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1日限定のテンポラリーな実験区「ODORIBA」とは?今年初の取り組みの見どころを紹介

やっとかめ文化祭DOORSの初日となる10月28日(土)に開催されるODORIBA。「都市を、耕す。あいだで、遊ぶ。」をコンセプトに、かつて創造の拠点であった「庭」を都市のスキマにつくる、1日限りの空間です。

今回は、そもそもODORIBAとは何か、からはじまり、各コンテンツの紹介や当日の見どころをお伝えします。お話を伺ったのは、ディレクターの山田さん、デザイナーの森さん、プロジェクトマネージャーの青山さんです。

マーケットイベントではない、社会実験的な場「ODORIBA」とは

(左から、青山さん、森さん、山田さん)

ーーODORIBAのInstagramを拝見していると、「マルシェ」とか「マーケット」みたいな言葉は出てこなくて、「テンポラリーな実験区」との紹介が気になりました。つまりどういうことか、具体的に伺いたいです!

山田さん(以下、山田):まず僕たちがODORIBAを催すにあたって、やっとかめ文化祭DOORSの入り口になるような企画を立ててほしいと依頼がありました。40〜60代が多いやっとかめ文化祭に対し、より若い世代にも足を運んでもらえるような場をつくりたいと、僕たちに白羽の矢が立ったんです。

じゃあ何をするかを考えたときに、今マーケットやフェスは無限にあるにもかかわらずどこに行きたいか選べないし、ワクワクしなくなっている感覚があって。話し合う中で、「文化祭」のDNAを組み込みながらできる、「社会実験」的な考えが、やりたいことに近いと思いました。そこからさらに深掘りして、一時的かつその場で共創する空間づくりは、僕らにとって「テンポラリーな実験区」というのが合っているんじゃないかと。

ーー面白いですね!やっとかめ「文化」祭という定義の部分から捉えてテーマ設計しているのですね。

森さん(以下、森):文化自体が意図してないところから生まれてきますし、一つ場所を作ったら、そこでコミュニケーションが生まれたり、飲んだり、食べたり、音楽に身体を揺らしたり、寝転がる人がいたりと、参加者に過ごし方を委ねていきたいんです。場をつくることで、そこに来てくれた人たちが自ら何かをやってみたいと思ったり、自発性を促せたらとも思っています。

ーーテーマでいうと、「ODORIBA=踊り庭」と表現されているように、「庭」も意識していますよね。

山田:「都市を、耕す。あいだで、遊ぶ。」というコンセプトは、アーバニズムやアーバンファーミング、リジェネラティブという都市の捉え方から来ています。文化(culture)は「耕す(cultivate)」に由来することから、自ら能動的に動いて文化を醸成していける場にしようと思っています。「都市を、耕す。」は、土や循環を表す言葉で、「あいだで、遊ぶ。」という言葉がくることで、今まで話していた自発性を促したり、いらっしゃった方に、場所の価値づくりを行ってもらう、みたいな2本柱のテーマになっています。

ーーなるほどです。ODORIBAにはさまざまなコンテンツが用意されていますが、普段あまりイベントなどで馴染みがないものが多くて気になっています。野良茶とか、野良バーとか……。

森:野良茶は農作業などの合間に縁側で茶を立てて、みんなで飲みながら休憩や交流する時間のことです。名古屋を中心に尾張地方に波及した文化である野良茶が、企画の一つ大きな方向性になっているんじゃないかと思っています。

お茶を介して自然とコミュニケーションが生まれるように、一つひとつのコンテンツでも、それを中心にコミュニケーションの輪が広がって、参加者それぞれが自ら楽しみを見つけていく場にしたいです。

ーーこうしてお話を伺っていると、マーケットイベントではない、あくまで社会実験的なスタンスを大事にされているのが伝わってきますが、世間一般に伝えるのは難しいですよね……?

山田:「都市を、耕す。」って言っても伝わらない気がしますが、かといってわかりやすくしたら意味が限定されてきてしまう。来てくれた人たちがそれぞれの解釈で気づいたり理解してもらえたらいいなと考えています。開催前に説明するのは難しいですけれどね。青山くんを僕らが誘ったときに「マーケットじゃないんだけれどさ」って何度も言ったりして笑。

青山さん(以下、青山):「どういうことですか?」「つまりどういうこと?」って話し合いの中で何度も聞きましたね笑。自分も手を動かしていくうちに、空間を楽しんでもらうための、一日限定の場所づくりしてますって伝えています。

来てもらった人たちに理解してもらえるような場所にしたいから、マーケットって言葉は一切使っていないですね。そう捉えたら、マーケットじゃない分、いろんなものが取り入れやすいし、今までにはないものが作れるってあらためて思いました。なので、実際に来てもらった人がどう感じるかはあなた次第!みたいな感じですね。

ーー皆さんがそれぞれの役割で企画する中で、大事にされていることはなんでしょう?

