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引きこもりだけどベニちゃんの聖地巡礼してきた【福岡フェス後夜祭】【LOOP8】

 先日、菅原道真公についてご紹介したのを覚えていてくださっている方もいると思う。

 悲劇にみまわれたご息女、紅姫天王のことはご存じだろうか。

 菅原道真公は病床の奥方とまだ幼い子供たちを連れて大宰府へ下ったが、井戸水は枯れ、雨漏りするような家で、食べるにも困るような厳しい生活を強いられた。さらには刺客にも狙われる中、翌年にはご子息が夭逝。その後奥方、ご自身も身罷られた。

 残された幼い紅姫様は、父君から託された密書を兄に届けるために密かに旅立つのである。しかし最後は藤原氏の追手に追われ、若杉山(福岡県の篠栗町と須恵町の境界にある老杉に覆われた山)の麓で凶刃に倒れた。

 まだお小さかったのに……。家族が次々倒れて、自分もなんて、可哀そうすぎる……。

 地元の人々は紅姫様を憐れみ、祠を建立して彼女を祀った。昭和51年には紅姫稲荷社殿が造営されると共に、「最上位山崎紅姫天王」の尊号が奉られ、そのご神徳は今日まで広く知られている。

 私は長年太宰府天満宮に行くばかりで、こちらの社殿には参拝したことがなかった。

 しかしである。

 先日私がゲーム実況していたLOOP8というゲーム。これにベニちゃんという、紅姫様をモチーフにしたキャラクターが登場するのだ!

 これはなんとしても参拝したい。そこで先日、福岡に帰れた隙間時間を狙って、行ってみることにした。

 ただ、まず前提として、紅姫稲荷社殿は比較的小さなお社で、立派な拝殿などがあるわけではない。したがって観光地にもなっていない。この言葉できっと察しがつく方もいようとは思うが、つまりアクセスがあまり良くない。

 まずこの写真を見てほしい。

 博多駅から20分ほど電車に乗った後、1キロ弱の歩きである。

 しかしなぜまっすぐ行けず、裏に周るようなルートが表示されるのだろうか。この時点で何か嫌な予感がよぎったが、たぶん入口が裏側にしかないのだろう。地方にはありがちなことだ、と自分を納得させて行くことにした。

 博多駅から、乗ったことないJRの路線で篠栗ささぐり駅に降り立った。かわいい駅舎にちょっと和む。

 降り立ったはいいが、私はちょっと心配だった。

 皆さん、お忘れかもしれないが、私は引きこもりである。普段はおうちの中で、トイレとの行き来ぐらいでしか歩かない。こんな硬い地面の上を1キロ弱も歩いたら足がもげて死ぬかもしれない。

 一瞬タクシーを使うことを考えたが、せっかくだし景色も楽しみたいから歩くことにした。

 遠くに山が見えるが、あれが若杉山だろうか。あれ全部杉なのか。ふもとの皆さんの花粉症は大丈夫か。

 足が保つかの不安はあるが、全く知らない町を歩くのは結構楽しい。

 用水路が張り巡らされていて、途中で(私が)夜落っこちそうな用水路もあった。地元の人はどうしてるんだこれ。

用水路

 しかしすごい住宅街である。山しかない。

 謎のため池に行き着いた。馬手池というらしい。水辺に山が映り込んできれい。

 でも悠長にアハハウフフと写真を撮っている場合ではない。

 皆さんお気づきかもしれないが、日が暮れてきている。時刻はそろそろ17時になろうかというところ。

 神社への参拝は午前が良いとされ、夜は死者の参拝時間であるともいう。都合で夕方になってしまったが、なんとか日が暗くなる前にたどり着きたい。

 それに、私は不安だった。夜になったら車にひかれるか、さっきの用水路に転げ落ちるか、神社の石段で転げ落ち……。

 死にきれず脊髄を損傷して下半身不随で生きることになるところまでありありと想像がつく。障害年金の申請をしなきゃ。トイレとかどうするの。そんな結末はいやだ……。

 しかし地図のこの部分に行ってみたものの、

 行き止まりだった。

 THE 民家がそびえるだけ。

 何もない。道がない。

「そんなことある?」

 思わず声に出していた。Googleマップと現実を見比べる。

 まさか、Googleマップが間違って……?

