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ヤギさん郵便No.76「ザブンと溢れたお風呂の湯」



久しぶりの泊まり山行。
宿泊先は登山口近くの旅館で十五畳くらいの広い和室。
昭和を感じさせる旅館である。

山の上では水は貴重で蛇口を捻ってもチョロチョロしか出ない。お風呂はないのが当たり前で、自然保護のため石鹸やシャンプーは使えない。歯磨き粉も使えない。
でもここは登山口近くの旅館なので、水や石鹸の心配はいらない。
お風呂は洗い場が四つあり、洗濯機が置かれていた。お湯と水の蛇口は分かれており、お湯は80℃のお湯が出ていて水と混ぜて温度調整する。

湯船にはバスクリンの黄緑色のお湯がはられていたが、何人も入ったあとだったでお湯は減っていてぬるかった。
上澄みを流すために湯船のお湯をいっぱいにして四人が順番に入った。
湯船のお湯がザブンと溢れて洗い場が洪水なった。
たったそれだけのことだけど、子どもの頃の兄弟と入ったお風呂を思い出して、幸せな気持ちになって笑った。
たったそれだけだったけど、出かけてよかったと思う。
たったそれだけのことだけど、出かけないと思い出せなかった子どもの頃の記憶。

なんでもないことだけど、何気ない出来事が日々に彩りをあたえてくれる。

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