【物書きコラボ】リンゴアメ

や、東天紅やよいだよ。

今日、6/28 22:30~ 行ってた物書きコラボで出来た

成果物? を載せようと思う。

今日一緒にコラボをしてくれたのは、

物書き系自動人形VTuberのアピィ ( @appy_automata ) だ。

Twitter : https://twitter.com/appy_automata

Channel : https://www.youtube.com/channel/UCYGRrQjTI3jjBVYal9nbv3A

今後も定期的にやっていきたいから、是非よろしく……♪

今回は、

お題:やよい→アピィ→やよい→アピィ→やよい の順で。

次は攻守逆転、だね。楽しみ……♪



  お題   【リンゴアメ】


 最後にりんご飴を食べたのはいつだったろう。
 思い出すのは大学の夏休み。
 近所の神社の夏祭りで、隣りにいたのは当時の彼女。
 その時の彼女は浴衣を着ていた。母親に着付けてもらったって言ってたっけ。

 その後、地元を離れた会社に就職して。特殊な業態のせいでお盆の時期にはなかなか帰れず。
 そんな訳で私は十数年ぶりに、その夏祭りに来ていた。

-
「ん? お前、大分前にこの祭りに来てた坊主じゃねぇか?」


 祭りの会場に足を踏み入れて真っ先、クレープ屋の親父から声を掛けられた。
 その顔に見覚えは、ある。くすくす、笑いながら、

「相変わらず変わらないね、前田の親父さん」
「あー? 覚えてたか。お前、良くうちの店に来てたもんなぁ」

 前田の親父もケラケラと笑いながら親指を立てて。
 折角だからとクレープを1つタダで貰って。

「そういえば、お前。あの時に連れだった彼女。あれはどうしたんだい?」

 と、笑いながら問われる僕に、嗚呼、と、笑顔で濁した。

「結構前から会ってないよ。僕も久しぶりに帰省したくらいだもん」
「何だお前、それこそLINEとかしてねぇのかよ。俺だって嫁と」
「ハイハイ判った判ったお熱いねおっさんクレープありがとじゃあねー」
「ばっ、お前」

 無視。そのまま歩いて去っていく。後ろで何かおっさんが叫んでいるが、気にせず会場を見回っていく。
 
-
 そう大きくない会場で、目的の店はすぐに見つかった。
 すっかり年季の入ったりんご飴の屋台。
 私は少し目を細めて、赤ら顔の中年に声をかけた。

「おっちゃん、りんごあめ、ふたつ」
「あいよ」

 真っ赤なりんご飴をふたつ受け取ると、屋台を冷やかしながら本殿の裏手に歩いていく。

 ――そろそろ、花火が上がる頃だ。

-
 本殿が絶景スポットであることはあの時から変わらないらしい、
 あの時の僕たちに近いような年齢であろうカップルが数組見受けられたけれど、
 そこから少し離れた林を抜けた丘の上はまだ誰も知られていないらしかった。

 よ、っと、腰を下ろす。誰にも邪魔されない、僕たちだけの場所。

「とは、今は行かないかな、と」

 もうすぐ花火が上がる。やれ、と、懐かしい味のリンゴアメを口へ運び、
 花火が一筋、


「──、ね。美味しそうなリンゴアメ、だね」


 ぱん、と、空中で華やかに開いた花の中で、その声だけがはっきりと、耳に届いた。
 え、と、思わず振り返り、
 ぱく、って、僕が口に運んだリンゴアメが、悪戯な笑顔に吸い込まれた。


「……、ふふ、"あの時と同じ" リンゴアメ。あの屋台で買ったでしょ? 変わらない味だね」


 美味しい、って、笑顔で舌なめずりする、あの時と変わらない笑顔。


「──、まだ地元、いたんだ」
「くす、知ってたくせに。あれから毎年、ずっとここで待ってたんだよ?
 同じリンゴアメ、毎年買ってさ。──、あそこのおじさん、大分老けたでしょ。
 私たちがデートした時はもうちょっと若かったのにね」


 ふふ、って、隣にちゃっかり座る懐かしい声に、数年と味わったことのない安堵を覚えた。
 空に華やぐ明かりを眺めながら、それでも耳に直接響く声。


「ね、──、来年も、来てくれる?
 今度はあの時と同じようにさ、一緒に屋台を回って。
 クレープを買って、あのおじさんトコのリンゴアメ買って。
 またこの本殿の裏で、こうして、あの時と一緒に、花火を眺めよう?
 ──、あの時の続きを、楽しもうよ」


 ね、って、楽しそうに。笑顔を向ける、その笑顔に肯定を返すように、笑顔で。


 ふふ、って、二人で笑顔で。
 最後の一際大きな花火が空を舞った、その影で。
 あの時出来なかった、約束の、口付けを交わした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?