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ギザギザハートの陸上部 Ⅱ [赤点問題]

県立工業高校の情報技術科に入学した。この学校には、機械科や電気科など他にも6クラスある。

その中で情報技術科は

「1番優秀で頭が良いクラス」

と言われていた。


赤点問題

中学に無かった赤点が高校では有り、期末テストで40点未満が補講の対象となる。さらに学年末テストでの赤点は、すなわち落第に繋がると言われていた。

建前上はそうであろう。1年の2学期で既にそれはただの脅しであって、授業を聞かなくても、

「赤点だろうが何とでもなる」

という事が分かってきた。

これは先輩からの情報であったり、実際に授業を受けて、ほんとに時間の無駄だと、身も蓋もない現実に直面する。

例えば、情報技術科には電気基礎という専門科目があった。教えるのは定年前のおじいさんで、やたら難しい公式を黒板に書いて、念仏ようにブツブツと張りのない声を出す。

昼飯を食べた後に彼の授業を受けて、寝ない人は見たことがなく、もしいるとしたら、

「その人は神」

である。本人も分かっているのだろう、この先生が寝ている生徒を注意することは一度もなかった。

しかし、この電気基礎の先生は、何を血迷ったのか、学年末試験にかなり難しいテストを出してきた。してなんと、

「クラスの平均点が12点」

と、ほぼ全員が赤点という事態に陥った。

僕も生まれて初めて8点という、衝撃の点数を取る。

そしてテスト後の授業では、全員にその解答用紙を返し、ブツブツ説明しながら、黒板に答えを全て書いた。さらに、

「今から再テストをやります」

と先生は、目の前に答えがあるにも関わらず、なんと同じテストをやるというのである。

僕は、黒板の字がきたなくて読めない所があったが、再テストでは90点を獲得した。

しかし、この再テストでクラスの平均点が、70点であった。黒板に答えがあると言っているのに、あろうことかまた1桁の点数を取るバカが何人かいた。

そんな奴は落第になるかと思いきや、そのお爺さん先生は補講をするという。そして内容が、

「原稿用紙3枚に漢字を書いて提出しなさい」

と謎の宿題で許された。もはや電気基礎はどこへ行ったのか、漢字を原稿用紙に埋めれば進級できることを知る。

ちなみに雅之は400文字の原稿用紙に漢数字の「一」を全て埋めて

「なんか、田植えしてるみたいなやー」

と周りを笑わせた。


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