松里鳳煌(hoko)

仕事、遊び、何かと文字に関わっております。主に小説を投稿させて頂いております。(´∀`)

短編:白い眼

よく晴れた夏の日。
世界は力強さに溢れていた。
自然の英気を浴びながら、不意に最後の時を思う。

(死ぬには最高の日。)

先住民の言葉。
「こういう日を言うんだ」と感じた。

姉の所属する交響楽団のコンサートを聴きに親戚一同で訪れたこの地。
誤魔化し難い疲労感を抱えながも精神的には充足感に満たされる。
普段寝たきりの彼にはいい気分転換。
一時的とは言え、音楽は精神を切り替える。
姉は嘗ての教え子

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ショート・ショート:ヒーロー

ある晴れた朗らかな日曜日。

道を歩いていると少年は力を得たと実感した。

花粉症に耐え抜いたご褒美だろうか。

理由はわからない。

実感としてある。

でも、少年は慎重だった。

今の力をもってすれば、くしゃみ一つ、放屁一発で町を破壊出来そうな感覚があるからだ。

「力ある所に責任あり。」

何かのアニメで聞いたことがある。

まず辺りを見渡す。

超感覚で一瞬で把握出来た。

(凄い!!)

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ショート・ショート:少年の夢

夕暮れ時、風をきる音。

 息が白い。

「またやってる。」

 呆れたような声。

 少年がバットを振っている。

「ご飯できてるからね。」

 疲れた顔の若い母親。

 意図せず彼女は侮蔑的視線を向ける。

「うん。」

 少年はバットを振っている。

 彼女は舌打ちをした。

「才能がない。」

 コーチから言われた。

「自分に合ったものが他にあると思うぞ。」

 監督に言われた。

(わ

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ショート・ショート:振り返る闇

ある村で化物が話題になっていた。

闇夜に紛れ、神社へ向かう山道の石段を登るという。

「食われちまうぞ。近づかない方がいい。」

噂はあっという間に広がる。

ある日、諸用で遅くなった村人がその場所を足早に通り過ぎようとする。近道だった。

「こわやこわや」

何かに気づき足を止める。

硬いものが石を叩く音だ。

音は次第に大きくなる。

コツ、コツ、コツ。

全身が硬直する。

大きな闇が石

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鶴子-つるこ-#1.証言

脱サラして探偵になった。
 手に職をつけたかったからだ。
 ブラック企業はもう真っ平。
 ほとんど衝動的だったが案外馴染んでいる。
 こういう職業をやっていると色々な人がやってくる。
 人生色々なんだと毎度考えさせられる。
 最も印象的な案件が何かと問われたら間違いなくアレだろう。
 ”鶴子 ”
 女性の捜索を依頼。
 偽名だ。
 結論から言えば、見つけられなかった。
 今でも依頼者の落胆した顔が

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