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詩歌:河口へ

 蛇口から落ちる水に手を浸した
 顔を洗い、口を漱ぎ、頭を空にする
「何時からだろう、わたしたちは
 身の丈以上を求めた」エゴみたいだ

 くらべるだけのこころの醜さ「背伸びは嫌」
 嘲笑や非難でたがいを遠のけて
 正義を振りかざすことが知性なのか、相手を尊重せず
 罵倒ばかりが並ぶ社会の手のひらには

 あなたは掬われていますか? 余計な一言をはき
 自己弁護と雄弁なナルシシズム、語り継ぐ
 その生き方を幼子に誇れるのか?「わたしは嫌」
 美しく、しずかな眼で、人の子となり

 澱みと穢れを抱きとめ、河口へ 川のような
 その厳かさよ、雄壮さを大声で
 伝えたくなる。誰とも言い合わず穏やかに、超越
 ありのまま首すじに吻れて、水は肌を透過

 

*抱擁韻 AWXA AYZA BWZB CYZC

A「手を浸した/エゴみたいだ/背伸びは嫌/手のひらには」
エ・オ・イ・ア・イ・ア
B「一言をはき/人の子となり」
イ・オ・オ・オ・オ・ア・イ
C「川のような/肌を透過」
ア・ア・オ・オー・ア
W「空にする/語り継ぐ」
ア・ア・イ・ウ・ウ
X「わたしたちは/わたしは嫌」
ア・ア・イ・ア・イ・ア
Y「遠のけて/大声で」
オー・オ・エ・エ
Z「重せず/超越」
オー・エ・ウ

詩を書くひと。押韻の研究とかをしてる。(@sagishi0) https://yasumi-sha.booth.pm/