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編み目をたぐる日

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水野さんとのマガジン「編む*」と、その裏面
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2019年4月の記事一覧

編む* 季節を進めたなら果てまで観ててね

平成最後の朝よ
暖かい雨が季節をまたひとつ先に進めるのね
家から少し離れた畑のことを考えているのでしょう
柔らかく耕した土に種を播いたから
たくさんの命の始まりを考えているのよ
彼らは乾燥した眠りから覚める必要なんかなかったかもしれないのに
私が彼らの季節を進めてしまったのね

芽吹きに必要な熱を欲しがるでしょう
その間、あなたは待てるのかしらね
自分の始めたことなのだから
見つめ続けることが責任

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何気なく分け入っていった森の奥で
突然開けた野原に出会ったり
静かに佇む湖水が現れて
おもわず大きく息を吸い込むことってあるじゃない?
その時に、この出来事を話したいなって思い浮かぶ人っているでしょう?
その人も意外と、もうずいぶん昔に、その場所に出会ってたりするのよね。

長男が新しいランドセルに腕を通したが
不自然に歪んだ姿勢をとるので
ベルトを調節する
一番小さな輪にする穴に金具を指した時
そこが彼の始まりとなった

春雷が起こした僕の虫たちは
散って溜まった花びらを喰んで
白く輝く地面に
黒い道をつくるようです
それは黒い川かもしれない
一足飛びに向こうにいったら
そこは彼岸かもしれぬと思い
胸に訪れていた久方ぶりの春の終わりを知る

そっと影を踏むように
愛してほしい

物語を書きたいの?と問われたら、答えは、はい
そしてたぶんそれは、親指と人差し指を擦り合わせた時に
もくもくと立ち上がる、小さな狼煙のようなもの

あれは春だったのね

あれは春だったのね

僕たちひとりひとりが発する音はとてもシンプルなものであって良くて、けれどもそれらの連なりが、時折奇跡のように、穏やかで美しい曲を奏でることがある。うすうす、そして同時に確信もしていた。僕たちの間にはいつも一つの曲があったから、あとは連弾をするように手をとって、互いの調子を馴染ませるだけで良かった。なんて懐かしい時間だったのだろうか。なんて優しく、美しい時間だったのだろうか。僕らの出会いは水の反映や

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