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詩歌:女官

 給仕するために柱廊にいた
 忘却した帽子を
 ひろいにホーフガルテンの
 休止されない運搬に、
 近づいて、休拍の呼吸を聽く
 歩み、彼は厨房にぶどうを運ぶ
 輝きの去る星座の海
 こぼれた房が床にはね、
 猫の眼が壁から覗く
 愛を、
 泡沫に消える、裾を赤く汚して
 夜に衣
 甘いむつみ
 知るべくもない顔
「明日は濃い霧がたちこめた……」
「昨日は波が静かになりつつある」
 灯台もない
 この
 だれも寄り付かない暗さに
 充溢している
 女官が小路を歩き
 カツンカツンと、
 跫音をならす
 あるいは幻想の頸すじを
 なめる
 白のなかに消える
 故郷のない額縁に
 模様のない沈黙する女
 ふと背後を振り返ると
 小供の突然の声、雄叫び、
 だがあなたは彼を見ないだろう
 過剰にあたりに残った
 影だけを見つめたまま

詩を書くひと。押韻の研究とかをしてる。(@sagishi0) https://yasumi-sha.booth.pm/