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【読書感想】魂の自由と引き換えにして得る永遠の孤独「アディ・ラルーの誰も知らない人生」

若い姿のまま、永遠に生きられるなら素敵だと思ったことはあるだろうか。

もしちょっとでもそう望んだことがあるのなら、「アディ・ラルーの誰も知らない人生」とお勧めしたい。

1691年にフランスで生まれたアディ・ラルーは望まぬ婚姻から逃れるため、神とも悪魔ともつかない存在に「自由になりたい」と願った。その願いは聞き届けられたが、思いもよらない形で叶ってしまう。

彼女は、

・23歳の肉体のまま不老
・不死だが苦痛は感じる
・会話はできるが、誰の記憶にも残らない
・自分のもの物を所有することができない

という状態で300年以上の長きに渡り生き続けることになってしまったのだ。

確かに望まない婚姻は避けられたものの、家族が自分を忘れ死んでいく絶望を味わい、忘れられてしまうために真に愛する人とは決して結ばれないという運命に悩み、ものを所有することができないために、お金も家もなく飢えに苦しむ

このような状況でも人生に希望を見つけようとするアディ・ラルーの挑戦を見守るように読める小説だった。

中でも私が一番面白さを感じたのは、この呪いのような奇跡をもたらした神とも悪魔ともつかない存在(リュック)とアディ・ラルーの我慢比べのような攻防である。

当初はアディ・ラルーを歯牙にもかけないリュックが、最終的に彼女を無視できなくなっていく過程が小気味よく、関係性の変化に興味をそそられた。

一方で、アディの受ける苦難は、安易に不老不死を望むことへの警鐘とも受け取れる。

自分ひとりで長く生きることがもたらす孤独は人類が経験したことのないものだろうが、なぜか我々は、肌でその苦痛を理解できる。

恐らくどのような状況でも、孤独の痛みそのものが遺伝子に刻まれた根源的な作用なのだろう。

このように絶望的な状況でどのようにアディ・ラルーが希望を見つけるのか、気になった方はぜひ本書を手に取っていただければと思う。


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