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アイロンパーマのヒーロー Ⅰ[想像を絶する大都会]

オカンの姉になる、伯母さんの話をまずは書こうと思う。彼女は相模原市に住んでいる。僕が高校を卒業して、川崎市にいた頃、何度も泊まらせてもらい、大変お世話になった。

オカンが緊急入院した時、真っ先に連絡したのが、神奈川の伯母さんである。僕が小学6年の頃、姉貴と2人で夜行バスに乗り、初めて東京へ旅行をした。

翌朝、品川駅に着いた僕らを、迎えに来てくれたのが彼女であったと、薄覚えながら書いている。

「想像を絶する大都会」

徳島の田舎から、都会に出てきた姉弟にとって、もの凄い衝撃であった。見渡す限りのビルと車と人の多さに、

「さすがは東京やなぁ、、」

と感動していた。その感動した景色は、なんと東京でも郊外の、町田市と県境の相模原市辺りだと、何年か後に知ることになる。

伯母さんは若い頃に、ご主人を癌で亡くされている。そのお葬式にオカンと親父、そしてまだ幼かった弟を連れて参列したらしい。

そこから彼女は、女手ひとつで3人の子供を育て上げた。

「女だって強く生きなきゃね」

建設会社で製図を書く仕事をされていたと思う。ご主人を亡くしてから資格を取り、始めた仕事であった。

都会で車を運転し、バリバリ働く伯母の姿はカッコよく、まさしくキャリアウーマンといったイメージがある。その長女にとても美人で、笑顔の素敵なお姉さんがいた。

旅行で訪ねた頃は、某一流企業に就職して間もない時期だったと思う。僕らを買い物に連れて行ってくれて、服や帽子の値札を気にするでもなく

「似合うね、買っていいよ」

と選んだ物を全て買ってくれたのだ。今まで自分の服など、買ったことがなく、僕らにとって、これほど衝撃的な事はなかった。

何年か後に社内結婚されて、嫁いでいったと聞いたが、本当のキャリアウーマンとは彼女の事であろう。

奇しくもこの年は、バルセロナ五輪で14才の岩崎恭子は、金メダルを獲得し、シンデレラガール誕生と日本中が沸きあがっていた。

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