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【予備試験・司法試験】合格答案のフレームワーク(第2回:刑法 総論)


【読者の対象】入門的な勉強を終えて論文対策に移る段階の方・論文対策中の方

はじめに

論文式試験において合格答案を書くためには、法律の体系を意識しながら、問題文の事案を法的な文章に構成し直し、適切な形でアウトプットする必要があります。

そして、答案のフレームワーク(型)を一度身につけてしまえば、フレームワークに沿って答案を書くだけで「適切な形」を維持することができます
つまり、あとは論証暗記や各論点の処理パターンの把握に力を入れるだけで合格へ辿り着くことができるわけです。

そこで、「合格答案のフレームワーク」シリーズでは、各科目や論点のフレームワーク(必要に応じて処理パターン)をご紹介します。

第2回は刑法総論で、刑法の答案を書くにあたり常に意識しなければならないフレームワークとなります。
なお、論点の展開方法などは第1回でご紹介したものが刑法でも同様に妥当しますので、下記をご覧ください。


刑法の問題の解き方

刑法においては、適用条文(成否が問題になる犯罪)で迷うことはほとんどないと思います。
悩みどころになるのは、犯罪を成立させるのか(違法性や責任を阻却させるのか)どうか、共犯関係はどのように整理するのか、という点だと思います。すなわち、適切に論点を拾った上でどのようにあてはめをするのかという点になります。

これを考える上では、構成要件・違法性・責任という刑法の体系に沿って検討することが有益です。
答案においても、この体系に沿って論述することが求められます。

なお、複数の犯罪が検討候補に挙がる場合は、基本的には重い罪から検討することになります。

刑法の答案のフレームワーク

答案の全体像

刑法においては、基本的に以下のフレームワークに沿って論述することになります。

1. 甲が○○した行為につき、□□罪が成立しないか【実行行為&検討する犯罪の特定】。
(1)【客観的構成要件:行為→結果→因果関係】
(2)【主観的構成要件:故意、目的等】
(3)【違法性:正当防衛、緊急避難等】
(4)【責任:心神喪失等】

論述する上で論証を展開する必要がある場合も、当該論点がどの体系に位置付けられるかを意識し、適切な場所で論じる必要があります。

客観的構成要件のフレームワーク

客観的構成要件において、行為及び結果は基本的に条文上の文言にあてはめる形で検討することになります。
その際のフレームワークは、第1回で紹介した「定義を明らかにし三段論法を使うフレームワーク」と同様です。

もっとも、刑法においては論述のバランス上、あるいは定義にあたることが明らかであることから、三段論法を崩すことがよくあります。
その際には、下記のように書くことになります。

○○【行為】は〜〜であり【評価】、◇◇【定義】といえるから、「……」【条文の文言】にあたる。

窃盗のために他人の住居へ入った場合における住居侵入罪の成否等、当然に成立が認められるのが一般的であるものについては、評価も省略可能です。

以上を具体的な事例に当てはめると、次のようになります。

甲がVを殴打し出血させた行為は、人の生理的機能に障害を与えるものといえるから、「傷害」にあたる。

傷害罪の場合の例


主観的構成要件のフレームワーク

主観的構成要件については、基本的に故意があることを端的に認定すれば足ります。
基本的には下記をコピペしていただく形で大丈夫です。

甲はこれらの事実を認識しているから、故意(38条1項本文)も認められる。

なお、具体的・抽象的事実の錯誤が問題となる場合には、ここで論じることになります。

違法性・責任については、論点があれば論じ、特になければスキップします。

おわりに

とにかく客観的構成要件→主観的構成要件→違法性→責任の体系を答案に反映させることが大事です。
刑法については、体系さえ意識できていれば、あとは三段論法を適切に使いこなすだけです。
もっとも、個別の論点について書き方が難しい・あてはめが難しいといったハードルもありますので、今後それらについても取り扱いたいと考えております。もうしばらくお待ちください。

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