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熊本で作曲家デビュー

来月2023年9月1日(金)、熊本県立劇場のホワイエで現代音楽を中心とした演奏会があります。今年3月まで熊本大学で作曲やピアノなどを指導していらっしゃった国枝春枝先生が熊本大学と組んでプロデュースする演奏会で、音楽学の山田高誌先生のプレレクチャーも行われる豪華なコンサートです。そしてなんとありがたいことに国枝先生は、私が作曲した短いチェロ独奏曲もプログラムに組んでくださいました。素晴らしいチェリストの山澤慧さんが私の『チェロ細胞』(»Cello-Cell« for solo violoncello, 2020)を演奏してくださいます。

Covid-19の蔓延による各国の都市ロックダウンが始まり、まだワクチンも開発されていなかった2020年の春頃、私はまだドイツ在住でしたが、やはり同様に人と簡単に会うことはできなくなりました。コンサートの開催も著しい制限を受け、ほとんどのものがキャンセルされました。そんな中、作曲家・渡辺裕紀子さんがたくさんの若い作曲家と演奏家に声をかけ、オンラインでもコロナに負けず新作をどんどん発表しよう、という趣旨の企画を立ち上げました。長年親しくしている私にも声をかけていただき、そこで書いたのがこの作品『チェロ細胞』でした。

企画は、金銭のやり取りを含まないもので、とにかく自主的に発信していこうという趣旨のものでした。そこで演奏家と作曲家双方にひどい負担になることがないよう、ごく短い1分程度の曲をということでした。企画に賛同した演奏家・作曲家による組が出来ていき、私はチェリストの北嶋愛季さんのために作品を描くことになりました。

北嶋さんは、私が2009年にドイツに移り住む前からの知り合いで、彼女は先にドイツに留学したため、ドイツでお会いするタイミングもありました。しかし、お仕事でお会いすることはなかったため、2020年の企画で初めてご一緒することになりました。演奏は何度も聴いたことがあって、丁寧に発音されつつも迫力のある演奏をされる方で、一度ご一緒したいと思っていたので、とても嬉しかったのを思い出します。リハーサルも全てオンラインで、ライブが無理な時は録音や録画を送っていただき、音楽の内容をお伝えしていきました。新しい音楽作りの仕方から、多くの気づきを得た経験でした。

今回、9月1日の演奏会では、オンライン初演の初演者ではなく、山澤慧さんというチェリストが弾いてくださいます。山澤さんは、現代音楽に特化しているイメージがなく、古典的なクラシックも頻繁に演奏していらっしゃる方です。東京近辺に住んでいた頃、よく演奏を聴く機会がありました。自主企画公演で毎年複数の作曲家に新作委嘱を出して、新しいチェロのレパートリーを開拓している活動も有名です。大変難しい奏法も、まるでその楽器の自然な奏法であったかのようになるまで仕上げ、音楽的に組み込んでいく彼の演奏は、大変精度の高いものです。今回、私の小品をどのように演奏してくださるのか、とても楽しみにしています。今回の演奏は、私の作品が熊本県で演奏される初めての機会となります。

プログラムの中で、とりわけ私が楽しみにしているのは、国枝春枝先生の自作自演による『そして また唱えながら』というピアノ三重奏曲です。ヴァイオリンの山﨑貴子さん、チェロの山澤慧さんという名手と共に紡ぐ作曲家自信の音楽的発言に注目しています。

熊本県立劇場ホワイエサロンコンサート『現代音楽への誘い』、2023年9月1日(金)18:00開演です。演奏会パートだけの場合は19:00開演となります。もし熊本市近隣にお住まいの方がいらっしゃれば、ぜひ聴いていただければ幸いです。


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