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作家の日々

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2018年9月の記事一覧

作家とイベント業

 昨日は八重洲ブックセンターさんでのファンミーティング(お茶会)でした。お越し下さったお客様、八重洲ブックセンターさんのご担当Kさんならび八重洲ブックセンターの皆様、ご一緒した作家の皆様ならびに昨日のイベントのために力を尽くしてくださった皆様、誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。

 さて、昨日のイベントで、某先生の付き添いでお越しだった某編集者さんがぼそっとこんなことをおっしゃって

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「小説は筋肉で書く」とある先輩作家さんは云った。

 作家仲間や先輩作家さんと話をすると、皆さんこう口を揃えます。

「体力、超大事」

 椅子に座り続けるのも体力の一つ。実際、机にかじりついていた時間だけ仕事が進むのが作家業なので、どうしたって体力は必要なのです。
 もやしっ子で知られるわたしも、実は体力をつけるべく、それなりのことはしています。
 毎日の散歩、二日に一回の腰回りの筋トレ。
 これが意外に効果てきめんなのです。

 今のわたしの足

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「努力」が嫌いです

 あんまり物の好悪を口にしないようにしているのですが、どーも「努力」という言葉が嫌いです。

 正確には、「努力」という言葉の持っている文脈が嫌い、というか。

 「目標のために力を尽くすこと」というのが努力の語義ですが、実際に流通しているこの言葉は、もうちょっと違う意味を纏っている気がしてなりません。

 たとえば、「テレビゲームの全クリに向けて努力する」っていいます? この言葉にも「テレビゲー

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三十二歳という中途半端な年齢

 どうも、全国の三十二歳から石を投げられてしまいそうな谷津矢車です。

 わたしは現在三十二歳です。

 それにしても、三十二歳って微妙な年齢だなあと思っています。
 わたし自身は「もう若くないなあ」「おっさんだよなあ」と冷静に受け止めておりますし、実際家系ラーメンを食べようものなら胃もたれで次の日まで辛い思いをするようになってしまいました。ここのところ、久々に会う人に「痩せた?」と聞かれるんです

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冷却中です

 長編の第一稿が終わったので、今、冷却期間に入っています。
 というわけで、今はこまごまとしたエッセイの執筆やゲラ作業、次に着手する予定の長編のプロットを切ったりして日々を過ごしています。

 原稿を書いている間のわたしは、普段とは違います。
 ギアが入ったまま、というか、ZONEに入っちゃって真後ろの気配が読めちゃうくらい感覚が鋭敏になるというか、気分はもう、わらわら湧いてくる雑魚を第六感で撃ち

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黒紋付を買ったその理由

 姉さん、事件です。
 黒紋付を買いました。

 実の姉がいる谷津としましては「姉さん事件です」ネタ、本人から「何か用かよ?」と地球の裏側から電話が来ちゃいそうなのでおっかなびっくりなのですが(だったらこのネタやるなよ)。

 でも黒紋付はガチです。

 作家の集まりなどでいつも和服を着ていくという地道な活動が功を奏し、「谷津といえば和服」というイメージがついてきました。今後も和服活動を続けていく

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別れの日

 長編の執筆が終わろうとしています。

 一応プロットを参照するならば(とか言いつつプロットなんてぶっちぎっているのですが)、あと四シーン、概ね一万二千文字くらいで終わる形になっているはずです。ぎりぎり二十万文字を超えなかったという仕上がりになりそう。

 それにしても、(これは書いている方にしかわからないことかもしれませんが)長編の終わりは何とも物悲しく、未だに慣れることができずにいます。
 わ

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「バッターボックスに立つ」こと、「球に当てる」こと

 最近、iPhoneを新調したんですよ。ところが、キャリアメールの同期をすっかり忘れていて、ある知り合いのお誘いを二か月くらい放置してしまい真っ青……というのが昨日の出来事。どうも、満足にiPhoneを使えない化石人間谷津でございます!(事情を話したら許してもらえました。その節は本当にすみません)

 こんなダメ人間なわたしですが、好きこそものの上手なれ、気付けば作家になって六年目です。

 どう

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「他人の期待」に一本背負い

 「他人の期待に一本背負い」が合言葉、どうもこんばんは谷津矢車です。

 いや、ここのところ、「他人の期待」に乗らないことって大事なのだなあと思っております。
 他人に期待されているのは非常にありがたいことである反面、気付けば誰かの用意したベルトコンベアに載せられ、望みもしないところに流される可能性もあるということを受け入れる必要があります。いや、ベルトコンベアならまだまし、実は乗せられたのがルー

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枠組みからしてファジィな商売

 某中学校で配ったQ&Aを発掘したのでnoteに張り付けることに。

Q、小説家ってどういう仕事なんですか?
A、永遠の夏休み、あるいは永遠の試験勉強です。

Q、小説家ってどういう人が向くんですか?
A、凄く真面目な人か、あるいは凄くズボラな人です。

Q、小説家をやっていて楽しいことってありますか?
A、小説を書くことです。

Q、小説家をやっていて苦しいことってありますか?
A、小説を書くこ

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人間嫌いだけど人が好き

 ここのところ、こんな心持が強くなってきました。

 小説業って(もちろん人によりますが)、極端に人と会わなくなります。特に、同業や近接業(編集者さんや書店員さんなどのこと)の皆さんとお目にかかったのをノーカンにしてしまうと、一月の間で会話をしていたのが家族だけ、なんてことにもなりかねない商売です。

 因果なものです。
 人と関わるのがおっくうで作家になったのに、いざ作家になってみると人の温かみ

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書き下ろしという仕事

 今、書き下ろしの原稿を書いています。

 ……とだけ書くと、業界の方にしかわからない話題になっちゃうので早速補足しますね。
 小説を書く際には、二つの形態があります。
 一つは「原稿」→「書籍化」の流れ。
 新聞や文芸誌に掲載してもらい(この時に掲載してもらうのが「原稿」)、それが一定の分量に達したら書籍化するというやり方です。作家としては、原稿を書いた段階で原稿料と称するお金が入り、さらに書籍

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「自分」という否みづらい存在

 小説を書いていると、既視感に襲われることがよくあります。

「あれ、この展開、以前書いている気がするぞ……」

 いや、冷静に考えれば違うんです。まったく時代もモチーフもこれまで描いてこなかったテーマのはずなのに、なんとなく以前書いたものと似てきている。
 自分自身の陳腐化、ですね。

 実は、小説を書いていて一番厄介なのはこれなのかもしれないなあと思い始めています。
 テーマやモチーフ、素材と

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作家という特殊技能者と、それを必要としてくださる方との協働という話

 まずはみんな、これを見てくれ。

 実はこの話、わたしもちょろっと関わっています。
 この記事に「作家六人のイベント」ってありますでしょ? 実はこれ、わたしも所属してます操觚(そうこ)の会のイベントだったのです。もっと突っ込んだことを言うと、早見俊先生が喜連川藩を小説に書いた縁で実現したトークショーだったのです(ちなみにわたしはそのイベントの際に不勉強を晒してしまい赤っ恥だったのですがまあそれは

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