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映画『PERFECT DAYS』ささやかながらの感想

2024年最初の劇場鑑賞となった映画『PERFECT DAYS』
ドイツ人映画監督のビム・ベンダースが役所広司を主演に迎え、東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の初老男が送る日々の生活を淡々と描いた作品である。
全編を通して、ドラマチックな展開がなく、ドキュメンタリーに近いような展開である。
主人公が住むのは、二階建てボロアパート。早朝に起床し、歯磨き後に作業着に着替えて、掃除道具を積んだ軽ワゴン車に乗り込む。
時代に取り残されたようなカセットテープから聴き慣れた洋楽を流し、目的地の公共トイレに向かう。
丁寧な仕事振りで、淡々と清掃していく。柄本時生演じる同僚タカシから声をかけられても相手にせず、仕事の手を止めることはしない。
そんな彼の楽しみは、休憩時間に神社のベンチから見上げる木々の木漏れ日を使い古したフィルムカメラで撮影すること。
そういったたわいもない描写が続く。
彼を取り巻く登場人物は先の同僚以外に、タカシが追いかけているホステスのアヤ、姪のニコ、妹のケイコ、行きつけ飲み屋のママ、ママの別れた夫・友山など。これら人々との描写を通じて主人公・平山の人となりが描かれて行く。
側から見れば、彼の暮らしは侘びしい。
しかし、本作は彼を侘びしい姿で描いていない。
繰り返される生活の中で、些細な事象から喜びを感じ、充実した日々を送る様子を描いている。
僕は本作主人公と同年代であるし、実は似たような仕事をしている。現役時代はパソコンに向かうホワイトカラーだったが、定年後は身体を使うブルーカラーに転職した。
最初は務まるのかな、と不安だったが、実際勤めてみると、実に気持ちがいい。
毎日が同じ作業の繰り返しだが、そんな中で些細なふれあい、事象に一喜一憂することが生きがいになっているのである。本作の主人公と同じように。
本作は老後の生き方、心の在り方に指針を与えてくれる作品なのである。

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