見出し画像

経営とは何か?

穴だらけの小さな船。周りは荒れ狂う海。目的地は見えない。それでも未来を信じ、諦めずに手で水をかき分けて必死に前に進む。スタートアップ経営はそんな冒険の物語。

沈む運命にある船

「船」というと堅牢で安定したものを思い浮かべるかもしれないが、残念ながらスタートアップは最初から沈みかけているボロボロの船だ。乗っている人数が増えれば、穴からどんどん海水が入ってきて、沈む速度はあがる。だから最初は1人で挑むし、多くの人はボロボロの船には乗りたがらない。

不確かな未来を信じて進む

傷んだ船を修理したり、海水を外に出したりしながら、必死に素手でこぐ。そこからオールを作って、人を増やして、航海のスピードを上げていく。優秀な人材(ex.漕ぐ力が強い人)を雇うこともあるし、誰が漕いでも上手に船を前に進められるよう設備・仕組みに投資することもある。

吹けば飛ぶような沈没船に人生を預けて人が乗ってくるのはそもそも奇跡。何より、船に乗る仲間を増やすことは、寿命を縮めることに直結するので双方にとってそれ相応の覚悟が必要。採用が会社にとって重要な意思決定であることは言うまでもないが、入社する人にとっても人生を左右する。船が沈む不安に耐えながら、仲間に感謝し、信頼し、励まし、一緒に陸地を探す。

船を大きくする=資金調達

ボロボロの船ではどんなに頑張っても、海水が入ってくるのを防ぐことに追われて前に進みにくい。「もっと大きくて強い船がほしい」と多くの起業家は考える。そこで資金調達をすることになる。

船自体の容積をデカくすることで、穴から海水が入ってきてもしばらく沈没せず耐えられるようにしのぐことができる。現預金残高を限界まで増やすことが経営を安定させ、より中長期の視点で船を正しい方向に進められる。

ベンチャーキャピタルや大手企業、エンジェル投資家という豪華客船は、リスクをとって船の増設・補強をしてくれる。その代わり、陸に着いたら報酬は山分け。まさに大航海時代。彼らは1,2隻の船が沈むことは気にしない。大量にある沈没船より、1隻の陸へ辿り着く船が何百倍ものリターンを生むことを求めている。

10人に3人は1年以内に沈没

スタートアップ経営は、穴の空いた沈没船で陸を目指す旅。その旅に挑戦するか、安全な港に留まるか、それはもちろん個人の自由。当然ながら沈没する人も少なくない。起業して1年後に存続している会社は70%ほどと言われる。つまり10人に3人は1年足らずで沈没する。3年経てば半分は沈没する。

それでも信じる何かがある人が起業という道に進む。船出は誰にでも簡単にできる。公証役場と法務局に行って書類を出すだけ。明日から誰でも社長になれてしまう。

船を沈没させないこと

社長の1番大事な仕事は、信じる未来に向けて船を導き続けること。もっというと「船を沈没させないこと」に尽きる。逆にいうと、何度間違えた方向に進んでも、沈みかけても、休憩しても、構わない。ほんの少しかもしれないが、沈没さえしなければ前に進むことができる。

「お金が尽きなければいい」と思いがちだが、そういうわけでもない。どちらかというと航海する意義を失った時に船は沈没する。それがあれば、走り回って、何とか沈没させないことはできる。

存在意義(パーパス)を常に問い直し、沈没させない努力を続けることが会社経営の本質なのかなと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?