 いや、そんなはずはない。私は自分かGoogleマップかだったらGoogleマップを信じる

 何か間違えたんだろう。私は数十メートル戻って、落ち着いて深呼吸をした。

 この時点でゴリゴリの住宅街を、デカいバッグ片手に歩き回る不審者である。

 Googleマップを見るが、やはり先ほどの行き止まりを示している。でも何もなかったじゃん。私の見間違いか。十分ありうる。多分見落としていたのだ。

 私はもう一度行き止まりに向かった。

 ウロウロ、ウロウロ。 

 近くの民家からこちらを覗いている女性の視線が痛い。

 さらになんだか知らないが、近くの竹林から猫も出てきた。

 もはや不審すぎて猫も監視しているのである。猫が10匹くらい竹林の中をガサガサ駆け回って威嚇してくる。なんだなんだ。

 日が落ちてオレンジ色になってくる周囲。たどりつけないお社。今日はあの竹林で猫と体温を分け合って野宿かしら……。

 鼻水をすする。

 いやいやいや。

 おかしい。そんなはずはない。

 私はネットで紅姫稲荷社の情報を探した。行く人が少ないんだろう。全然情報が出てこない。しかし「横にあるお寺の駐車場を借りた」というレポが出てきた。

 うーん。

 その駐車場は確かに見かけたが、閉まっていて、お寺そのものは見かけなかった。紅姫天王のお社を見落として、かつお寺本体も見落とすとは考えづらい。だからやっぱりGoogleマップが間違ってて、入り口は反対側なのではないか。

 でたー! 地方に行くと急に役に立たなくなるGoogleマップ!

 しぶしぶ、私は反対側に向かって歩き出した。こういうルートである。

 マップのルート表示が憎い。体力が地味に削られてしまったではないか。

 ウロウロしすぎたのだろう。もう猫は道の端に座って私を監視していた。もういい。いくらでも監視するがいい。

 反対側にまわってみると、果たして。

 あった! 紅姫稲荷社だ!

 あらかじめわかっていたことではあるが、そびえる石段に心が折れそうである。しかし登って行った。

 そして、なんとか……たどり着いた~!

 お賽銭を……お賽銭を入れられるかな? 扉が閉まっていたので不安だったが、鍵が開いていてお賽銭を投げ入れることができた。良かった。

 私は二礼二拍手一礼の後、少しばかり長めにお祈りした。いろいろ自己紹介とかしたあと、「聖地巡礼に来ました」というのをなんと伝えていいか分からなかったので「紅姫様はどこで取り上げられてもお可愛らしく素晴らしいことでございます」とお伝えした。

 じゃあ失礼するかというところで、階段が急でめげそうになる。踏み外して死ぬかもしれない。

階段が急で…。

 実際、帰りの石段で足を踏み外しかけた。だって階段の途中で黒い蝶が襲撃してきたのだからしょうがない。ご参拝後の蝶は瑞兆に違いないとかメルヘンなことは思わない。私は弱い足腰で急な石段を降りるので必死なのである。なのに蝶が……! 猫が……! しからば襲撃である。

 なんとか最後まで降り切って、事なきを得た。ああ、よかった。
 こうして私は聖地巡礼を成し遂げたのだった。ベニちゃん……! Googleマップと用水路と猫と蝶に負けなかったよ……!

 なお、その後、帰ってタイツ脱いでみたら足は血まみれになっていた。

 これについて説明すると、普通の人は多分……というか私もよく歩いていた頃はそうだったが、足の裏の皮膚とは硬いものだと思う。しかし、しばらく……数年? ほとんど歩かない生活をしていたら、子供みたいに柔らかい皮膚に変わってしまったのだ。歩くと爪や靴が当たったりしてそれは簡単に皮膚が破ける。よくあることだが、痛い。

 こんな風に、私にとって、歩いてどこかに行くというのは結構なダメージを伴う。なのでどうしても行きたい場所でなければ行かない。もちろん紅姫天王社はそれに値したと思うし、後悔していない。紅姫様の御霊の安らかなることを祈る。

 最後に。

 ここにはっきりと書いておくが、紅姫天王社は駅からまっすぐ、徒歩五分程度だ。

こうだ!

【篠栗駅から紅姫稲荷社までの徒歩ルート】

 一キロもうねうねした坂道を不審者よろしく歩く必要はない。GoogleMapは間違ってる! 同じく行こうと思った人がこのレポにたどり着いてくれることを祈る。


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