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ギザギザハートの陸上部 Ⅴ [東高アネックス]

徳島市内の生徒にとって工業高校は普通科に入れなかった落ちこぼれの学校という感覚がある。

一方、郡部から来る者の中には就職のためとか、実業に特化した勉強をする真面目な生徒が集まる学校でもあった。

前に述べたが、この学校の中では、1番優秀なクラスである。

僕が中学時代、英語のテストで100点など取ったことが無い。

これが高校に入って最初のテストで100点満点であった。まず、これについて説明しよう。


1問目、A B C D (  ) F G H
上の(  )の中を答えよ


高校に入って、マジでこの問題が出た。僕はタイムスリップをしたような感覚を憶えた。

しかし、これを間違えるヤツがいることを知る。答えに「ヨ」と書いてあったのだ。

さらに国語や数学といった基本的な勉強は中学では当たり前と思っていたが、ここ工業高校では必要とされていなかった。

身も蓋もない話だが、力だけが必要だと頑なに信じて、従うとは負けることと言い聞かすようになる。まるで尾崎豊"卒業"の世界観であった。

西条というクラスメイトがいる。彼は常に3人の子分を従えて、喧嘩っぱやく、よく陸上部とも対立していた。

ある日、西条は大学生の彼女に車で迎えに来てもらっていた。野郎ばかりの工業高校では人の彼女であろうが、声をかけて友達になろうとする輩がいる。

また、それを見ようとやじ馬が彼女の周りを取り囲んだ。

「へぃ、かのじょー、オレと一緒に遊そばなーい?」

と一番乗りで駆けつけた雅之は、得意のナンパで車の中の彼女に、声をかけていた。

後から西条の跳び蹴りをくらうのだが、吉本新喜劇を観ているように息がピッタリあっていた。

クラスの雅之をはじめ、西条たちは近くにある大学の学生寮にたむろするようになった。

始めは大目に見ていた大学側も、あまりに毎日来るので高校にクレームが入った。

しかし、先生から注意を受けて、やめるような奴らではない、むしろ逆効果である。今でもあるのか分からないが、

「東工生、出入り禁止」

の看板が出来た。そんな屁のつっぱりにもならない看板を尻目に彼らは大学の女子寮のことを

「アネックス」

と呼んでいた。

それは高校の別館という意味なのか分からないが、教室にいるよりも居心地が良く、屯するには最高の場所である。しかし女子大生にとっては迷惑だったと思う。

その中の何人か分からないが、西条をはじめ東工生と付き合うという謎の現象が起きた。男女の仲は分からないものである。


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