見出し画像

【本】もしあの時、あの選択をしていたならば…『マチネの終わりに』平野啓一郎

ヒトは誰しもが、選択をして生きている。
住む場所、職業、パートナー…
50歳も過ぎれば、ヒトは誰しもが
「あのとき、あの選択をしていたなら、
あの行動をしていたら、
今の自分の人生は変わっていたかもしれない」
と思うこともあるだろう。

マチネの終わりに』は、平野啓一郎氏作
自分の選択を信じ生きていく大人たちを描いた作品。
主人公の蒔野聡史と小峰洋子を中心に
混沌とした世界の中で、街や芸術を通じた恋が芽生える。
その恋が自分たち以外のチカラで形を変えてしまう中で
あの選択・この行動で歯車が少しずつずれ、
それでも、お互いがお互いを思いながら人生を歩む物語。
映画化もされたので、映画ご覧になった方、
作品を読まれた方もいらっしゃるでしょう。
ですが、海外に行くことが困難になった今だからこそ
物語に描かれる海外都市の空気感を感じながら
一緒になるだけではないあらゆる形の愛があることを
読み取って欲しいと思います。

たった三度出会った人が、誰よりも深く愛した人だった――
天才ギタリスト・蒔野聡史、国際ジャーナリスト・小峰洋子。
四十代という〝人生の暗い森〟を前に出会った二人の切なすぎる恋の行方を軸に芸術と生活、父と娘、グローバリズム、生と死など、現代的テーマが重層的に描かれる。最終ページを閉じるのが惜しい、至高の読書体験。
第2回渡辺淳一文学賞受賞作。

アマゾンHP (文春文庫) 文庫 説明より

特に私が好きなシーンは
お酒が入った席での会話シーン。
ある宴会で大勢の人の中、音楽のことを語りながら
蒔野聡史がこう言います。
人は変えられるのは未来だけだと思い込んでいる、
だけど実際は常に過去を変えているんです。
変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。
過去は、それくらい繊細で感じやすいものじゃないですか?

それに対して、小峰洋子がこう答えます。
今のこの瞬間も例外ではないのね。
未来から振り返れば、そのくらい繊細で、感じやすいもの・・・
生きていく上でどうなのでしょうね、

でもその考えは?少し怖い気もする。楽しい夜だから。
いつまでもこのままであればいいのに

物語を読んでいくと、
この東京での会話が
これからの二人の未来の物語を暗示させるようなやりとり。
でもその未来は必ずしも二人が望んだものとはならないけれど、
お互い繊細な過去を抱えて、そして今を生きている。
それを後々語ってくれる、この本の神髄ではないかと思います。

ヒトは誰しもが、過去を振り返って
もし、あの時、あの選択をしていたならば・・
と思うことがきっとあるはず。
ですが、その選択・行動をしなかった自分がいて
それは今の自分につながっている。
住む街・職業・そして人生を共にするパートナーや、友達。
選んだことで今があるし、選ばなかったことで今がある。
過去はそれだけ繊細だし、その過去があったから未来が変わっている。

繊細な過去と未来を、恋・芸術・都市・親子の関係・生死など
色々な側面で描いている一冊です。
少し肌寒い、人肌が恋しい時に、都会で読んで欲しい物語です。


noteさんのイベント「みんなで読書感想文を書く会」
に参加し、この感想文のメモをつくりました。
noterさんと話をしながら、気付きもあったりして
とても良いイベントに参加させていただきました。
気づいたら、表紙がウクライナの国旗色でした。
さらに考えされます。

#クリエーターフェス
#読書の秋2022

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?