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お酒を飲むと外国語の発音が良くなる?

酔っ払うと発音が変わってくる,もっと正確に言えば悪くなる(呂律が回らないなど)というのは異論がないと思います。しかし,外国語に関してはむしろアルコールを摂取した方が発音(など)が良くなるとも言われています。これはアルコールの摂取により外国語を使うときの不安(language anxiety)が軽減するためという仮説があります。これを実際に確かめた研究があります。

Martijn Wieling, Christiaan Blankevoort, Vera Hukker, Jidde Jacobi, Lisanne de Jong, Stefanie Keulen, Masha Medvedeva, Mara van der Ploeg, Anna Pot, Teja Rebernik, Pauline Veenstra and Aude Noiray (2019) The influence of alcohol on L1 vs. L2 pronunciation. ICPhS 2019.

実験は音楽フェス中の科学イベントで行われました。オランダ語母語話者が実験に参加し,呼気で飲酒量を計測し,オランダ語(第1言語,L1)と英語(第2言語,L2)で書かれた文を読み上げ,同じフェスに参加していたしらふの人がその発音をランダムに聞いて発音の明瞭度を5段階で判定しています。

結果が下のとおりです。X軸(BAC)はアルコール量(右に行くほど高い),Yが発音の明瞭度(上に行くほど明瞭)です。

Wieling et al. (2019) Fig. 1

オランダ語(L1)の明瞭度(濃いグレイ)はアルコール量が増えるにつれて下がります。つまり,アルコールを飲むと発音が悪くなっています。それに対して英語(L2)の明瞭度(薄いグレイ)はアルコール量にかかわらずほぼ一定です。

L1については先行研究と同様,明瞭度を下げる結果になりましたが,L2についてはアルコール摂取量で明瞭度が変わっていないので,「良い影響をもたらす」という先行研究の結果は支持されませんでした。これをどう解釈するかは色々と余地がありそう(例えばこの論文はオランダ語話者の英語能力が高いことも挙げられている)ですが,気付け酒もなかなか難しいですね。


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