見出し画像

東吉野村民やってます。Ⅵ[日裏]

東吉野村に移住して1年半が過ぎようとしている。今回は去年5月に妻と子供を連れて、日裏という集落に行った話を書こうと思う。

東吉野村は鷲家口から丹生川上神社がメインの通りで小学校、役場、こども園などがある。神社から上は高見川と四郷川の二手に分かれ、その川沿いを県道が走っている。

一般的に知られているのはそこまでだ。キャンプ場とつくばね発電所があるので、もしかしたら、日裏川の下流域までは訪れた人がいるかもしれない。

つくばね発電所から5キロ以上、日裏川沿いにその道は続く。途中は急勾配の上り坂や、ヘヤピンカーブの連続である。

日裏へ行くことになった、いきさつを少し触れておこう。大豆生(まめお)にT爺と呼ばれる長老がいる。

「ワシは昔、ヘリコプターに乗っとった」

と昔、木材を搬出する仕事に就いておられたらしい。ふるさと村の食堂でお酒を飲んでいる席にご一緒させてもらった。

ここで日裏からお嫁にこられた奧さんの話を少し聞いていた。

5月になり再会したのが、三尾の田中酒店でT爺は一人で飲んでおられて、

「よう走る兄ちゃんやな」

と声をかけられた。そして一緒に飲んでいると日裏の話になった。いろいろ聞いていると、ほんとに日裏を見に行きたくなってきた。

「T爺、明日迎えに行くから、一緒に行ってくれる?」

とお願いしたら、

「いいよー」

と二つ返事で返してくれた。



翌日、家族3人とT爺を乗せ日裏へ行くことにした。幅の狭い道をひたすら上っていると、左手に開けた土地が突如あらわれる。ヘリコプターの発着場で公衆トイレも見えた。

そこを少し過ぎると天一神社が右手にあり、車を停め家族3人とT爺で参拝した。境内には300年は優に超える巨木がある。

大人4〜5人が両手いっぱい広げて囲める程の幹は、天に向かって聳えていた。

境内だけではなく、周りを見渡せば巨木が何本も聳えたっており、神秘的な雰囲気を醸しだしている。

参拝を終え、カーブ2つ超えると集落が現れた。天に一番近い集落。周りの山が目線より下にあるので空が広く、日当たりは最高である。

「いや〜、懐かしいの〜」

とT爺もご機嫌である。奇しくもこの日は端午の節句で、4才の息子が陽気に走り回っている。区長とその隣の家で山行きの仕事をされている方と世間話をした。

この日は居なかったが、すぐ上の家にお婆さんが一人で住んでおられ、全部で3軒が日裏で残っている在所だという。

東吉野村で標高が最も高い在所であろう。夏でも涼しいと聞いたので8月にもう一度、訪れたのだが、扇風機も要らない快適さであった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?