森:ODORIBAの具体的なイメージみたいな、「色」をなるべく付けないように意識しています。個人的に出演者や出店者は、いろんなジャンルの人を混ぜていて、あまりない組み合わせになったらいいなと思っています。当日までどうなるか私たち自身もわからない部分はありますが、さまざまなジャンルの人同士だから生まれるものがあるかもしれないし、不安よりワクワクの方が大きいです。

ーー確かにイベントって、参加者のイメージがつくものが多いですが、あまりこれといったイメージがないかもしれません。

青山:やっとかめ文化祭自体、名古屋や尾張の文化イメージがありますが、出店者を名古屋に限定しない方がいいなと思ったんです。野良茶やトークイベントには、東京の方を呼んでいます。名古屋内外のみんなで名古屋の文化を解釈し、表現する場にしたいです。

山田:「名古屋らしさ」って結局主観なので、必ずしも名古屋のものを使う必要はないんですよね。名古屋の歴史文化を意識しすぎて、参加者が限定されてしまったら僕たちの役割ではないと思いますし。僕はやっとかめ文化祭自体に名古屋らしさを感じていて、出店者も参加者も、自分のなかの名古屋らしさを発露してもらえたらと思っています。

空間、出店者、それぞれに理由がある、ODORIBAの見どころ

ーーここまでもたくさんコンテンツの話が出てきましたが、最後にODORIBAの見どころを教えてください!

森:会場の空間ですね。1日じゃもったいないくらいの空間を、名古屋の「ambientdesigns(アンビエントデザインズ)」さんに作ってもらっています。会場には柱や木がドーンと立っていたり、風で揺らぐ壁があったり。屋上という場所を生かしつつ、「庭」というキーワードが点在した空間デザインに、自由に過ごしてもらえるような場所を意識しています。

山田:昨日、会場の打ち合わせで興味深いって思ったのは、能舞台をこの空間に落とし込んだらっていうのを考えてくれていて。名古屋の能・狂言の流派や能舞台の松とか砂利とか、あらゆる要素の意味をものすごく深掘りして、面白がってくれていて。やっとかめ文化祭に携わる僕らも、学びが多くて面白いと思っているのですが、関わる人たちも手を動かすなかで名古屋の文化に触れて面白がってくれるのは、とてもうれしいですね。そうして来場者も、名古屋の歴史文化ってどう私たちに寄り添っているんだろうって考えてもらえるようにしています。

森:空間づくりのベースとなっているのは庭ですよね。

山田:庭空間なのに自発的にならないわけがないというか、自分の庭だと思って過ごすなら、自分らしく過ごすのがいい。だから僕たちがおもてなしするというより、会場に来てくれる各々が自由に過ごせる環境をつくろうという感じです。

ーーほんとうに1日限りなのが惜しいくらいですね……!他にも見どころについて、青山さんはどうでしょう?

青山:先ほど話に上がったように、普段名古屋でなかなか出会えない県外の出店者さんや、イベントに登場しないような方同士のセッションですね。野良茶、野良バー、トークイベントも。

山田:「SCHOOL」では、では、名古屋北区清水〜尼ケ坂エリアに新風を巻き起こしている「LOOK BOOK」さんと、街や企業などさまざまなコラボレーションを実現している、東京の高円寺の「小杉湯」さんにお越しいただきます。みなさん、それぞれ土地の風土や慣習を取り入れながら、あくまで自分たちのやりたいことをやっているだけで。それが結果的に新しいカルチャーを生み出したり、第三者にとってのかっこいいになっているんです。

森:あと話に上がっていないコンテンツだと、当日は100冊を超える本が集まった本棚が置かれますよね。

山田:名古屋内外で展開する架空の書店「美鶴堂」さんが、名古屋で本に関わる仕事をしている方々に聞いた、自分の人生に影響を与えた本を集めて、当日販売していただきます。名古屋やこの地域に関わる人たちの背景がわかる一面があったらいいなと思い、お願いしました。どんな本が集まるか、当日まで僕たちも楽しみにしています。

ーー聞けば聞くほど内容も、その理由も盛りだくさんですね。どれもODORIBAに見合った方々で楽しみが増しました!

山田:とにかく、空間、出店も。こんなに理由がなくていいよ!ってくらい笑。一つひとつ細かく理由があるんです。ぜひ当日会場に遊びに来て、体感して欲しいと思います。

森:とにかくまずは、みんな来て欲しいですよね!一緒に今年のODORIBAを耕していきたいし、来年に向けても、いろいろな方を巻き込んでいけたらいいなと思っています。

青山:いろいろ話しましたが、ODORIBAでは、屋上っていう普段使われていない空間で、庭っていうコンセプトのもと、庭を楽しんでもらうためのコンテンツが点在しているイメージです。その意味で、敷居が高いわけではなくて、自由に気軽に過ごして欲しいですね。

ほんとうに1日でやるの?!と思ってしまうほど見どころ満載なODORIBA。10月28日(土)にやっとかめ文化祭初日を盛り上げてくれること間違いなしです。

ODORIBAの詳細はこちらの公式Instagramにてぜひチェックしてみてください。当日まで投稿で少しずつ内容がお知らせされるので、お楽しみに。


撮影&執筆:fujico

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