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『マチネの終わりに』第一章(17)
蒔野はすんでのところで思い直した。
「いや、ごめん。……いいんだ。気にしないで。」
「何?」
「ううん、他愛もないことだから。」
洋子は、何かを察したらしかった。表情で釈然としない思いを伝えはしたものの、それ以上は喰い下がらなかった。
何度か二人とも時計を確認して、遅い時間になりつつあることに気づいていた。しかし、もう少しだけと見ないフリをしているうちに、最後は同席の者たちが、「そろそろ、……
蒔野はすんでのところで思い直した。
「いや、ごめん。……いいんだ。気にしないで。」
「何?」
「ううん、他愛もないことだから。」
洋子は、何かを察したらしかった。表情で釈然としない思いを伝えはしたものの、それ以上は喰い下がらなかった。
何度か二人とも時計を確認して、遅い時間になりつつあることに気づいていた。しかし、もう少しだけと見ないフリをしているうちに、最後は同席の者たちが、「そろそろ、……