中学校教科書の文体が気になります
授業で「レポートでは固めの書き言葉を使う」という話をするのですが,ちょっとイメージが掴めないというか想像しづらい感じがあるので「高校の教科書と同じ感じ」と言ってます。ただ,自分が使っていた教科書って中学も普通体(常体/だ・である)じゃなかったっけ?とか思いました。もっとも大学図書館の所蔵には私が使っていたような時代の教科書はなく,真相はまだ分かりません。それでも少しルールのことや戦後すぐの資料が見つかったのでまとめてみます。
まず文科省のルールを確認すると,中学までは義務教育諸学校教科用図書検定基準,高校は高等学校教科用図書検定基準というのがあり,どちらも文体は「特に学習上必要な場合及び原典をそのまま載せる必要のある場合を除き、現代口語文を用いること。」と書かれています。
つまり,普通体(常体/だ・である)で書くか丁寧体(敬体/です・ます)で書くかは定まってないことになります。
実際のところ,出版社のページで中学と高校の教科書サンプルを見たところ,やはり中学は丁寧体,高校は普通体で書かれているのが一般的なようです。
では以前はどうだったのか。広島大学図書館「教科書コレクション画像データベース」というのがあるので,そこで戦後の教科書を少し見てみました。
中学校用教科書で画像になっているのがかなり少ないので本当に一部になりますが,「私たちの科学」(三省堂)という教科書は1年と2年で丁寧体から普通体に変わっていました。
なぜ中学1年と2年で文体を変えてきたのかは分かりませんが興味深い違いです。ちなみに国語に関しては次の研究がありました。
西尾寅弥(1961)「教科書文体の常体・敬体:小学校国語を中心に」『言語生活』1961年12月号
様々な図表がありましたが,ひとつピックアップして題材単位(実線)とページ単位(点線)で集計した結果が下です。
またこの論文では中高の教科書も少し分析していました。それによると,普通体の比率は1年が13〜17%,2年が11〜19.5%,3年が13.5〜25%と学年が上がるにつれ上昇しています。また高校教科書ではほとんどが普通体になっていて,ここにギャップがあるという点では現代と共通しています。
少し興味深いのは国語以外のケースです。西尾によるまとめをそのまま引用します。
やはり中学校の普通体がいつからか丁寧体になっていたわけです。
詳しい変化を調べるなら教科書図書館という施設が東京にあるので,そこで閲覧していくのが確実でしょう(月曜〜水曜しかやってないけど)。
または国立教育政策研究所教育図書館がやはり教科書を所蔵しているので同様に行くか,大学図書館への郵送貸出をするかですね。でも戦後の中学地理の教科書を全てとか常識を逸しているので,1社に絞ってたとえば5年単位とか10年単位で借りるとかでしょうか。
うーん,気になる。
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