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詩歌:囲炉裏のふち

 茅葺屋根の小屋で囲炉裏
 を囲み、若い奴らは手を擦りあわせ
 口々に愚痴りだした不幸せ
 を寒風が吹くなか、老人がひとり

「お前らはなってない。古いものは
 大切にせず価値を知らない。
 現状に甘え、何も生まない。
 偉そうにしてもすべて作り物だ」

 しかし、誰ひとりとして若者は
 聞こうとはしなかった「くだらね」
 吐き捨てて皆出ていった、項垂れ
 まるで意味をなさなかった泡の言葉

 ふと、若い女が老人の前に座した
「お前はいかないのか」老人は嗤う
 女は黙ったまま前掛けの煤を払う
 皺を刻んだ手を温かな手が包む涙


*抱擁韻 abba/cddc/effe/ghhg

詩を書くひと。押韻の研究とかをしてる。(@sagishi0) https://yasumi-sha.booth.pm/