにも目を見張るものがある。

現在、市村記念体育館は2026年リニューアルオープン
にむけ活用方法について議論されている。この建物が、
佐賀で3番目のドコモモに選定されるのが楽しみだ。



一方、福岡にもドコモモに選定された建物が2件ある。

1件は福岡銀行本店で、黒川紀章氏の設計の建物。
選定された建物の中では比較的新しく、アトリウムの
カフェでコーヒーを頂きながら過ごせるのが嬉しい。


もう1件は、九州工業大学記念講堂および事務棟。
好きな建物のエルボスコ(旧野尻湖プリンスホテル)
の設計者でもある清家清氏によって設計されている。
森の中に佇む感じが、エルボスコともつながる所が
あり、よい雰囲気である。しかしそのエルボスコは
今は営業されていないようである。建物が長くよい
状態で使い続けられることは、難しいことだと思う。
その建物を思う人たちによる支えも必要とされる。
ドコモモに選定の建物。大切に使い続けられてほしい。




この旅で内田祥哉氏の手掛けた佐賀公園内にある2つ
の建物をみることができた。佐賀県には、内田祥哉氏の
設計の建物が他にもある。有田町の九州陶磁器文化館
と有田町歴史民俗資料館の2つの建物。また有田町を
訪れよう。佐賀県の自転車の旅はまだまだ続きそうだ。

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