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テロリストだった若者たちと共に世界を変えていくお話

こんにちは、やわデザnote編集部兼「目的地は鬼ヶ島」制作チームの ひろきょんです。

以下の記事でご紹介したとおり、富士通グループ横断「やわデザ」コミュニティを舞台に新しいイベント「目的地は鬼ヶ島」を開催しています。

「目的地は鬼ヶ島」は、「社会課題」についてみんなで交流しながら理解を深める、全9回の社内イベントです。

本記事では、最終回となる「世界も未来も変えられる編」の第3話(7月28日開催)についてレポートします。今回は動画の公開はありません。

「目的地は鬼ヶ島」世界も未来も変えられる編

世界一危険な地域で活動を始めたきっかけとは?

今回の桃太郎(ゲスト)は、NPO法人アクセプト・インターナショナル永井 陽右(ながい ようすけ)さん です。

永井さんは、主にソマリアやイエメンで、紛争地のテロ組織に所属する兵士に対し、投降の促進と社会復帰をサポートするという活動をしています。私たち日本人には想像もつかない危険な国に、足を踏み入れることになった永井さんの活動の原点は、いったいどこにあるのでしょうか?それは、2011年にまで遡ります。

「究極のリアル桃太郎さんキター」と叫ぶ運転手ヤマカワ

当時、大学に入学したばかりの永井さんは、同年3月に起こった東日本大震災の被災地を訪れ、週末はボランティアをする日々を送っていたそうです。その一方で、同じ年の夏にアフリカのソマリアで起こった大飢饉によって、年間で26万人もの人々が亡くなったことを知ります。大災害に見舞われた日本は世界中が応援してくれるにもかかわらず、(長引く内戦のために)世界一危険な場所であったソマリアには、誰からも手が差し伸べられていない現実に、大きな疑問を持つことになったそうです。

前例のない紛争解決を手探りでスタート

大学時代に「ソマリアを救いたい」と思った永井さんは、最初はソマリアからの避難民が多い隣国のケニアに行き、できることから実行していきました。試行錯誤する中で、「紛争解決」について学ぶ必要があると考え、イギリスの大学に留学します。ところが、永井さんは、衝撃的な事実を知ることになります。

それは、イスラム過激派組織のような「根本的な価値観が相手とは異なり、敵との会話を拒否するようなテロ組織」との紛争を解決する有効な手段はない、ということです。大学で学んだ紛争解決アプローチは「相手と対話できる」ことが前提条件。そこで、「教科書(理論や前例)がないなら、自分たちが仮説ベースでやっていくしかない」と、決意を新たに活動を本格化させていきました。

どんな人間でも存在を認めるところから始まる

アクセプト・インターナショナルが力を入れているのは「脱過激化」です。テロリストたちが自発的に降参し、社会復帰ができるまでを長期的に寄り添っています。

テロ組織との間には連絡手段が存在しないため、永井さんたちがリーチできるのは末端の兵士だそうです。投降プログラムは、連携している空軍によって空からばら撒かれたリーフレットを手にしてもらうところからスタート。リーフレットには「自発的に降参すれば、(恩赦のある)投降プログラムが受けられます」と書かれています。

兵士の多くは10~20代の若者で、テロ組織が実効支配している地域で生まれ育ちます。そのため、子供のころから学校で過激主義思想を教わり、彼らはテロリストになること以外の道を選ぶことができません。ある日突然、「おまえは兵士だ」と決めつけられ、3ヶ月の軍事訓練後には兵士として過酷な前線で戦わなければならない、ということもあるそうです。

投降兵に対し「大変だったこと、聞かせてよ」と話しかける永井さん(右下)

永井さんたちの投降プログラムでは、刑務所やリハビリテーション施設で、投降兵に対する宗教思想の再教育や職業訓練を行っています。特に、投降兵の苦悩に向き合うことを基本とし、対話による心のケアを大切にしているとのこと。宗教再教育だけでは、一見上手くいったように見えても、さらに過激化してしまうケースがあるからです。投降した兵士の多くが、毎日が死と背中合わせで苦しい日常から解放されて一安心するそうです。

「今、投降兵センターで(SNSアプリの)TikTokが流行っています」

と語る永井さんは、兵士から<若者>に戻った彼らとはまるで友達のように接しています。

運転手のヤマカワが、おとぎ話「桃太郎」を例えに永井さんにとっての「鬼(一番大きな困難や課題)」を尋ねたところ、「悪いことをした人を『人間じゃない』と決めつけ、存在を認めないような社会の風潮」とコメントされました。たとえ相手が犯罪者だとしても、まずは同じ人間として存在を認めるところから始めるのが永井さんの活動のベースにはあったのです。

テロと紛争のない世界への道のりは長い

「昨日も自爆テロがあった」と表情を引き締めながら語る永井さん。現地で連携していたある町の市長が、面会に訪れた客人とハグをした瞬間に爆発に巻き込まれ、市役所の中にいた11名が亡くなったそうです。

大学時代に「青臭い使命感から始めた」と永井さん自身が語る小さな活動は、たくさんの人に支えられ、10年間で大きな活動へと成長しました。常にテロ組織から命を狙われている永井さんは、「死にたくはない」と思いつつも、活動に関わる人々の想いや責任など背負うものが増えたと語ります。

アクセプト・インターナショナルが掲げるミッションは「テロと紛争のない世界の実現」です。これに向け、今の活動の拡大にとどまらず、活動の幅を広げる必要があると考える永井さん。今後は、元テロリストに関する国際法について、保護対象とする年齢幅の拡大をすべく意気込んでいます。現在の保護対象である子どもだけでなく、そこから成長した若者にもスムーズに社会復帰してもらうための取り組みです。

現在、アクセプト・インターナショナルでは、「ソマリア2022大干ばつ緊急支援プロジェクト」として、2011年に26万人が亡くなった「大飢饉」を繰り返さないための寄付を募っています。永井さんの考えや団体の活動に共感した方は、ぜひ支援に参加してみてはいかがでしょうか?

イベントを視聴した社員の反応は?

当日は富士通グループの社員を含む約170人が視聴してくれました。イベント中に、投票サービス「slido」に寄せられた感想やコメントをいくつかご紹介します。

視聴した方の感想やコメント

おしまい

全9回に渡ってお伝えしてきた「目的地は鬼ヶ島」の物語は、ひとまずおしまいです。どの回も本当に素敵な桃太郎さんでした。毎回視聴してくれた社員の皆さん、どんぶらコミュニティのみなさん、最後の3回にご招待したいくつかの企業のみなさん、本当にありがとうございました!

「slido」に寄せられたコメントにたくさんの「いいね」が。

上のコメントのように「継続してほしい」という声をたくさんいただいています。「このイベント面白くてためになる!」と思った方は、「スキ」をクリックしたり、本noteをフォローしてください。次回があればまたお会いしましょう!

今回の桃太郎さん(ゲスト)プロフィール
永井 陽右 さん
テロと紛争の解決をミッションに、ソマリアやイエメンなどの紛争地にて所謂テロ組織の投降兵や逮捕者などの脱過激化と社会復帰支援を実施。また、テロ組織との交渉および投降の促進、国連機関や現地政府の政策レビューなどにも従事。国連関係では暴力的過激主義対策メンター、専門家会議や専門作業部会のメンバー等。博士(社会科学)。
https://accept-int.org/donate-lp/

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