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ヤギさん郵便No.78「胸の痛み」

「骨折れたかも?」
でも次の瞬間
「折れたらもっと痛いはず」
と、ロープで吊られた宙ぶらりんの状態で思い直した。

足に体重が乗り切らなかった。
足の裏にはもう何も無かった。
体重移動していたので、体を支えることはできず手が離れた。
反動で岩に体をぶつけた。(と思われるが、一瞬のことでよくわからない)
息が詰まり、肋骨に痛みが走った。

崖の上でビレイ(ロープ保持)してもらっていて、下からはもうひとりが登ってきている。

胸の痛みで心が折れた。
チャレンジしたけど、また宙ぶらりんになった。
「もう無理」

後から登ってきている人に先に登って欲しいと言った。それはできない。なんとしても、どんなことをしてもいいから登れと言われた。
「無理」

後から登ってきている人は、私に声をかけ、アドバイスをくれる、でもその人の手も限界がきていた。

私が登らなきゃ後の人も登れない。
「無理とか言ってる場合じゃない」
気合いが入った。

難所を超えた。

上まで登った。

よく登れたと思う。

でも技術不足。練習不足。知識不足。
結果オーライじゃいけない。
もっともっともっと必要なものがある。

肋骨を強打したことは初めてだった。次の日もその次の日も動くたびに胸は痛み続けた。

折れてなくてもヒビいっているのかと痛みで不安になった。

アスレチックで胸を強打した人が胸が痛くて歩くのもままならず、レントゲンを撮って骨が折れていないとわかったら、まっすぐシャンと歩いて病院から帰った、という話を聞いた。
私も仕事帰りにレントゲン写真を撮ってもらった。
次の日から胸の痛みは半減した。

不安は痛みを生み、不安は痛みを増幅させる。
気になるなら白黒はっきりつけろ。
痛みも気からってこと。

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