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マロン内藤のルーザー伝説(その11 ター坊リフレッシュ始まる)

1976年製ポルシェ930ターボ(通称ター坊)の正規ディーラーによる無料診断結果の説明を受けるべく、わたくしマロンは些か敷居の高いポルシェセンターを再訪した。

高級外車ディーラーの雰囲気にふさわしい、凜としたたたずまいの受付嬢さんからまたしてもおいしいホットコーヒーを供してもらい、それがあくまでも職場のルールに則った業務フローであることを差し引いてもうれしい気持ちになっていたところにサービス部門の若き責任者Sさんが現われた。Sさんの手にはコンピューターから出力されたであろう分厚いター坊の診断結果が握られていた。

いつもは気さくなSさんが神妙な表情で重い口を開いた。ター坊をリフレッシュするためには数多くの部品交換が必要であり、総額120万円かかるというのである。おいしいホットコーヒーでほっと一息ついていた私は絶句した・・・

そういえば、「格安中古ポルシェには手を出すな」とター坊購入後に買ったビンテージポルシェ専門誌に書いてあったっけ・・・読まなかったことにしていたそのコラムが亡霊のように脳裏に浮かんだが、今更なんの役にも立たないことは誰の目にも明らかであった。

当然のことながら、無料診断・リフレッシュプログラムの無料部分は診断のみであって、新車でもない限り必ず発生するであろうリフレッシュは有償であり、診断にかかった人件費もリフレッシュのお値段に含まれていることは想像に難くない。Sさんが提示した金額は、ター坊購入とそれに続く数々の出費にあえいでいた私には到底支払えるものではなかった。外車の部品は安くないのである。

恥を忍んで「直ちに生命の危険につながる最重要部品のみ厳選して欲しい」とSさんに懇願した結果、なんと120万円のお買い物リストは50万円にまでスリムダウンしたのである。生活費を切り詰めればなんとかなる!かくしてター坊のリフレッシュがスタートした。それはまた、オーナーであるマロンにとっては自らの、そして周囲の方々の命をも守ることにつながる安全な車両運行への第一歩であった。「Sさんを信じていれば大丈夫だ・・・」と自分に言い聞かせるマロンであった。

続く・・



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