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『ノゲノラ』に学ぶ天才と頭脳戦の書き方!!

はじめに

読書世論調査2019年度版によれば、高校1年生が1ヶ月間に読んだ本ベスト5は以下の作品です。

1位 君の膵臓を食べたい
2位 屋上のテロリスト
    ノーゲーム・ノーライフ②
    ノーゲーム・ノーライフ①
3位 君の名は。
    ソードアート・オンライン㉑
    ノーゲーム・ノーライフ③

10代の読み手がいま、どのような作品に興味を持っているのか?
彼らがいま、夢中になっている文芸作品はなにか?
上記のランキングから明らかですね。

そう——『ノーゲーム・ノーライフ』です!

今回は『ノゲノラ』を商業作家の論理的思考で読み解いていきます。

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ラノベは加点法

みなさんは書き上げた自作品を見直すとき、どんな点に注目していますか?

誤植?
キャラの一貫性?
プロットの辻褄?

よくラノベの講評で編集部から指摘されるのは、上記の項目です。
初心者の作家志望者の原稿で、できていない部分はたしかにそういったロジックの部分で矛盾していることが多い。

しかし——別にキャラの性格が途中で変わろうが、プロットが破綻しようが、別に“面白ければ”どーでもいいのです!

そう、“面白ければ”です……。

電撃文庫元編集長の三木一馬さんの以下の書籍では、「加点法」という表現で書かれています。

作家として息をするのに必要です!ぜひご購入ください!

読み手はプロではありません。
それにラノベを読むとき、正座して集中して一字一句逃すまじ!な姿勢で臨んでいる人がいるでしょうか?

通勤通学の途中であったり。
食事しながら!?
あるいは勉強や仕事の合間にざっくり……。

スキマ時間になんとなく読むのがラノベです。

つまり、キャラの一貫性とか、プロットの破綻よりも。

ながら読みしていて、思わずぐっとくる作品!〉

——を読者は望んでいます。

「そんなバカな!自分は整合性のツッコミばかり受けるよ!」

という方。

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』は、熱狂的なファンを全世界に抱える、現代の神話というべき作品です。
この『エピソード4』には、有名なプロットホール(筋書き上の矛盾)が存在します。

《デス・スター》という、帝国軍の前線基地。
この《デス・スター》にはなんと!
弱点があったのです!
その一点を攻撃すれば、《デス・スター》は崩壊する!

さあ、あなたはこの矛盾に気がつきましたか?

「なんでわざわざ、敵がそんな危なっかしい弱点を作ってくれてるんだよ!」

これは公開当初からずっと言われ続けてきたことで、『ローグワン』という映画でこのプロットホールを穴埋めする作品が作られました……。

そもそも。

宇宙空間には空気がないわけです。

ピシュン!ピシュン!
ドッゴォォォン!

と、レーザーの音も爆発の音も起きません。

それに対し、監督のジョージ・ルーカスは有名な言葉を残しています。

  「俺の宇宙では出るんだよ」

さあ、どうでしょうか?
整合性を欠く『スター・ウォーズ』は面白くないのでしょうか?

そんなことはありませんよね?

読み手は加点法で作品を楽しんでいるのです。

……と。

なぜここまで加点法についてお話をしてきたかと言うと……。

『ノゲノラ』が好きな方。
そして、まだ読んだことがない方。

こういう書き方をすると、批判しているかのように見えてしまうと思うのですが、そんなことはまったくありません。

むしろ、“敷居を低くする”というラノベ文芸にとって、必要不可欠なことだと考えています。

ここまで予防線を張った上で、あえて申し上げますが……。

『ノゲノラ』1巻は、少なくとも前半は、俗に言うメモ帳ですッ!!
(このnoteもかなり余白が目立っていますので、他人のことを言えた義理ではないことは重々承知しつつ……)

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これはラノベを揶揄してよく言われる表現ですが……。
『ノゲノラ』をぱらぱらめくると、下に余白が目立ちます。
なのでメモ帳と言われたりするのです。

しかし。
たとえメモ帳文体であろうと、高校1年生が読んだ本のベスト5です。
そこに書かれている“面白さ”は、累計450万部を数えるたしかな実力を秘めています。

では、『ノゲノラ』が優れている部分はどこでしょう?

それは天才ゲーマー姉妹の頭脳戦(ゲームバトル)と、魅力的なキャラクター描写です。

特に頭脳戦を描くには、商業作家の技術・知識が非常に大切です。

頭脳戦といえば、『デスノート』や『約束のネバーランド』など、主人公側と敵側の知略の攻防・ぶつかり合い・手に汗握るサスペンスはとても魅力あるストーリーテリングですね。

私も神山健治監督作品『東のエデン』というオリジナルアニメーションの脚本を担当する際、デスノートのように望みが叶うノブレス携帯を持ったキャラクター同士のデスノート合戦をどのように描くか。大変な苦労をした経験があります。

『東のエデン』は神山健治監督のシリーズ構成の下、脚本家の方々がアイディアを出し合ってこの頭脳戦を描きました。
当時、新人脚本家に過ぎない僕は、何ら貢献するアイディアを出すことができませんでした……。

あれから11年が経過し、いまなら頭脳戦をどう描けばいいのかを論理的に他人に説明ができます。

そんな新人脚本家時代に僕がぶち当たった壁をみなさんには最短ルートで越える攻略法——頭脳戦の描き方をご紹介します。

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