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公職選挙法、そもそも政治家が金銭を配ってもいいの?

こんにちは、スマート法律相談の弁護士のカツベです。

昨年7月の参院選を巡り、公職選挙法違反容疑で国会議員の河井克行・前法相と妻の案里・参院議員が逮捕されました。

 自民党の河井案里参院議員(46)=広島選挙区=が初当選した2019年の参院選を巡り、夫の克行前法相(57)=自民・衆院広島3区=が地元の複数の地方議員らに現金を配っていた疑いが浮上した。参院選の3カ月前にあった広島県議選で、自民党候補の陣営幹部だった男性が毎日新聞の取材に「(克行氏から)現金30万円を渡された」と証言。男性は一度受け取りを拒否したが、克行氏は無理やり現金をポケットに押し込んだという。

しかし、そもそも

政治家がお金を配るのって合法なの?

という点は、意外と知られていない論点ではないかと思います。

報道では、さかんに「票の取りまとめ」目的が立証できるかどうかどうかということが取りざたされていますが、そもそも、お金を配ることを一律禁止すれば買収も効果的に予防できます。

公職選挙法は穴だらけ

そもそも、政治家は、選挙区内にある者に対して、名称にかかわらず、寄附をすることができません(公職選挙法第199条の2)が、政治団体や後援会に対する寄付として処理すれば合法です(公職選挙法第199条の2ただし書き)。

政治団体に対する寄付は、年間150万円までであれば合法なので、陣中見舞いや当選祝いも、収支報告書に載せる形で処理すれば合法ということになります。

しかし、本件ではそもそも収支報告書外で金銭のやり取りをしていたようです。

 国会議員側から地元議員側への資金提供は一般的に行われているが、政治資金規正法に基づき寄付として処理する必要がある。政治団体間の寄付の場合、提供した側は原則、政治資金収支報告書に記載し、領収書を添付しなければならない。

5万円以上の金銭の受け渡しがあったのに収支報告書に記載しなければ、その時点で政治資金規正法違反です。

政治資金規正法には支出について規制が少ない

報告書外の金のやり取りがあった時点で論外という他ありませんが、河井夫妻の言い分にも傾聴に値する部分があります。

「今回これを買収だと私たちが認めてしまったら、日本の選挙のやり方そのものを変えることになるし、公選法の精神をも変えてしまう。陣中見舞いや当選祝いを自分が出る選挙の前に持っていけば全部『買収』となる、というのであれば、他のみんなも(選挙違反で)やられてしまう。だから、たとえ私が身柄を取られても、別に私は裁判で勝てますよ。検察もやったらいいと思う」

そもそも公選法の精神なるものを大きく誤解していますし、陣中見舞いや当選祝いがすべて違法などと誰も言っていないのですが、「他のみんなも(選挙違反で)やられてしまう」、つまり他の政治家も似たりよったりのことをやっている、という点は注目すべきポイントであると考えています。

今回の問題について、自分が一番問題だと思うのは、政治資金規正法は、相変わらず支出についての縛りが非常に緩い、というより縛りなどないに等しいということです。

例えば、文書通信交通滞在費、立法事務費、政務活動費については使途を公開する必要がありません。

交通費などを使ったことにして差額を自分のポケットに入れることも容易ですし、自分の著書を大量に政治団体に買わせるなどして、蓄財することが可能です。

いくら収入の部分で厳密に領収書添付を求めても、支出の部分が緩ければ何の意味もありません。

今回、合計で1億5000万円の資金が自民党本部から河井夫妻に振り込まれており、「党勢拡大のための広報誌を複数回、全県に配布した際の費用」に充てられたとの報道もありますが、広報誌配布に1億5000万円もかかるわけはありません。

(広報誌というより出版社を立ち上げられるレベルです)

後でこういった支出を検証しようにも、今の政治資金規正法のルールでは非常に困難です。

他のみんなも(選挙違反で)やられてしまう」というのは、図らずも、他の議員も似たり寄ったりの金銭感覚であることを露呈してしまっていると言えます。

切手を大量に購入したり、あり得ない量のガソリン代支出を計上しても、あからさまでなければバレることもなく、簡単に裏金を作ったり、収支報告書外で寄付のやり取りができることが可能であることが明らかになったと言えます。

今時あからさまな買収罪自体珍しく、その点に注目が集まるのはやむを得ないと思いますが、政治資金規正法の問題点についても、これを機会にぜひ見直されるべきであると考えています。

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リリース時に朝日新聞にも紹介されました!

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